大きな町
気付いたら知らない場所にいた。石を積んで作られた家のようだ。
窓から明るい光が差し込んでいる。
ベッドに寝かされていたようで、そばには禿げているマッチョのおっさんがいた。
「お、起きたか」
この声は、さっき俺を助けてくれた男の声だ。彼が俺を助けたのだろう。俺は起き上がり、ベッドに座り、そのまま頭を下げ、
「先ほどは助けていただきありがとうございました!」
と礼を言った。
「ちょっと落ち着け。腹も減っているだろう」
と男がなだめるように言う。
俺の腹が大きく音を立てた。
彼は町の酒場に連れて行ってくれた。
お互いに自己紹介をした。
彼の名前は、スキン・マッチョウ。見た目どおりの名前だった。本人の前では言わなかったが。
彼は冒険者をやっていて、昨日、魔獣討伐に出かけたら、ターゲットの魔獣が俺を襲っていたので討伐ついでに連れ帰ったそうだ。
街の雰囲気はまさに異世界というべきものだった。さまざまな種族の人たちがひしめき合っている。人間が多いが、たまに獣の耳が生えた人がいたし、昨日見かけたようなトカゲ男(リザードマンというらしい)もいた。
「さあ、どれにする?奢るぜ」
そういってマッチョウさんが差し出してくれたメニューの言語はなんと、日本語だった。いや、よく見たら漢字が少し違う。しかし、日本語とほとんど同じようだった。とりあえず、ウルヴェン(昨日俺を襲った魔獣)肉のステーキが美味しそうだったのでそれにした。予想通り美味しかった。
食事中にマッチョウさんはこんな事を訊いてきた。
「ところで、お前どうしてここに来たんだ?」
やっぱり聞くと思った。俺は、考えていた答えを口にする。
「田舎の村で育ちまして、仕事を探しに町に出ようとしたら魔獣に襲われまして」
異世界で死んで転生してきたなんていったら信じてもらえない上に、笑い話になるだろう。
こんな事も訊かれた。
「お前、冒険者になる気はあるか?」