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チートレス転生者の冒険記 ~力なき異世界転生~  作者: 沼米 さくら
素材集め編・承――ただいま迷宮踏破中。
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依頼

四日後。その夕方。

「何なんだっ!」

酒場にて、俺は世の理不尽を叫ぶ。

この四日間、俺はダンジョン攻略を続けた。一日一階層ずつ完全攻略し、今日も地下15階の完全攻略をした。

したはいいが、俺の予想は甘かったようで、ここまでひとつも魔石を見つけていない。

ちなみに、ダンジョン全体の攻略状況はというと、地下16階でとまったままだった。

つまり、明日からダンジョン最前線デビューである。

「めんどくせぇ」

酒を飲みながら独り言をつぶやいていると、冒険者の一人が話しかけてきた。

「兄ちゃん、そこの・・・黒髪の・・・冴えない兄ちゃん」

「えっ、俺のことですか?」

「おう、ここで黒髪といえばお前しかいねぇじゃねえか」

小柄でひげがすごい。しかし横に太い。この人はドワーフか。

うん。冴えないなんていってほしくなかった。後、なんだったんだ、さっきの俺を呼ぼうとしたときの間は。

とりあえず、それは無視しておこう。

「何の用ですか」

「ああ、ここ最近がんばっているじゃねえか。毎日完全攻略決めて」

「はい、ありがとうございます」

「その頑張りを見込んで頼みてえことがあるんだが」

「な、何ですか」

これは厄介だ。いわゆる個人宛の頼みごとということで、ギルドを経由させずに直接頼まれる仕事である。

それは、名の知れた冒険者に頼まれることが多く、ギルドの仕事と違い、自由に報酬を決められる。

しかし、非正規の仕事なので、ギルドの仕事以上に危険なこともある。

報酬に目がくらんで危険な薬の取引の手伝いをした結果、逮捕されたり、最悪殺されたりすることもある。

仕事はしっかりと聞いて備えなければ。

「ある魔物を倒してほしい」

それは、近くの森にいるキクロプスを倒せというもの。

キクロプスとは、巨大な体を持つ爬虫類である。ドラゴンの一種といわれるほどの巨体と防御力、炎ブレス攻撃も持っている。強力な魔物である。

それと戦うなんて、よっぽどの報酬がないと、やる気が出んな。

「断ります」

「そこを何とか」

「じゃあ報酬は何ですか」

「俺に出せるものなら出そう」

ならば、この旅の目的である、あれを要求しよう。

「じゃあ・・・・・紅の魔石でお願いします」

「え・・・・」

どうやら予想外だったようだ。

「お前、まさか魔石のためにここに着たのか」

「はい」

「・・・・・ここ数日の完全踏破もそのためなのか?」

「はい」

「何でそんなに魔石がほしいんだ?」

「もっと強くなるためです」

「ほう・・・」

俺に向けられる、見定めるような視線。

俺は、相手に一つの疑問を持った。

「逆に聞きたいんですが、何で、そいつを俺にやらせたいんですか?自分で倒したり、ギルドに依頼を出したりとか。ほかにも方法はいくらでもあるじゃないですか」

「・・・・・ああ、自分じゃとても倒せねぇほどの強さだった。後、近頃ここらでも話題になっている、“二刀の魔法剣士”の強さがどれほどか気になったんだ」

「それはありがとうございます」

話題になっていたんだ、俺のこと。

「だが、魔石は持ってねぇんだ。紅どころか、普通の魔石も持ってねぇ」

「じゃあこの取引は無しということで。すみません」

「ああ、こっちこそすまねぇな。面倒なこと言っちまって」

「いいんですよ。がんばってくださいね」

「・・・お互いに、な」

結局、キクロプス討伐クエストは成立しなかった。


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