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一週間後・真相。


 しばらくして。

「なあ、俺が寝ていた間、何があったんだ?」

 一週間も寝込んでいたため、その間の出来事が知りたい。

「……僕から話そうか」

 そう言ったのは、ユウだった。

 彼は、語りだす。


「……あの時、アリスに魔法を撃たれて君は気絶したんだ――」


~~~~~回想~~~~~


 ――あのときの戦いははっきり言って異常だったよ。だって、模擬戦のはずなのに、両方とも相手を殺そうとしているんだもの。

 まあ、僕も同じ様なものなんだけど。

 強い酒で酔っていた感じなのかな。ただ挑発しあって、それに乗せられて、互いにおかしくなってた。

 いつもの僕なら、あんな戦法は取らない――いや、そもそも戦わないと思う。誰かの命を奪うなんて、もうごめんだからね。参加したとしても回復に専念したと思う。


 でも、その時は違った。


 確実に相手を動けなくするために、相手が死ぬほどの恥をかくようなことをした。

 それが原因で、すべてに決着がついた。

 彼女は胸が出たことによって、恥ずかしくなり、戦闘不能に。

 さらに、相手チームのもう一人の男も、その胸に見惚れたせいで武器を奪われたことにより、倒された。

 けれど、それは喜劇にも見えるような悲劇を生んだ。


 純也、君もあの胸に見惚れただろう?

 だから、それに嫉妬した(バストが平坦な)アリスが君を倒してしまったんだよ。


 …………え? なに言っているのかわからない? ……僕もさ。きっと、ネタだよね。このシーンは。作者もそのときなに書いているかわからなくなっただろうね。

 そのあと。

 僕らはすぐに君を救護室に連れて行った。僕の高位治癒魔法を使って、完全に回復させた。

 だけど、君は目覚めなかった。

 強く頭を打ったことで医学的な意味で少し危うい状況になっていたのかもね。この世界は魔法で治せない病気は大体治せないから。一応医者もいるけど、ほぼ当てにはならないし。

 僕らはさまざまなことをした。

 チェシャが君のために町の教会に頼んで部屋を作らせた。君が眠るための部屋を。

 ラビ君は、カイたちと一緒に事後処理を引き受けてくれた。

 アリスは寝る間も惜しんで君の看護をしてくれた。リリスちゃんやノアくんも手伝ってたね。

 

 そう、この一週間は、みんなで君のためにがんばってたんだよ。


~~~~~回想終了~~~~~


「そう……だったのか…………」

 俺は驚いた。

 それから。

「本当に、ごめん」

 俺なんかのために、一週間潰して、予定を壊して…………。

 そんな風に言おうとした。

 だが。


「なに言っているの? ジュンヤくんが謝る必要なんて、ないのに」


「え?」

 どういうことだろう。

 俺は一瞬、アリスの言葉の意味が、わからなかった。

 さらに、チェシャが続ける。

「……もっと、自分の価値をわかったほうが、いいと思うよ~。――キミは、もう、一人じゃないんだから」

 なんかのマンガから取ったとも思えるような、ありふれた言葉。昔は「創作でしかありえない」とか、「所詮ただのキレイゴトだ」とか思っていた言葉。

 それが、こんなにも俺を――。

「謝らないでくださいよ。仲間のために、何かするのは、当然のことですよ。謝りたいことならこっちにもたくさんありますし……」

 そういってラビが苦笑する。その顔の輪郭がなぜかゆがんでいく。

「……っ……さっきの言葉は……撤回……で……」

 目からあふれた水が頬を伝う。


「……その代わり…………ありがとう…………」


 俺は、涙を流しながら、微笑んだ。


**********


 その後。しばらくしてから俺は泣き止んだ。

「どう~? 落ち着いた~?」

「ああ、見苦しいところを見せてすまんな」

「いいのいいの(大丈夫こういうところもかっこいいから)」

 通常営業の仲間たち。

 しかし。

「そういえば、アリス」

「な、なに!?」

 ラビの呼びかけに、アリスは明らかに動揺する。

「謝ることといえば……」

「あっ……はは……は……は…………」

「ほら~。さすがにあれはしゃれにならないって~」

「うん、まあ、それはそうなんだけど……」

 ……彼女は誰かに謝らないといけないようだ。それならば背中を押そう。

「……何かは知らないけど、そういうのは早く謝っておいたほうがいいんじゃないか?」

「ジュンヤくん、魔法であなたを気絶させちゃって、本当にごめ――」


 ドゴォォォォォン


 アリスのその言葉をさえぎるように、轟音が鳴り響く。

「なんだ!?」

 俺たちは外を見る。

 それを見たユウがつぶやいた。


「――僕たちは、まだ休めないようだね」


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