表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消えたがりの見る夢  作者: 四方ととけ
1/1

消えたがりと夢世界


「最近の調子はどうかな?透夜くん」

「いつも通りです。」

「そうか、じゃあ学校は行けてる?」

「木曜は休みましたけど金曜は行きました。」


この精神科に通い始めて1年が経とうとしている。

でも俺の”消えたがり”の癖は治らない。




自殺願望とは少し違う。

どちらかと言えば『穴があったら入りたい』の方が近い。

消えたい。とにかく存在を消したい。死ぬことで自分の存在が消えるなら死にたい。

物心ついたときからこんなことを言うもんだから、母親はいよいよ限界を感じて高校1年生のときから精神科に通うことを勧めた。


「透夜、」

「母さん、次の診察は来月で良いってさ。」

「……来月ねわかったわ。」

母さんは基本的に不安を顔に出さない。

いつもニコニコしてる。俺がどんなに変なことを言おうと。




(そろそろ時間か…)

俺にはもうひとつ変な癖がある。

毎日ほぼ22時45、46分頃には気絶同然に眠りに落ちる。

そしてほぼ一瞬で朝を迎える。


しかし、最近どうも様子がおかしい。

時間に備えて布団に入る。フッと意識が落ちる。

ここまではいつも通り。

(……きた)


これは、たぶん夢なんだろう。


最初はよくわからない空間にいるだけだったが、最近は慣れてきて少しその空間に滞在できるようになってきた。

(たまには散策してみるか)

なんとなく気が向いて、その空間を探ってみることにした。


足がふらふらと、導かれるような感覚。

初めてなのに場所を把握しているかのように迷いなく進む。

心地よい空気に包まれて、ふらふらと、ふわふわと、そこにたどり着いた。


「よく来たのう。待ってたぞ。」


「………………え」

「お前の考えていること、見ているもの、大体分かるぞ。トウヤ。」

俺は、目の前に突然現れた真っ白な女の子から目が離せなかった。

「わしは善罪。善罪 シロ。」

「ぜんざい…?」

「いんとねーしょんが違うぞトウヤ。圏外と同じだ。まぁシロと呼んでいいぞ。齢は忘れた。そのくらい久しく待ち侘びておったぞ。……すまん。気持ちが高ぶると舌がよく回るんだ。」

「…君は誰なの。」

「だからわしは善罪シロだ。」

「いや、何者なの。」

「トウヤは何歳だ?」

「今年で17だけど…」

「じゃあシロも17でいいかのう。」

俺がいちばん気になってる質問にはことごとくスルー。

しかし、話している内容は至って普通の世間話なのに、なぜか、とても落ち着く。こんなことを感じるのは新鮮で少し戸惑うくらいだ。


(よくできた夢だな…)




感想を漏らしたところで、夢からの目覚めは唐突にやってきた。

「………あれ」

気付いたら視界には見慣れた自分の部屋。

もちろん善罪シロと名乗った女の子の姿もない。

(なんだったんだあの夢は…)

しばらく呆然とした後、考えても無駄と判断して布団から起き上がることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