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第2話 ある冒険者の話

おい!本編が進んでねえぞ!

まじか!

でも1日1話は上げてるから!

今までのペースを考えろ!馬車馬の如く書け!

馬は文字が書けねえよ!

とりあえず死んで来い!



「変わらない世界にはストレスを与えてやればいいかもね。水面に石を投げるみたいに。」

その男が手をかざすと、大地に穴が開き、光の柱が立ち上った。

「これで、少しは変わってくれる、よね?」

中からは異形の姿をした者たちが出てくる。なかでもひときわ異彩を放つのがワータイガーと呼ばれる虎型の魔物である。

「ふむ、ちょっといじるか・・・。」

それが悲劇の幕開けだった。



 エルライト領冒険者ギルド。

「おい、何か報酬のいい依頼はあったか?」

俺はパーティーのメンバーに声をかける。ここはヴァレンタイン大陸でも有数の魔物の発生頻度の高い場所だ。必然的に高ランクの魔物も発生するし、それに見合う報酬も用意される。そして俺たちよりも強いパーティーなんて見た事がない。その中でも俺が最強だ。つまり俺が最強だ。

「うん、アダマンタートルが出たみたいだよ。どうする?」

アダマンタートルか。発生場所はエルライトの南西、ほとんどエジンバラ領だな。あの辺りはかなり強い魔物が発生する事で有名だ。アダマンタートルなら報酬も十分だろう。それに討伐後の素材が装備に使える。報酬額以上の利益が見込めるに違いない。そして、俺がいればあれはたんなるでかい亀だ。

「よし、それにしよう。」

「分かった、受けてくるね。」

そういうとヨキは受付へと駆けて行った。そんなに急ぐ必要もない。どうせこのあたりでアダマンタートルが討伐できるのは2、3パーティーしかいないのだ。

「まぁたヨキに雑用をおしつけちゃって。」

俺に文句を言える唯一の存在、俺の女のマリーだ。破壊魔法が上手い。パーティーになくてはならない存在となっている。

「新人に雑用を任せるのは当たり前だろ?」

「依頼の受理はリーダーの仕事よ?」

「あいつだって将来パーティーを組むかもしれん。何事も修行だ。」

「そんな事言って、面倒臭いだけでしょ?」

こいつには敵いそうもない。


「アクバル!今度の獲物はアダマンタートルだ。もう1人後方支援が欲しい。破壊魔法が得意なやつを募集しといてくれ。若くてもかまわんぞ。」

「了解、リーダー。」

アクバルは全身鎧の戦士だ。見た目に反して人づきあいが良いのでメンバーの補充などには役に立つ。マリーに言わせると俺は初対面のやつの前では喋らない方がいいらしい。理由はよく分からん。

「そう言えば、若いのでえらいセンスのいい破壊魔法使いがいたな。あいつでもいいか?」

「あ?知らん。任せる。」

アダマンタートルの足止めをするだけだ。ある程度の破壊力があればどんな木偶の坊でも構わない。やる事が同じだからな。

「もう、正直に後輩の冒険者にも経験を積ませてあげたいって言えばいいのに。」

「けっ、そんなつもりねえよ。おい!ヨキ!依頼の受理が終わったら1時間後に馬車を門の所に手配しとけ!アクバルもそれまでに補充のやつを探しとけよ!」

「あいよ、リーダー。」

「わ、分かりました!」

さて、1時間あるし景気づけに一杯やるか。



「しかし、もっと速い移動手段ってのはねえもんか?」

「馬車が出てるだけでも十分な速さよ?それとも騎馬で向かう?」

「それも疲れるしな・・・。」

半日馬車で揺られてそれから野営だ。目的地に着くまでに数日かかる。魔物がもっと近くにいてくれりゃあいいんだが、そうもいかないのがこの稼業の悪いところだ。目の前にいたらいくらでもぶっ飛ばしてやれるのによ。

