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責23




「オリゼ、なら今晩から食事管理を自分で出来るまでそうしようか?」

「…後生です…お願いですからやめてください」


歯を食いしばりながら声を出せば


「なら自己管理出来るのか?」

「…出来ます」


「携帯食料で賄うつもりだろ?完全食としては認めないのは話の流れから分かるな?…すぐにばれるぞ?」

「…っ」

「もしそれで済ませているのが露見したら…」

「マルコ、ちょっといいか?」


オニキスの問い掛けに、

言葉をそこで切って…オニキスの方に振り返る殿下

嫌な予感がひしひしとする


そう、

オニキスには受け入れると言ったのだ…

それを反古にして、

殿下の食事管理を拒絶したのだ…

二人が目を意味深に合わせる


…どちらともなくテーブル側に身を乗り出し、

密談をし始める…

俺にとって流れが悪いことは

こんなことはどんな愚鈍な奴でも肌で感じるだろう、

…何を出来るわけもなく結論が出るのを座して待った






「暗闇と幽霊、高いところも苦手。後は薬と運動…も嫌いか。

好物の甘味は…節約するか。それなら…お気に入りの寝具を取り上げでもすれば効果覿面だろうな」

「…なるほど?組み合わせたらすぐに効果が出そうだ…なあ、オリゼ?」



「…うっ」


悪寒が走る…

冷や汗まで出てくる。


オニキスの苦手も苦手の物の羅列に…想像してしまえば震えももう抑えられる程のものでは無くなった

歯がカチカチと言い始めた




「そう言えば、オニキス」

「ん?」

「オリゼの兄上によれば、なんでもオリゼの家には能面の部屋があるらしいんが…知ってるか?」


「ああ、オリゼの母上の趣味だろ?

屋敷に伺った際に入ったことある…昼間にだったが俺でも夜中に灯り無く留まる趣味はないな」

「…"暗闇と幽霊"か?」



「…そうだな、暗闇に浮かび上がる白い面は怖いだろうな」

「"兄上いわく"その部屋が苦手らしいんだ、俺は見たことないが…再現でもしてみるか」

「良いんじゃないか?」 


馬鹿なこと言うからこういうことになるんだ、そう言外に言うような目で視線を送るオニキス

その目線を辿るように、再び殿下がこちらを振り返る



「自己管理出来ていないのがもし明るみに出ようものなら禁足にでもしようか…能面ね…他文化を目にするのも勉強になる、ついでに収集してみるのも面白そうだ…なあ、オリゼ?」


「…」



「本当…素直じゃない。…アコヤ」

『…能面の調達と見習いの食事の確認ですね』

「ああ、頼んだ」

『畏まりました』


主人の意向を的確に把握

意を汲んですぐ動く……すぐにとばかりに退出するアコヤ

侍従としてはすばらしいのだろうが、

今それをここで発揮しなくても良いじゃないかと

主従の会話とアコヤの背中を憎々しく見送る…



「オリゼ、今の内にさっきの発言撤回した方が良いぞ?

言い忘れていたが、ラピスは相当怒ってる」


それとこれとは関係ないだろうと

何で今ラピスの名前が出てくるんだとオニキスを反射的に見る

そもそも何時、ラピスと会う時間なんてあった?

四六時中ずっと居たが…


「…お前が選択講義にいっている間にラピスの部屋に所用で行ったんだ。この前買い物に一緒に行ったときあいつが買ってた革があっただろ?

…手首回りがどうの、可動域と遊びがどうのと得たいの知れない独り言を呟きながら作っていたぞ。確実にあれは…手枷だ」


「…」

「加えて今度の朝食の際、最後の調整に必要なお前の手首回りの採寸をするとか…それに出来上がりが良ければ殿下に差し上げようとまで聞こえた。ラピスに…刑吏技術を発揮させたいのか?」


「…」


「それが殿下の手に渡れば、今回の件…更にお前には不利になるだろ…」

「…」


成る程、

食事管理が出来ず禁足になれば

例え使用人部屋でそれがなされたとしても…

暗闇と能面…

そしてラピス手製の手枷が加わると言いたいのか…?



悪巧みにも程があるだろ…

部屋から出れなくなれば、

しおらしくビショップのように床に座して反省しないことがバレている。

布団をただただ…気の済むまで堪能する機会にすると知れている、

講義の勉強や

…侍従の業務内容の自己研鑽はするにしても…


それ以外はもふもふと、

布団にくるまり続ける…

そんな考えを見透かされている様な言い回し

禁足であっても、

部屋の中での自由は全く無いと脅しているのだ




「はあ…弁解も否定もしないってことは、そうなる可能性…嘘をついたってことだろ。まあどちらにせよ、食事管理を拒絶した時点で終わっているな」


溜め息を吐くように言うオニキス

未だに床と仲良くしているビショップにコーヒーと薬箱を持ってくるように声を掛ける。

その一声で不確かな足取りで

でも確かに侍従らしい背筋を伸ばした姿で退出していくのを見送る


これで部屋には三人…

一瞬の静寂




オリゼ、近くに



そう殿下の声が切り裂くように

耳に届いた

そう、響いてしまったのだ




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