鬼の倒し方 Ⅱ
普通に戦えば勝ち目がない。数日前に戦ったとき、痛感した。
だからこそ、普通ではない戦法を選んだ。それは―――
俺は思いきり逃げていた。攻撃を仲間に任せて。
そして、岩陰に隠れる。考えを整理するために、かつ、最終準備をするために。
(まず、ボスを部屋の隅に追いやる。トラップにかかったら、最終術式を発動。よし、完璧!)
そうと決まれば、あとは魔力を固め、術式の形にするだけである。それが難しいのだが。
ある一点に、集中して魔力を送り込み、遠隔で土を生成。作った土に対し、
「付与、魔法強化、火花、発動延長」
小声で詠唱。相手を一時的に行動不可にする魔法を使用。準備だけをしておいて、いつでも発動できるようにした。
もうひとつの発動準備は・・・・・・よし、できてるな。あのあたりに魔法文字の入った矢がいっぱい刺さってる。
すべての準備は完了した。ライケンもそろそろ疲れ始めているし、そろそろいい頃か。
純也、行きます!!
純也が戦線に復帰した。
その頃、ライケンは純也の読みどおりに、疲弊していた。当然のことながら、魔剣の操作にも、魔剣の能力発動にも魔力を使うのだ。
フォリッジも、普通に矢を放ちながら、気付かれないように、術式発動に必要な、魔法文字の書かれた矢を的確に、指定された場所に撃ち、さらに、魔力を纏わせた矢で、少しずつ相手にダメージを食らわせていた。
二人は懸命に戦い、仲間を信じていた。
「あいつならきっとできる」、と。
俺は二本の剣で、同時に同じ剣技を放つ。
「剣技、トリプル・へビィ・スラスト!」
二本の剣で三発ずつ、計六発の重い突き。
当然、腕に強い負担がかかるが、相手はひるみ、後退っている。
六発目の突きの勢いを利用し、バックステップで後退。間を置かずに、魔法を放つ。
「魔法強化・光矢・付与・火花、×3!」
90まで上がったMPと、ポーションという便利アイテムの力による連続高火力魔法系攻撃の連鎖。メテオはさっき使ったばかりだし、連発による魔力消費はその後の行動に深くかかわってくる。そのため使用していない。
代わりに、単発の火力はそこまでではないものの、魔力消費があまり大きくない攻撃魔法や剣技を連発して、相手を押していくことにした。何も、この作戦では倒す必要はないのだから。
スパークの効果で動けなくなったレッサーオーガを横目に、体力を回復してからMPを回復。二人も回復しようとしたとき、「危ない!」
ライケンが叫んだ。背後からレッサーオーガが襲い掛かってきていた。
しまった。レッサーオーガの魔法抵抗力を侮っていた。まさか、こんなに早く回復するなんて!魔法威力増加スキルのレベル上げとけばよかったな・・・。
間一髪でかわしたが、その先にはライケンがいる!彼を守る方法を考えた。
・・・・・・今からライケンを庇いに行く・・・いや、一瞬前に離れたばっかりだろ!もうすでに至近距離だし!じゃあ・・・・・・魔法?・・・・・・・・・駄目だ、微妙に間に合わない。あああああ!もう駄目だ!もう守れない!でも、守れなければライケンは死ぬし・・・・・・一体どうすればいいんだ!
しかし、俺の仲間はもう一人いた。
「プロテクション・シールド」
フォリッジである。
「僕、魔法は昔から得意だったんだ。自慢じゃないけど、学生時代はよく“魔法学園で一番の魔術師”と言われたものだよ」
魔法は得意だったようだ。彼は、珍しく得意げに、ライケンに防御魔法をかけながらそんなことを話してきた。ここの学制はよくわからないが、とにかく、それほど魔法が上手だと言いたいようだ。
とにかく、ライケンが助かった。そして、ボスをおびき寄せるのに効果的な方法も思いついた。
「じゃあ、その“魔法学園一の魔術師”さんに少し働いてもらおうか。・・・作戦変更だ」