平和な帰り道
さて、ここはエンテの町。数日前からハゲ頭の悪魔が襲ってきている。そのたびにアリスの妹であるリリスがふっとばしている。毎日毎日。
「今日こそ、リリス様を捕縛す・・・」
「また来たのか。懲りないやつだ。とんでけー」
魔力を込めた蹴りでそのまま大陸の外へとばされる悪魔。それでも翌日にはまた帰ってくる律儀な悪魔である。
町の人々は最初こそ戸惑っていたものの、もうすでに慣れてしまった。攻撃されなければ問題ないと判断したらしい。攻撃される前にリリスが悪魔を飛ばすから何の問題も無い。
それよりも、町はあるニュースで持ちきりだった。
「なあ、あれ、聞いたか?」「あれだろ、ついにジュンヤがダンジョンボス退治したって」「うわさによれば、80人もいた中で6人しか生き残らなかったらしいぞ」「ここ最近見ねえと思ったらそんなとこにいたのか」「あいつならいつかやると思ってたぜ」
この町を拠点にしていた黒髪の冒険者の話である。冒険者ギルドネットワークで五日前に伝わり、冒険者たちに伝えられてからずっとこの有様である。彼はゴブリン討伐の頃から有名になり、その確かな腕や珍しい戦い方、実は優しい性格などで人気になった。女性冒険者からも「顔はよくないけど性格は良い」と冒険者にしてはなかなかの高評価である。
その中でも熱狂的なファンがここにいる。彼のことが好きになっちゃった人である。
(うわあ、ジュンヤくんやっぱりすごい!かっこいい!!最高!!!あんな化け物を倒しちゃうなんて・・・!ああ、早く会いたいなあ。そろそろジュンヤくん欠乏症で頭がおかしくなっちゃうよ・・・)
もはや重症である。
ここ最近、チェシャが引きこもっているため、ワンダーランドはあまりクエストを受けていなかった。チェシャいわく、「漫画の締め切りが近いの~!早くしないと印刷してもらえない~!」とのこと。その漫画の内容は・・・いや、言うまい。少なくとも薄い本を作っていることだけは確かだった。
何はともあれ、エンテの町は今日も平和だった。その数日後までは。
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その頃、件の純也たちは、街道を下っていた。
「ねえ、さっきハゲたおっさんが飛んでるのが見えた気がしたんだけど、気のせいかな」
「そうだろ。フォリッジも疲れてきてるのか?」
アレー出発から二日目。馬車を使ってもよかったが、ラスボス討伐前に魔獣の骨をすべて売り払っていたため、再度素材集めが必要になったのである。
おっと、ちょうど良いところにウルヴェンが。戦闘開始・・・とはいってもすこし離れたところから光矢でヘッドショットをぶち込めば試合終了。魔獣の肉や骨をとってからさらに街道を進む。俺も強くなったものだ。アレーに来る前はしっかりと戦ってやっとだったのに、今では片手間だ。強化魔法をかけていたこともあるのだが。
まあ、こちらも至極平和に、マイペースで旅を続けた。あんなことになるとは知らず・・・。