「お、いたいたリーダー。さっき言ってたやつが捕まったぜ。ほら自己紹介しろ。」

アクバルが若い冒険者を連れてくる。なんかえらい華奢なやつだな。

「ダ、ダガー=ローレンスです。よ、宜しくお願いします!」

「おい、冒険者が来やすく名字を名乗るな。生き残るために何でもしなきゃならん時だってある。そんな時にお前は自分の家に責任を被ってもらうつもりなのか?」

「えっ!?あ、すみませんでした。」

「よし、乗れ、ダガー。」

「は、はいっ!」

ダガーが馬車に乗り込む。

「ほんともう、素直じゃないんだから。」


 目的地までは順調に着いた。

「お、あれか?」

かなり遠くからでもアダマンタートルは確認できる。なにせ馬鹿でかい亀がのしのし歩いているからだ。

「よし、マリーとダガーは左前足に攻撃を集中しろ。アクバルはいつも通り前面だ。噛まれないよりも踏まれないように注意しろよ。ヨキ、急所は首だ。落とせば死ぬ。」

「そりゃあ、首を落とせばどんな魔物だって死ぬわよ。」

「ふん、それ以外には攻撃箇所がねえな。あと、首落としても少しの間は動いてるからな。油断して反撃くらうなよ?」

「は、はい!」


 アダマンタートルの討伐は特に問題なかった。マリーとダガーが左前足を攻撃し、踏ん張る事ができなくなった瞬間に俺とヨキが首に斬りこんだ。ヨキの剣は骨で阻まれてしまったが、主要な血管は斬ることができたみたいで血が溢れてくる。

「骨を断ってこそ、首が落ちるんだぜ?」

俺の剣は数年前に討伐した魔物の中から出てきた巨大魔石を加工したものだ。切れ味はそのへんの物とは比べ物にならない。

「うらぁ!!」

一太刀で首を切り落とす。首だけでも2メートルくらいあるから大変だ。そして、首を落とされても動いている亀。気持ち悪いな。

 しばらくすると完全に動きが止まった。

「おい、ダガー!」

「は、はいっ!」

「よくやった、これやるよ。」

「えっ!こんな大きな魔石をですか?あ、ありがとうございます!」

ダガーがしっかりと頭を下げる。ちょろい。

「またぁ、そうやってアダマンタイトはあげないつもりなの?」

「うっ、いや、それははぎ取りが終わった後に全員で均等にだな・・・。」

「もう・・・。」


 エルライトの町に帰って報酬とはぎ取ったアダマンタイトを皆で分けた。

「ありがとうございました。これで、剣を作ります!」

ダガーはもらったアダマンタイトで剣を作るらしい。俺はどうするかな・・・。マリーに指輪でもつくってやるか?いらないって言われそうだな。でも、そんな事は知らんから作って押しつけよう。


