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「っ…」


開けるなと声が出る前に

香水瓶に似たガラス瓶の蓋が開けられる


すぐさま粥と薬湯がせり上がって来る




元々強い匂いは嫌いだ

ムスクや沈香、檜に杉、新緑と土の匂い…そんな香りならまだ歓迎できるのだが


…よりによって調合系のアロマ

睡眠や疲労回復に効能のあると評判のキャッツアイ社の商品


甘ったるい上に人工的な鼻につく香り

効能がある前に疲弊しきるわ…


部屋に充満

体の皮膚にまとわりつくような不快感

止めはこれか






これだけ苦手三種が次々と出てくれば意図は否応にも汲めるが勘弁して欲しい

吐き気と頭痛、匂いも味もかき消されたダージリンだった液体で胃酸混じりの米粒を必死に押し返す


せめてせめて

速く効くことを願う

夢の世界にしか逃れる道はないのだから


そう考えていると


「なにか?」

声にカップから目をあげてみれば

怪訝そうな表情と視線




「…ぅ、申し訳ないが…横になっていいか?」

空になったカップを置き

呻くように問えば


「…どうぞ」


「…馳走様でした」


止めを指すように香炉がサイドテーブルに置かれ、カップを片し始めたのを視界の端に捉えながら、ただそれ一言だけ絞り出した


ゆっくり慎重に体を

胃を圧迫しない、刺激しないように体をベットの端へ

逆流しないよう重ねた枕に肩から沈み込めば吐き気も幾分ましに感じる


更にベットの端へ端へ…

ずりずりと動き柔らかな掛布団を鼻まで引き上げて背を向けた


背中越しに聞こえる給仕の台車の音に、施錠音

そこまで聞いた後、効能で直ぐ眠りに落ちて…





…そう問屋はおろさなかった

次第に増してくる頭痛に吐き気と胃の痛み、

それが効能を凌駕したのか布団で遮断出来ているのかいっこうに寝れない


せめて窓を開けようと目を開ければ、錠に描かれた魔方陣

扉が施錠されているならばそれはそうか、窓になにもしてないわけがない。

それも御丁寧に描いた本人のみ消せる陣

初等科初年度で解術の魔方陣や手順なんて、ましてやその応用を習うわけもない


習ったのは魔方陣の図式と効果だけ

なんの魔方陣かはわかるが…いや学んだと分かってるからこそか





洗面台で吐こう…

諦めが肝心だ…

料理を粗末にするのは信条に反するが背に腹は代えられない



そう、迫り来る胃の内容物に急かされ布団を上げた刹那

肺一杯に侵入した…

その甘ったるい匂いで意識が暗転していった



寝てばっかりだ…

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