孤独と希望
命の瀬戸際から這い上がってきたばかりとはいえ、今は戦場の最前線にいる戦士だ。立ち上がり、体を動かす。正常に動くことを確認し、駆け出す。
どこだゴブキング!お前を殺せばすべてが終わるんだ!
心の中で叫びながら両手の剣でゴブリンを切り刻む。走り続けた先で、大きなものにぶつかり、立ち止まった。キンコツゴブリンだ。
自分より頭一つか二つ分高い身長と圧倒的な威圧感、大きな体と厳しい顔。それが、俺に恐れをもたらす。しかし、ここを突破しないと戦いは終わらない。俺は、すくむ足を奮い立たせ、戦闘を開始した。
いつまでも終わらない戦い。俺の命だけが削られていく。攻撃を避けても、避けた先に攻撃が飛んでくる。突いてもはじき返され、切ったら皮膚が一枚切れるだけでその先の筋肉が切れない。左手の剣は盾に持ち替え、攻撃を防ごうとしていたが、それもわずか5回の攻撃でひしゃげて使い物にならなくなってしまった。
孤独な戦い。頼れるものは何も無い。これまでとは違い、ユウが体力を回復してくれるため、命の危機にはさらされないが、その代わり、それがいつまでも続く。永遠の攻防。こいつを殺す方法も思いつかない。ただただ独りだった。
助けがほしかった・・・仲間なんていない。仲間がほしかった・・・出来るわけが無い。いつかのことを思い出し、泣きそうになる。希望と現実の狭間、叶うはずの無い願いにゆれていたあの時。永遠の孤独を受け入れた振りをして、実は絶望に暮れていた、死をも夢見たあの時。命を捨ててもかまわないと思っていた。本当に大事なものも知らずに‑‑‑‑‑今も知るはず無いが‑‑‑‑‑生きる理由もなく、しかし、死にたくも無くて、ただ生きていた。今も同じだ、あの時と。結局俺の運命は孤独しかなかったのだ。
俺の精神はもう風前の灯だった。魂は擦り切れていた。死ぬしかなかった。そのとき、俺の目の前に、
「待たせたな」
「さっきも言ったでしょ。あたしたちがいることを忘れないでって」
希望が――仲間が現れた。
俺は、一人ではなかったんだ。