「リーダー、なんか話があるってやつがいるんだが聞くか?」

アクバルがちょっとおかしな話を持ってきた。

「領主からの依頼なんだが、南東の村が1つ壊滅したらしい。原因を探ってほしいとの事なんだけど、何故騎士団が出てないかが不明だ。」

「・・・すでに騎士団は派遣された後・・・とか?」

「そんな!?派遣された騎士団が壊滅したってのか?」

「規模にもよるけどな。それ以外には今のところ思いつかねえな。」

「どうする?」

断るのは簡単だ。それに冒険者として命の危険を感じたら逃げるのも重要な才能である。だが・・・。

「なんで、俺たちに名指しで依頼がきたんだ?」

「そりゃあ、評判がいいからじゃねえのか?」

それだけか?名指しの依頼は金がかかる。ギルドを介せばいいはずだ。俺たちじゃなくても実力に見合ったパーティーが選ばれるはずだ。

「とりあえず、話だけでも聞こうか。」

「ああ、分かった。」


 連れて行かれたのはもちろん領主館だった。しかも応接室とは。

「よく来てくれた。」

まじか、領主自らとはなにやらまずい気がする。

「エルライト領主、フリーデン=エルライトである。こちらは次期当主のジンビーだ。」

こちらも自己紹介をする。次期当主まで来ているとなると、話はかなりややこしいのだろう。

「聞いていたよりも自然体であるな、もしや貴族の出か?」

「お戯れを、冒険者に詮索は禁忌でございます故、返答は控えさせていただきます。」

「ふむ、そうであったな。失礼した。それでは本題に移ろう。掛けたまえ。」

質のいいソファーに座る。

「話は聞いていると思うが、南東の村が1つ壊滅した。原因は魔物の大量発生だ。」

「魔物・・・ですか。」

「今騎士団が全力で抑え込みに入っている。だが、どうしても1匹の魔物が狩れん。そしてそいつがいる限り、発生原因と思われる穴をふさぐ事ができんのだ。」

「1匹ですか?」

「うむ、そいつはおそらくSSランク以上だろう。」

「SSランク以上・・・。」

「そこで、君たちにそいつを討伐して欲しいというのが依頼だ。もちろん騎士団は全面協力する。」

「・・・その魔物の特徴は?」

これは、断るわけにはいかなそうだ。

「虎型の魔物だ。見た目はワータイガーに近いが、おそらく変異体だろう。」

ワータイガー変異体か・・・、今のメンバーではちょっときついかもしれん。しかし・・・。

「断るという選択肢があるのでしょうか?」

「・・・私もあまり非道な事をしたいわけではない。」

やはり、ヨキの事がばれているか。仕方ない。

「分かりました。引き受けましょう。」

「すまん。」

「いえ、Sランクの義務でしょうから。」


 ヨキは、元々は貴族だ。しかし、親が領主に反逆を起こしたために家を取りつぶされ、ヨキ自身も処刑される予定だった。それをかくまっている。本名は別にある。

「さて、ワータイガーの討伐だ!」

「リーダー、僕のせいですよね?」

「いいや、違うな。ワータイガーの変異体だぞ?すくなくとも毛皮は最高級品だ。それに報酬が半端ない。そろそろ新しい鎧が欲しいんだよ。」

見え見えの嘘をつく。だが、これが必要な事だ。

「では、しっかり準備しろよ!明日の朝には出発だ!」


「ねえ、本当に大丈夫?」

「実際は分からん。単なるワータイガーなら問題ないが、それなら騎士団でも対処できるはずだ。ある意味賭けだが、ヨキの事もあるし引くに引けん。腹を据えてやるしかねえ。」

「私は、心配だわ。」

「すまねえな。」


 マリーとは故郷で出会った。その頃の俺は貴族の息子だった。下級貧乏貴族だったが、それでもプライドも持っていた。そして、身分違いの恋をした。

 相手はすでに結婚していた。しかも領主の正妻として。奥方様に惚れた俺はどうしても近くに行きたかった。奥方様は俺よりも10歳以上年上だったにもかかわらず、何も迷いはなかった。結ばれなくてもいい、だが近くにいたい。その一心で騎士団へと入った。

 数年すると、奥方様にはご嫡男が生まれた。領主の跡継ぎ、次期当主だ。俺は彼が少し憎かったが、それ以上に弟のような想いを抱く事に気が付いた。そして、それに気付いた時に俺の恋は終わったのだと思う。しばらくして奥方様は流行病でなくなった。ご嫡男は無事だった。今では無事に成人し、次期当主として貴族院も卒業されたという。

 奥方様の死で生きる目標を失った俺は騎士団を辞めた。そして、苛立ちの捌け口として魔物を狩るようになった。そこで出会ったのがマリーだ。彼女は俺の話を聞いてくれて、全てを受け入れてくれた。俺は初めて奥方様以外の人間のために生きてみようと思うようになった。

 マリーと組んだパーティーはいつしか最強とまで呼ばれるようになった。数名のメンバーの入れ替えがあったが、アクバルなんかとはすでに10年くらいの付き合いだ。そして数か月前にヨキを預かった。こいつらは俺の家族も同然だった。


 一度預かったからには全力で守りきる。今回の事をヨキのせいと思う事はない。俺がワータイガーの変異体を討伐すれば全てが済む事だ。



 現場に到着すると、すでに多くの騎士団が野営をしていた。中には負傷した騎士たちもいて、しかも人数が多い。

「こちらです。」

案内してくれた騎士に付いて行く。そこは崖になっていて遠くを見渡せるようになっていた。向こうのくぼんだ盆地に光の柱が見える。

「あの光の柱のふもとに穴があり、そこから魔物が湧き出てきます。」

「湧き出る?」

「そうです、文字通り湧き出ます。出るたびに騎士団で掃討するのですが、あの柱に近づくと奴が出ます。奴にはすでに何名もの騎士が・・・。」

つまり、封じ込めには成功したがその穴は破壊できていないというわけだな。

「ではやろうか。」

腹ぁ括るしかねえ。俺が最強だ!


 

 光の柱に近づくと、奴はすぐに出てきた。

「でかい・・・。」

「アクバル!前に出ろ!マリー!援護を頼む!ヨキは無理するな!」

こいつは予想外だ!なんとかなると思ってたが、やべえ!感じられる圧力が半端ねえぞ!

「ずあぁぁ!!」

大盾を持ったアクバルが吹き飛ばされる。あの状態のアクバルをだと!?

