序
侍従服を脱いで浴衣に着替える
何とか無事、布団にありつけた…
疲れた
そう、
疲れた…その一言に尽きる
ベットメイキングだけは褒められた…乾熱処理をしてふかふかに
カラリとさせリネンの整え方も練習した甲斐あって及第点
…ただ、姿勢がなっていないそうだ
本頭に乗せて歩く練習は誰しも通る研修の一つだとアコヤは言っていた
明後日からでも本を乗せて越え歩いてみよう
名ばかりの"入門書"にも、そう言えば書いてあったと思い出す
休日にそんな暇も余裕もない
平日の自由の効く時間になるべくやるしかない…か
…でも明日の午後は野草を摘まないと。
それと食材を備えておかないと…な
また週末が大変なことになる
高級な食事に薬の管理の手間も…またさせることになる
罷り間違っても、
そんなことは…と
もししなかった場合の顛末を想像してしまう
…先程の丸薬の味が再び口に広がるようだった
それに所望しないといけなくなった手枷か…
ラピスに費やす時間も取らないと
やることが多すぎる
基礎講義の予習復習に…選択講義も…
…
微睡み、
押し上げられなくなった瞼を抵抗なく受け入れれば
長い長い今日一日の幕が降りていった…
…
…
…どくだみ茶
熊笹茶の在庫切れに次に手を出したそれ。
これはこれで飲める…舌が慣れてきたようだ
まだ目が覚めきらない
やはり、起きがけはコーヒーに限る
先週の保存食の講義で習ったのは…蒲公英の代用コーヒー等々
フラシーボ効果でなるとかなると期待しよう
熊笹に蒲公英…加えて習ったいずれかの地下茎でも見つければ食材の足しにもなる
今日の野営講義はそこで剣の練習…
傷も癒えているだろうと渋い顔をする俺に宣告した教授
…現地解散してもらおう
それなら摘んで帰れる。
往復の時間も短縮すれば予習も少しは余分に出来るじゃないか…買い出しに行く時間を確保しないといけないし、出来なくなった時の余裕がほしい。
算段を固めながら侍従服を着て自室に向かう
ラピスが乗り込んでくるだろうと、
心積もりしていれば予測通り…復習と予習を軽くしていた時だ
まだ五時前と言うのにルークが伺いにきた
俺の侍従服姿を見て、自室の平日のはずと痛い所を突く
一礼して、形式的に伝達了解の意を伝える
次いでに此方からも一言
主人が"友人"に献上されると聞いている手枷の調整役として命を承った。朝方調整されるならば…代役となりましょう
サイズならば"友人"と同じだろうと思いますので
そう淡々となるべく感情を込めないように留意しながら
…贄発言をすれば
そのように伝え、少し後で主人の部屋に来るようにと残して出ていった
さてと…
開いた教材らを放置し、ビショップのもとに向かう
まだ疎らな使用人通路を通って、覚えた扉をノックする
「あ?こんな早くになんかあったか?」
「早朝に申し訳ありません。"オニキス様の友人"からの伝言で自室に居なければラピス様の居室に居る私に言付けをと賜りました…
お手数お掛けしますがお伝え願えますか?」
「…分かった。朝食の件だな?」
「はい…そのようです」
「それと言っていなかった…オリゼ、感謝してる」
「…なんのことでしょう、私の身に覚えはありません」
「おい、なんで…」
「"何もなかった"と言うことです」
ビショップを介抱した礼を受け入れれば、その責を受けることになる
ここで俺がどういたしまして等と言えば、
オニキスの素知らぬ振りも役にたたなくなる。
殿下の侍従見習いに対して不敬な発言や世話を無断でさせた事実ががあったことを示唆するのだ
だから…
これで分かれと念押しの視線を向けた
「ちぃ…言ってみたくなっただけだ」
「冗談も言われるのですね、ビショップさんも…
それでは後程」
通じたようで良かった
軽く流して部屋を出て…
本日のメインイベントの準備へ…
出るのは鬼か修羅か
はたまた…
重くなるラピスの部屋へと歩みを進めた




