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「…」


ラッセに凭れたまま、

腕のマッサージが続いていく。

肩周りの筋肉も掌で円を描くように緩く揉み

少しずつ回していく


二の腕から指先まで両手を使って解されていく…

浮腫の痛みか…流されていく

…繰り返されるうちに痛みも…薄れ

人肌の温かさで、徐々に痺れがなくなっていく


ぼうっとしていれば

左から右肩に頭を乗せ替えられる

同じ作業、か




「…ラッセ、らしくない」

瞼が落ちていく

気持ちよさからか眠気が…



「初対面だよな…ああそういう意味か

まあね…、昔のラッセならこうはいかない。

勿論今の俺もラッセではあるけれど、怒りのコントロールはある程度出来るようになった…違和感を感じるならそこかな」


「言動もそ…う、単一人格にしては情緒不安定に見える…抑え役の人格でも混じったか?」

すっかり重くなった瞼を押し上げながら

疑問に思っていたことが…言葉として勝手に出ていく



「ご名答…最近別人格が混じって合わさったんだ

まだ馴染みきってはいないから不安定は不安定だね」

「…ならなんで怒らせるな…って言った?」



「抑えない事も出来る」

「…」

冷や水がかかる



「ほら、動かない。

黙らなくても良いじゃない…優しいって言ったでしょう?自制が効くだけ感謝してもらわないとね」

「…もういい…帰る」


このままここで寝るわけにはいかない

…明瞭になった思考

身じろきして離れようとする



「…時間か…でも過ぎたのはオリゼのせいでしょ?

仕方ない、明日の時間減らしてあげるから…おい、抵抗しない」

「…うっ」


浮かせた体

労るように肩甲骨周りを解していた筈の手が

背中を強く押さえつける



「いいね、2度目はない。血流が滞った状態で帰すわけにはいかない、ラピスの大事な友人だからね…」


「…なら、長時間あんなこと…」

体の力を抜く…


ぐったりと凭れかかった


それを確認したのだろう

止まった手が再び背中を擦り、

追加で緊張した…後ろ手で固まった背骨に沿ってツボを押していく

体がぽかぽかしてくる…

血の巡り…が良くなっていく

覚めた筈の目が、また微睡んでくる…


「言うこと聞くの?その"長時間"自由利かなくしたにも関わらず、枷を外せばすぐ抵抗したよね?」

「…」



「無言…また絞められたい?…明日に持ち越すけど?」

「…こ…り懲り、だ」


「なら、長時間なんて言わないことだね

そもそもあの体勢ならもっと長時間やっても支障は出ない…優しい俺に感謝しなよ」

「…どう…も?」


優しさの定義が違うだろう…

だが否定すれば…ただでは済まない、かもしれない



「ったく…散々自制して、怪我のないように管理して。

終いにはこうやって手をかけてマッサージまで…


…さて、もういいよ」



最後に背中全体を擦られた後、離れる手

力が入る…

痺れも痛みもない

手を曲げ伸ばししても…普段通りに近い

自立して座れている…




ラッセが立ち上がり、

足元にしゃがみこむ…外された足枷

それをテーブルに置いて、


…こちらに手を伸ばしてくる

意図通りに…、それを掴めば引き上げられる




…異常なく立てた

「…帰って良いか」


「勿論、明日は…20分遅れで開始ね」

視線を追って見れば、

時計はもう日が変わって0:20を指している


「…」

「逃げないとは思うけど…ちゃんと来てね」


頭を振って、その言葉を背に扉に向かう

歩みを進めれば、阻むように立っていたルークが横にずれ

ノブを握り、開いてくれる



傍目にそれを認めながら通る


長い一日

漸く帰路について、ふかふかの布団に潜り込んだ



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