お先真っ暗
良く寝た
部屋に充満した匂いも鼻が慣れたのかそこまで気にならない
胃は軽い痛み
吐き気はあの二重苦が消化されたのかなくなっている
体の状態を把握して、一安心
窓をみれば夕陽が沈む頃
西日の明るさで目が覚めたのか
時計をみれば17時前
これからどうするかな…
体調が戻ったのは幸いだ
明日から新しい事をするんだ、ただでさえ疲れるはずだ
…特にこのまま殿下と上司の怒りを沈めないままじゃ尚更
はあ…
気が重い
相変わらずもふもふと気持ちいい布団に枕
力の戻った腕で押して体を起こす
サイドテーブルをみれば忌まわしい香炉がまだ鎮座している
それと封筒が二つ
合わせを整えてベットに腰かける
アメジスト色の封筒
取り上げて裏に返せば
見慣れた家紋の封蝋
…封を切ってみれば父親の筆跡
……仕送りは今後ないそうだ
縁切りしないだけ感謝しろと
初等科六年間は一括前払いだったはず
後五年間の授業知識を武器に身をたてれば…
…侍従で無理か
救いは授業のある日の食事代は浮く、夜間以外は三食自由な時間に食べられる
…問題は休日と長期休暇中だ
所持金…いくら残ってただろうか…
到底後五年間を賄える金額じゃないのは明らかだけど…
日用品、消耗品、頻度品、食事に……
祝祭日に稼ぐしかない…
家で侍従が休みをとれてたのって祝祭日位だった気がする
…まあ普通の侍従の場合ならば。
見習いの上、殿下の心待ちで煮るなり焼くなりされたら終わりだ…
給金もあてに出来るのだろうか…そもそも出るのか?
出たとして一般的な見習いの給金って?
侍従見習いだ…その上殿下の
支給品と給金がなかったらお先真っ暗
それも見習いの上、殿下のだ。
直近の身嗜みの物すら買えるか……まして後五年間残る初等科は更に乗り越えられる気がしない
…もう片方の封筒
…目に入れないようにしていた。
…入学前、よく受け取っていたエメラルドグリーン色の封筒
…封蝋を見る必要もない
…筆跡を確認する必要もない
…万が一の勘違いの可能性もない
ラクーア卿から封筒が
…ここに




