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四月馬鹿(と書いて April fool と読む)

 

 今日は(現実世界換算で)四月一日。

 つまり。

「ウェーイ! 今日はエイプリルフールじゃあぁぁぁぁぁ!」

「なにそれ」

 つい叫んでしまった。そばにいたアリスが首をかしげる。かわいい。

 ……とりあえず冷静になろう。

 ここは馬車のなか。“学園都市”に向かって移動中。つまり、第三部の時間軸なのだが。

 ……時間軸を混乱させたことはすまないと思ってるよ?

 さて、エイプリルフールについて。

「エイプリルフールっていうのは、その日一日だけは嘘をついてもいいっていう、俺のいた世界……村の文化だ」

 説明すると、アリスは(なるほど)という顔で頷いてから言った。

「そうなんだ~。知ってたけど」

「知ってたのか!?」

「嘘だけど。知らなかったよ」

 いきなり嘘をつきやがった……。

 色々と急がしすぎて各種イベントをすっ飛ばしてしまった分、リアルタイムで楽しめるちょうどいいイベントは逃すまいとでも思ったんだろう。この作者は。

 この小説も、もう連載一周年なのにな。というか、この文章も一周年の当日に書いてるし。これは嘘じゃないよ。

 メタ発言まみれのモノローグを垂れ流しながら外の景色を眺める。

「そういえば、リリスとノアはどこにいったんです?」

 ラビが聞く。

 たしかに二人の姿が見えない。

 チェシャが口を開く。

「あ~、二人とも、ちょっとなんか見つけたから狩ってくるって言ってた~」

 そういうことか。それなら仕方ないか……。

「学園都市までもうすぐだね」

 珍しくユウが話しかける。

「そうなのか? もうそろそろ王都を離れてから三日も経つけど」

「うん、あと数時間ってとこかな」

「……ほんとに? まだなにも見えないけど」

「…………今日はエイプリルフールだってことを忘れたの?」

 信憑性の高い事実のような嘘を吐くな……。

「ちなみに、学園都市まではあと四日ってとこかな。行ったことないから知らんけど」

 行ったことないんかい!

 俺はため息をついた。

「じゃあ、今日も勉強始めるぞ」

「え? それこそ」

「残念、これは嘘じゃないから」

「そ、そんな殺生な……」

 アリスはうなだれた。殺生って……そんな言葉どこで覚えたんだろう。

 そんなアリスにチェシャが耳打ちする。

 何を話しているんだ……?

 そう思ったら、急にアリスが叫んだ。

「あ、ま、ま、魔物が!」

 魔物? あ、たしかに。こちらに近づく大きめの魔力が一つ。きっと、魔獣かなんかだな。

「本当だ! 教えてくれてありがと! 見に行ってくる!」

 俺は言って、ささっと準備。

 言った本人であるアリスが驚いているように見えるが、まあ気のせいだろう。

「じゃあ、行ってくるぜ!」

「うん、待ってるからね!」

 アリスは戸惑いつつも笑顔で手を振った。


 しばらく経って。

 ふう、こちらに向かって歩いていた魔物を退かそうとしたらいきなり襲って来たから、戦ってどうにか倒した。なので疲れた……。

 赤くなりだした太陽を横目に、馬車に戻ると。

「お、おかえり……なさい……」

 なんとそこには、白にピンクラインとフリルの入ったかわいらしいエプロンを素肌の上に直接まとった衝撃的な姿のアリスが――!

「お、お風呂にする? お夕飯? それとも……わ・た・し?」

 顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに言う裸エプロンのアリス。

 俺は奇声を上げて鼻血を吹き出して倒れた。

 ……倒れたとき、真横には(鼻血で)顔を真っ赤に染め上げて白目を剥いたラビがいた。

「ちょっと、ジュンヤくん、大丈夫!? チェシャ、どういうこと!?」

「童貞にはまだ早かったようね~」

 そう言うチェシャもアリスとおんなじような服装で――その……豊満なお胸様を拝見した途端……。

 理性が崩壊して吐血して気絶したのだった。


「誰だ、アリスにこんな知識を植え付けたのは!」

 無事に起こしてもらってから、説教タイムである。

「え、えいぷりるふーるで……」

「流石にやっていいことと悪いことがあるだろうが!」

「……だって……こうすれば喜ぶって……」

 涙ながらに訴えるアリスに、俺は表情を緩め――。

「……チェシャが」

「やっぱりお前かあぁぁぁぁぁ!」

「ぎゃにゃ――!」

 助けてもらったところ悪いが、ちょっとこっちに来てもらおうか! お仕置きだべ~!


「うう~、もうお嫁に行けない~」

「そのときはもらってくれるって。ラビが」

「えっ、ぼ、僕ですか!?」

 ラビの顔が真っ赤になる。鼻血はもう拭いたはずだけど。

 そんなことはともかく。

「それにしても、リリスたち遅いな……」

「たしかに……。あの子たちのことだからまずい事にはなってないはずだけど……」

 俺の言葉にアリスが反応。

 狩ってくるって、どこまで何をだろう。

 と、そのとき。

 内部が真っ暗でなにも見えない穴の様ななにかが馬車の中に出現。

 そこから、リリスとノアがひょっこり顔を出した。

「お待たせ!」

「今夜はぱーりぃないとだよ!」

 いきなりすぎるが。まあ、いいか。

 さらに、穴の中からは大量の食材が。

 ああ、かってくるってそういうことだったのね。食材を買ってくるってこと

 その夜は宴会と相成ったのだった。

「でも、なんで今日はパーティーなんだ?」

「今日が連載約一周年記念日だから。正確には三月二十八日だけど」

「メタ発言!」

「まあ、どうだっていい! 飲んで食って歌え!」

 リリスと話したり、あとは……そのとおり、飲んだり食ったり歌ったり。

 とにかく楽しんでいる最中、ユウがまたも口を開いた。

「そういえば、エイプリルフールって、嘘をつけるのは午前中だけじゃなかった?」

『え?』

「あ……」

 たしかにそんなのあったかも……。

 ……これからはよく知らないことの布教はやめておこうと、ひそかに心に誓ったのだった。


 終わり。


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