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真っ赤な顔をして…

その顔を見て拳を握る


無理矢理実力行使に打って出た相手に、

思い通りになんてなってやるかと…

殴ってやろうと立ち上がりかければ、左手で肩を押されソファーに倒れ込む

体勢を立て直そうとする間もなく、ラッセが俺の腹の上に座り込む



「抵抗、あんまりしないで…手加減できなくなるから」

「…っ…うぐ…」


もがけばそれすら阻止される

のし掛かるように、体重をかけられた腹部

ラッセをどうにかして上から退かそうと伸ばした手も

その重さと圧迫感で勢いを失う

結果軽く払われ、いなされた…





「ルーク」

「はっ」


その言葉を聞いて立ち上がる

腹の上からラッセの重さが無くなる


その隙に…瞬間横から延びてきたルークの手

起き上がろうとしたその力を利用して、いとも簡単にうつ伏せに返され押さえ付けられる


強い力…

それでもその圧力に抗おうと

ソファーに手を付き起き上がろうとするも、両手を捻り上げられ背中で一纏めにされる…




「そのまま押さえておいてね」

「心得ております」


背中越しに聞こえるのは

…当たり前の会話のように交わされる言葉


ルークに押さえ付けられた手に履かされる何か

手袋を着けられたような感覚…

その次には手首に圧迫感

ルークの手が離れていく



…やはり手枷か

形状から予想はついていたが指一本自由が効かない

手袋と言えば聞こえはいいが、全ての指が入る部分は全て連結

指は離れもしない、固い革で出来ているのか曲げも出来ない

脱げないように手首周りでベルトで固定

そこから伸びる短い鎖は両手首のそれを繋いでいる

…筈だ




「外せ、ラッセ…」

「何で?俺充分優しいと思うよ、枷同士は鎖で連結してるから肩も腕も痛むまでの無理はさせてない。これ本来は革で合掌させるように出来るようにしてるんだけどそうして欲しいの?」

「…」


そうして欲しいわけないだろ…

不満と異論を呈するため

顔を横にして、ラッセを睨む。


この状況…一ミリたりとも俺の視線は脅威にすらならないとでも言うように、

それは鼻で笑われ一蹴された





「ルーク、試しに鎖の遊び無くしてやって」

「…おい」


「ルーク」

「畏まりました」


「っ…」

「限界までやっていい」

「御心のままに」





「ぅ…いっ…痛っ…止め…ろ」

「俺が温情かけるなんて滅多にないんだけどね…

ラピスの友人だから手心加えてやってるって理解できたかな?」


「っ…緩め、てくれ」


「理解出来たかって聞いてるんだけど」

「…ぐっ…」


「…仕方ないルーク、緩めてやっていいよ」


ルークの手によって

遊びが、手と手の間隔が無くなっていく…

たちまち後ろ手になっている腕の筋が無理を訴える


その強制させられた体勢に悲鳴を上げた…

隠しようもなく、その痛みに顔を歪めればそれを認めて満足そうにする


悪趣味だ…




「…着ける時点で優しいと言えるのか」

「…あんまりな言い種だからこれは調整しないで置いて他の刑具使おうかと思ったんだけどね…後遺症が残る可能性がある他の物を使わずこれを使ってあげたんだ。身体を損わずに俺の機嫌も取れる、それにこれの調整ができればオリゼの用事も済む。

…どう?かなり優しいでしょ?」



「…後ろ手でやる必要はない」

「殴ろうとしてきた相手に、前にするわけないでしょ」


「それと、勘づいているだろうけど…俺はラピスの代わりに家業をしてる、特に加虐性が強い場面ではね」


「それ…が、なんだ」

「こちらに危害を与えようとなんて意図が分かれば、まして行動に移したら即刻拷問。本来の家業ならこの程度では済まさない、この対応は温すぎるって言ってるのが分からないかな?」


「…それは家業の話だろうが」


「殿下にこれを献上する、報酬がなくとも今後のコネも考えれば…つまりこの作業は刑具の受注の仕事の内になる。

それと、あんまりにラピスが引きこもるから講義も学園生活も仕方なく送っているけど、性に合わない事をこのところずっとせざる終えなくて俺の我慢はとっくに限界越えてるわけ。

無礼な物言いをしてくる他学生に対して何度手を下そうと思ったか…この手枷の調整を楽しみに抑えてきたけどそれも儘ならないなら、何するか想像つくでしょ?」




つまり、これは仕事であり八つ当たり


ラピスなら友人である俺に私的な感情を持ち込む事を…

それを良しとしない

仕事と私的な物を混じらせることに抵抗を覚える


ならば…ラッセは?

御世辞にも、あまりその拘りはなさそうだ

だから、

俺の身の危険があろうともラッセに変わった


なら、

この酷い扱いも飲み下せと…

こいつに好きなようにされろというのか?

枷の調整が、仕事が終わるまで俺の…皆が知るラピスは表に出てこないつもりかもしれない




「…想像した」

したくもないが…とぼそりと付け加える


「へぇ、まだそんな口利ける余裕があるんだ?

まあいいけど…それとこれ邪魔だから預かって置く」


そう言って簪が抜き取られる

平紐もだろう、髪がほどかれ落ちるのが分かった



「これ、ラピスがあげたやつだ…よね。

…律儀に使ってるんだね、ラピスが知ったら喜びそうだ…

それとこの髪紐は…殿下からかな?一見何てことなく見えるけど、いい代物だね。

返して欲しかったら…俺の仕事の手間を増やさないで」



「…簪と平紐を奪ったくらいで俺を思い通りに出来ると思うな。目出度い頭してるな」

「そうやって振る舞っても無駄、友人を大事にするのはラピスを通じて知ってる。これらを失えば送った側のことも考えて心痛めることもね」


「…ちっ」


人質ならぬ物質…か

俺が下手を打つ気ならばそれが無事では済まない、

破損させることも厭わないと?




「分かったなら力抜けよ

努々俺に本領発揮なんてさせるなよ?」


視界にかかる髪越しにラッセの顔を見る

意地悪く口角を上げながら

簪を折る動作を見せつけてくる…


その言葉に、

脅しに…腕の力を遂に抜いたのだった




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