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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢が変態淑女だった場合

作者: あおいろ発泡飲料

悪役令嬢の前世→サディストでマゾヒストで猟奇的なものが大好きな、趣味:拷問器具集めの社長令嬢

婚約者の前世→娯楽に飢えた苦労人副社長、前世でも婚約者だった


悪役令嬢が地味に(趣味と実益を兼ねた)炎系魔術特化

Case 1:悪役令嬢によるヒロインの罵倒




「あらぁ、みすぼらしい子鼠がうろついているわねえ。これ以上黴菌を撒き散らかさないよう、ここで始末しないと…」


王家主催の夜会にて、公爵令嬢であるアイリーン=フィアッテの冷たい声が、子爵令嬢であるメイサ=イシュヴァーニアに突き刺さる。声に反したその表情は、妖しくも美しい、恍惚としたものであった。

メイサの正面には、アイリーンの婚約者である王太子、セイグリッド=グランソリエがいる。メイサは愚かにも、彼のその腕に手をかけていた。セイグリッドが後退って身を引いているところを見る限り、彼がメイサを拒絶しているのがわかる。

セイグリッドはアイリーンの表情を見て、「ああ、今日はSモードか」と遠い目をした。Sモードとは、アイリーンの変態的嗜好の中でも加虐的嗜好が強い状態のことである。これが被虐的嗜好が強くなるとMモードと呼ばれる。ただし、呼ぶのはセイグリッドとアイリーンのみだ。ちなみに猟奇的嗜好が強くなるとBモードとなる。その由来は血である。


「ねえ、セイグリッド殿下。ちょっとくらい焦げ臭くなっても構わないかしら?」

「ナマモノの焼却処分、ダメ。絶対」


セイグリッドはメイサの手を振り払うと、アイリーンの魔力で深紅に染まった鉄扇を取り上げた。熱せられていることを失念していたため、火傷した。もちろん自分で治癒術をかけて治療した。

アイリーンはその火傷を見て、深紅の瞳を濡らして震えた。興奮が高まって軽く絶頂したらしい。治療後は恨めしそうにセイグリッドを睨みつけた。取り上げた鉄扇で、彼女の頭を思い切り殴った自分は悪くない。思わず自己弁護した。











Case 2:悪役令嬢によるヒロインへのいじめ




「あの子、ずるいわ…っ。わたくしもあのように影でこそこそいじめられたいのに!」

「お望みならやるけど?」

「貴方はワンパターンだしいじめじゃないから却下」

「…いじめなんてできるわけないじゃない。王太子だもの」

「ちょいちょい挟む小ネタが鬱陶しいわね…」

「娯楽に飢えてるんだよ」

「わたくしを鞭打ちすればいいわ!」

「それ君が楽しいだけだよね」


アイリーンは他人を罵倒こそすれ、いじめなどはしない。自分からする分には、体罰の方が好きだからだ。しかし、自分がされる分には、こそこそといじめられたいという思いがある。今までされたことがないからこそ、いじめに遭う自分に興奮するのだ。ちなみにセイグリッドによるいじめは、この世界では馴染みのない菊の花のプレゼント――わざわざ遠い西の国まで自ら出向いて種を調達し、個人資産で購入した土地に花壇を作り、愛情込めて育てたもの――に、呪いの手紙――ただのヤンデレ感満載のラブレター――であった。菊の花はフィアッテ家一同に愛でられ、呪いの手紙はアイリーンの宝箱(今年に入って五つ目になった)に保管されている。いじめにすらなっていない。

今日もアイリーンは、メイサの陰口を聞いて悔しそうにハンカチを噛むのであった。――その際歯を痛め、それがちょっと気持ちいいと思ったのはアイリーンだけの秘密である。











Case 3:悪役令嬢のヒロイン(というか取り巻き)による断罪劇




「アイリーン嬢、今日で貴女の悪事は終わりだ!」


アイリーンのお眼鏡に適わなかった、美形とは言えない、公爵令息であり次期宰相と名高い青年が、フィアッテ家主催の夜会にて声高に宣言した。アイリーンは(本人曰く)見るに堪えないその姿を、即刻視界と記憶から削除した。アイリーンが青年の存在を無視したため、夜会に出席する多くの貴族は、青年と、青年の隣に怯えたように立つメイサを、記憶の片隅に追いやって食事を楽しんだ。

その様子に、怒りに顔を赤く染めた青年は声を荒げた。


「アイリーン嬢、三日前の午後二時、メイサを馬車で轢き殺そうとしただろう!」

「………………いつでもどこでも焼き殺せるのに、どうしてわざわざ馬車で轢き殺さなくてはならないのかしら?そんなの馬と道路と道行く人が哀れだわ」

「その馬車ってコングスタット子爵の馬車だよね。メイサ嬢の婚約者の家の馬車」

「えっ?」


アイリーンの反論とセイグリッドの情報に、青年は思わず固まった。

アイリーンの言う「いつでもどこでも焼き殺せる」は事実であると知っている。セイグリッドの命を狙った不届き者の脚を、視界に入れずに焼き落とした現場を目撃したことがあるからだ。

さらにセイグリッドの馬車の情報は、青年の知らないものである。どこの家のものかなど、メイサの話を聞いて調べることなく、アイリーンを疑ったためだ。

不意に耳に入った現実に、情報に、青年が固まる。

アイリーンとセイグリッドはそれを視界から消去し、マイペースに会話をする。


「ねえ、セイグリッド。いい加減この黴菌塗れの子鼠を焼却処分した方がいいと思うの」

「だからナマモノの焼却処分、ダメ。絶対」

「それに焼死って溺死に勝るとも劣らない苦しい死に方よ?ああっ、肉と血の焦げる匂い…喉を焼かれながらの絶叫!腸の中の汚物でさえ、死に様を彩る甘美な香りになるのよぉ…!」

「ああ、今はBモードか…頼むからここではやらないでね。あと想像だけで興奮するのこれで何回目?」

「主食は妄想です。キリッ」

「その顔だとどちらかと言えばシャキーンだよね」

「あらやだ失敗しちゃったわ」


のんきに二人が会話している間に、その場にいた宰相がいじめの主犯と馬車の自作自演の証拠を記載した書類を息子である青年に渡し、アイリーンの妄想――余裕でR18-G規制がかかる、そんじょそこらのホラゲーが怖くなくなるほどのもの――が爆発してセイグリッドに鉄扇で頭を叩かれるまでに、メイサと青年、実はいたその他取り巻きの貴族令息たちが夜会から追い出された。

おまけのその後の会話文


「わたくし、一度でいいから大衆に蔑みの目で見られたいわ。どうすればいいかしら?」

「あのヒロインを大衆の面前で凌辱すればいいんじゃないかな」(投げやり)

「よし」(ガタッ)

「させないけど」(ムチで しばる こうげき!)

「ああッ、この拘束具合、イイッ…」

「ちょっ、鼻血鼻血!」


「あの変態をどうこうできるのは王太子殿下だけだよなぁ…」

「いくら美人で教養もあって家格が高いからって、あそこまで変態だと…」

「希望に沿って味占められた結果が殿下だからな…」

「殿下も物好きよね…」

「私、一度でいいからアイリーン様とセイグリッド様に虐げられたいわ」(恍惚の表情)

「へ、変態がここにも……!」

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