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「これもなかなか、凝って作ったんだよ

先のない靴みたいでしょう?こうやって履かせれば両足首を拘束すると同時に甲を伸ばしたまま固定出来る

正座や爪先で立つことは出来ても歩くことは不可能、移動も難しい事から脱走も禁じられる。

加えて正座を強要して反省させるにしても、床にギリギリ足先が着くように吊るにしても便利だと思わない?」


「…」


本当、誉めるべきか貶すべきか

どちらにせよ被験者にはなりたくない

いや、もう被験者1号か…


施された拘束に、

足枷のせいで説明通りに自由が利かない。

足首周りだけでない、足を開くことが困難だ

数センチほどしか膝すら横には動かない


恐ろしい物を作るものだ…

膝の曲げ伸ばしの他、ほぼ全ての動きと機能はこれだけで奪われたのだ




「なに?その目…

やはり視界も要らないかな。知ってる?人間の五感で一番情報を得ているのは視覚だって」


足の拘束の確認を終えたのだろうか…ラッセが顔を近づけてくる

何を言い出すのかと思えばそんなこと

講義で先週習ったばかりの内容

敵を御す為の、

捕虜を捕らえる際の注意事項だったか…



「だから、目が塞がれれば不安になるわけだ。

逆に見えた方が良い場合も多いけれど…想像出来る?」



「…ふ…っぐ…」

ぶつぶつと凶悪な笑みを浮かべながら

単語と事後の症例、事例…を延々と耳元で教授してくる


拷問器具に薬

明らかに法に触れる…特例でも所持利用に何枚も書類の許可が必要であるに違いない

そして使われた後の状態の"想像"は容易に出来てしてしまう


もしや…

先程の心を保とうとした努力も何処へ

呼吸が乱れる

苦しい…辛い

口を開けて肺一杯に吸い込みたい

開かない口、鼻呼吸をするも僅かに吸い込めるだけ

自由の制限がかかるそれに混乱に混乱が重なる

テーブルの上の記憶を探る

それに似た形状のものは無かったかと

薬かなにか、あっただろうかと



正常、な思考が出来ない…

荒い呼吸音

心臓の動悸が煩い…霞んでいくラッセの顔

歪む視界

靄がかった思考



パァ…ンッ!

衝撃と音

目の覚めるような…実際に覚めた


「…聞こえるか?

…聞こえるな?俺の声に合わせて1で吸って2で吐け…落ち着きなさい」


「っ…ふっ」

張られた額の痛みと問い

…それを頼りにぐらつく意識を繋ぎ止める

遠く聞こえる声

浅く短く…次第にゆっくりと

合わせて呼吸のリズムを戻されていく



「落ち着いたね

今は使わないし用意はしていない、と言うより出来ない。

そんな厳重な管理が必要な物、寮に持ってくるわけにはいかないからね…残念だけど」



…目のピントが合う

ラッセの顔をしっかりと映したのが分かったのか


「…っ」

冷静な声に

漸く落ち着いた息が止まる

条件が揃えば使う気はある…そう聞こえた



「ほら、呼吸を止めない…そう、その調子。

…まあ、用意出来ないしするつもりもないから安心しなよ…

普段は杖と鞭、他は香と一般的な薬を複合して用いる。


今言った道具が無くたって、

此処にあるものだけでも効果は望めるし、そこは俺の腕の見せ所だ。

…練習にでも付き合ってもらおうかな…それだけの時間は充分にあるだろうし

それが嫌なら、…ね?」



抵抗するな、か…


一筋の光も通さない

目の前のそんな重厚すぎる目隠しが、可愛くすら見えた俺の目は狂っているのだろう


心理的に誘導されている

そして目の前に態々翳すこの動作も、目を塞がない方が"好ましい"手法であることも

片隅…冷静な頭の何処かでそう思うが…

体は喉仏が下に動く

くつくつと自嘲か嘲りか…これくらい楽勝だと鼻で笑った音が漏れ聞こえる



その音を自身の耳で聞きながら、ろくなことにならない事を知りつつ…制御出来ない反応、行動

人間、こんな笑い方も出来るのだと変に感心していると

片眉を上げに上げたラッセが目に写る



数分後には早くも深く後悔することも…

そうとも知らず

結局俺に選択の権利はなく…その手の物を受け入れることになった




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