「ふん!」

俺の宝剣が奴を斬り裂くが、浅い。代わりに右前脚の一撃をくらってしまった。爪が鎧を引き裂いて食い込んでくる。

「フラン!!!!」

マリーが叫ぶ。そんな顔をするな、俺はまだ死なねえよ!なんとか立ち上がる。

「やらせるかぁ!」

アクバルが俺をかばった。・・・そして、アクバルの大盾が弾かれ、奴の大きな口で鎧ごと噛み砕かれた。


「アクバルゥゥ!!!」

くそったれが!アクバルが!

「フレイムバースト!」

マリーの破壊魔法が飛ぶ!しかしワータイガー変異体には効いていないようだ。

「くそぉ!!」

背後からヨキがワータイガーを刺した。背中を刺され、のた打ち回るワータイガー。すぐにヨキがふりほどされてしまう。背中にはヨキの剣が刺さったままだ。飛ばされた先の岩にぶつかり、ヨキは動かなくなった。頭を打っていたとしたら、冗談抜きでマズイ。

「くそったれぇ!!」

剣を地面について立ち上がる。

「こっちよ!!」

マリーがワータイガーを挑発しだした。

「やめろ!マリー!!やめてくれぇ!」

「フラン!あなたと一緒で良かった!愛してる!」

「マリーィィィ!!!!」

そして奴は俺の目の前で最愛の人を喰らった。マリーは最後の力を振り絞り、ワータイガーの口の中で破壊魔法を炸裂させた。内部からの爆発でのた打ち回るワータイガーを渾身の力を持って突き刺す。頭にあるのはマリーの事、アクバルの事、ヨキの事、家族の事だ。それを、こいつが全て奪おうとしている。許すわけがない。

「うぉぉぉぉぉ!!!!!」

何故か先に見える太刀筋、ここに叩き込めばこいつの首が飛ぶのがよく分かる。そしてそれは現実となる。



「気が付いたか?」

 ヨキが目覚めるまでに数時間かかった。あの後、ワータイガー変異体が討伐されたのを確認した騎士団が光の穴を破壊した。これで魔物の発生はなくなったはずだ。

 マリーと、アクバルは助からなかった。二人とも即死だった。マリーが最後の力で破壊魔法を撃てたのは奇跡だったのだろう。あれがなければ俺も死んでいた。だが、マリーが死んで、俺は生きる意味を失っている。

「フランさん・・・。僕は・・・、僕のせいで・・・。」

「それは違う。それだけは違うぞ、ヨキ。」

「ううっ・・・。」


 数か月後、ヨキの処刑がなくなった事をフリーデン=エルライトから聞いた。マリーとアクバルが死んだ事を気にしてくれたのだろう。

「フランさん、これからどうするんですか?」

「お前は家に帰れ。」

「僕は家なんてありませんよ?」

「俺は・・・故郷に帰ろうと思う。」

「レイクサイド領ですか?」

「ああ、あそこには俺が愛したもう一人の人の息子がいる。彼を見守ろうと思う。」

「そうですか・・・。僕は今後は冒険者として生きていきます。」

「ああ、分かった。レイクサイド領に来た時は俺を訪ねろ。」

「はい!分かりました!・・・今まで、お世話になりました。」

「じゃあな、ヨキ・・・今は違ったな。じゃあな、マクダレイ。」

「またすぐにレイクサイド領に会いに行きますよ!」


 アランの奴は立派に育ってるだろうか?子供のころはめちゃくちゃ甘えん坊だったからな。まあ、俺の最期の場所としてはもったいないくらいだろう。


 マリー、ありがとう。こんな俺ですまなかった。



 こうしてフラン=オーケストラはレイクサイド領へと帰った。騎士団に入隊した彼はその実力で団長まで上り詰める。だが、目標を失っていたフランは数年後に引退を決意した。そして更に7年後・・・。


「じいっ!爺!」

「はい、何でございましょうか?」


時代はハルキ=レイクサイドを知ることとなり、フラン=オーケストラの名はそれと共に舞い戻る!






「マリー・・・。」


 エルライト領の辺境に2つの墓がある。片方にはアダマンタイト製の指輪が取れないように埋め込まれている。ここは昔、魔物の大量発生でほろんだとされる村があった所だった。

「あれ?こんな所に墓参りとは珍しい。」

「ふぉふぉっふぉ、家族が眠っておりましてな。」

「え?・・・あなたは、もしかして「勇者」フラ・・・。」

「その二つ名は家族の前ではよしてください。恥ずかしいので。」




さあて、いかがでしたでしょうか。

わざとフランの名前を出さなかったのはヨキがマクダレイとばれないようにするためでしたー。

気付いた人いる?いる?あ、そうですか。


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