悪魔憑きの狂戦士
――かつて、凶悪な冒険者がいた。
悪魔を宿したような黒いオーラ、黒い闇を持った妖剣、狂ったかのように切り刻み、グロテスクな惨殺を好む。
その戦いぶりなどから、いつしかこう呼ばれるようになっていた。
”悪魔憑きの狂戦士”と。
光弾がユウの横を通り抜け、かすり傷を作ったとき、何かが切れる音がした。
ぶちっ、と太い綱が切れるような音が聞こえた、気がした。
そして、ユウはそのとき、黒いオーラを吹き上げていた。
よく見たら、いつも笑顔だったのに、真顔になっている。いや、無表情といった方が正しいだろうか。闘気からか、髪は逆立っている。
ゴゴゴゴゴッ
地震が起こる。
暗く曇り今にも雷が鳴りそうな、と言うより、折れた電柱や壊れた建物などの瓦礫が転がり、命を喰らう化け物たちが蔓延る世紀末を幻視させる雰囲気がユウを中心にして放たれる。
やばい。本能が危険信号を発している。
周りを見渡すと、ある人は泣き崩れ、ある人はカタカタと震えながら失禁し、ある人はユウのかけたバフが切れないうちに猛ダッシュで逃げていた。中には、気を失った人もいた。
ベルセルクもただならぬ気配に武者震い・・・びびっているようだ。
そこで、ユウが口を開く。とても低い声で、
「いでよ、我が刃。悪魔妖剣“死邪”」
闇のオーラがユウの手に集まり、闇の色をした両手剣‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑死邪が現れる。
恐ろしい。何で性格も変わっているんだ。もうほぼ別人じゃないか・・・。
ベルセルクは、震えながらも
「ふ、ふん。所詮闇を纏っただけのもの。変わるはずがない。死ぬがいいわ」
光弾を放った。
魔力を多く使ったらしく、さっきよりも大きい光弾がユウに直撃。
しかし、ユウは無傷だった。実は直撃寸前でユウが叩き壊していたのだが、それは彼をのぞき誰も知らない。
俺たちは驚きと恐怖でもう声が出ない。
そう、いつか聞いた悪魔憑きの狂戦士は―――
ユウのことだったのだ。