緊急事態
何事も無く森を歩き、さらに十数分。
疲れた疲れたと連呼しながら歩いていたら、突如、巨大な影に覆われた。
自分より1メートルほど高い身長、グルグルと唸りながらこちらに近づく4本足の獣。巨大な犬だった。
あれは・・・・・
「ウルヴェンだ!!」
俺たちはとっさに茂みの中に隠れた。
何故ここに!?
正直言って、あれはトラウマだ。
転生したてのとき――あれは、死んでから2時間30分後ぐらいだろうか――あれに食べられかけたのだ。
「恐らく、コボルトを追って、ここまできたのでしょう。あわよくば、通りかかった人間を食べようとも思っていたのではないでしょうか」
おいおい、まじかよ。だとしたら・・・・・
「つまり、狙いはあたしたちなのね~。あたしらを食べたいのね~」
チェシャがのんびりした声で恐るべき事を言った。
「それ、絶体絶命じゃね!?」
俺の言葉にラビは、
「はい、そうですね。と、言うことで、戦いましょう」
あっさりと返答。
というか、ラビ、体力すごいな・・・。
「えっ、戦うの!?私、もう魔力残ってないよ!?」
そこで思い出した。
「そういえば、魔力回復ポーション持ってきてた」
「おや、準備がいい」
こんな事もあろうかといくつか買っておいたのだ。供えあれば憂いなしとはこのことである。
「ちなみに私も持ってきました」
俺とラビは、それぞれ4本ずつ持ってきたので、合計8本。一人2本ずつ飲んだ。
そして、草の陰から飛び出し、ウルヴェンに奇襲を仕掛けた。