ゴブリンの洞窟
そんなこんなで洞窟の前にたどり着いた。ここがゴブリンの巣らしい。2~3秒に一回ゴブリンが出てくる。ちょっと怖い。案内なのかどうか知らないが、入り口の前に冒険者が立っていた。
「すみません。第二陣の皆様ですよね」
「はい、そうですけれども」
誰かが返事をする。
「すみません。洞窟内はゴブリンが多いので、手伝っていただけますか」
なんてこった。彼は案内ではなく助けを求めていたのか。しかし、ベテランでもてこずる量ってどのぐらいなんだ。
俺たちは、彼の頼みを快く引き受け、想像もつかないまま洞窟へと入った。そこで見たのは驚きの光景だった。大量のゴブリンと人間が入り乱れ、戦っている。特に、ゴブリンは一体一体は雑魚だが半端無く数が多い。迷宮的なものではなく、ただただ広いスペースになっているようだ。
「おーい。みんなー。2陣が来たよー」
ユウの声だ。どこにいるのだろう。
「二軍の人はどんどんはいってー」
見回してもどこにもいない。
「ジュンヤ君。こっちだよ」
いつの間にか後ろにいた。「うわっ」と驚き、振り返った。
「あはははは。ごめん」
「謝るんならやるな」
「あはははは~。がんばってね~」
「ところで、さっきまでどこにいたんだ」
「あの上」
とユウが指差した場所は、洞窟の壁から小さく突き出ていた岩だった。
「・・・まじか」
「・・・まじ」
笑顔で答えるユウに驚きを隠せない。そんな俺を気にせず彼は言った。
「じゃ、僕はもう行くよ」
そういった彼は、笑顔のまま足に力を込め、笑顔のまま猛スピードで飛んで行った。それが何の比喩でもないことが、少々恐ろしかった。