1.バカな幼馴染はテスト勉強でバカをする。
突発的に書いた。後悔はしている。反省もしている。だが、血が騒いでしまった。しょうがない……
「それじゃあ、問題な。710年にあった事と言えば?」
「えっとねぇ……分かった! 『なんと可愛いピチュ○達』だから、ピ○ューの大量発生!」
「絶対違うだろ」
黒で統一された俺の家の俺の部屋。テスト直前という事でそこで幼馴染である少女、咲弥とテスト勉強をしていた俺――風宮零は相変わらずの幼馴染のバカっぷりに、最早お馴染となっているツッコミを入れていた。
つーか、○チューが大量発生とか、そこいらじゅうで感電が起こりそうで怖すぎるわ。
「えー、じゃあレイ君、正解は?」
「正解は『なんと立派な平城京』で、平城京の創設だな」
「うわぁ、おっしい!」
そう言って、ミヤは悔しそうに歯噛みするが、全く持って惜しくない。「なんと」以外は一文字もあってなかったし。
……まぁ、こんな事を気にしてたらミヤと付き合いきれないので、ここはいったんスル―。とりあえず、次々と問題を出題していくか。
「それじゃあ、次の問題。794年にあった事と言えば?」
「それぐらいわかるよ! 『鳴くよピカチュ○でんこうせっか!』で、ピカ○ュウがでんこうせっかを覚えた!」
ゲームみたいに言ってんじゃねぇよ。しかも、鳴くよ一切関係ないし。
「……1192年にあった事は?」
「『いい国なのかな○ウエン地方』で、ホ○エン地方建設!」
そもそもホウエ○地方は国では無いと思います。
「……1853にあった事――」
「『いやでござんすロケッ○団』で、ロ○ット団のサ○キが勝負を仕掛けてきた!」
そんなおじさま、俺もいやでござんす。しかも、いきなりボスかよ。せめて下っ端からにしろよ。
「ダメだ、こりゃ……」
何度問題を出しても、一向に正解する気配が無いミヤに俺は今日何度目かも分からないため息を突く。
――今までのやりとりで分かると思うが、俺の幼馴染、ミヤは真正のバカである。異論は認めない。というか、異論を挟む余地も無い。そんなバカ。
そのせいか、小学校の頃からテストの点は悪く、そのテストの解答はテレビのクイズ番組でよくネタにされる「珍解答」をも退けるほどにバカバカしい物ばかりだ。
そしてそのバカさが中学に入った途端に直るはずも無く、中学入学からの定期テストでも珍解答続出。将来という観点から見れば、正に出血大サービス状態。
黒髪のロングストレートで、小さい顔、少し青がかった大きな黒い瞳はまるで吸い込まれるよう――と、見た目は超一流なのだが。本当に残念な幼馴染である。
それに対し、俺はミヤとは違いバカじゃないし、それなりに学校の成績は良い。どれくらいかと言うと、本気出せば学年総合一位を取れるくらい。ちなみに、本気を出さなくても学年総合一位を取れる。つまりは、学年総合一位にずっと居座ってるという事だ。てへ。
まぁそんな訳で、成績の良い俺は、テスト前にはこのようにしてミヤのテスト勉強を見てやっている。そのおかげか、ここ最近のミヤの成績は少しずつだが右肩上がりになっているらしい。具体的に言うと、一年の学年末テストは平均十一点だったのだが、ここ一番最近のテスト――二年の前期末テストは平均二十点だったんだと。テストを返されたとき、嬉々として俺に見せてきやがったのを今でも覚えてる。
「……はぁ。それじゃあ、次は古典の問題を出すぞ」
「了解でありますっ!」
俺の言葉に、無駄に洗礼された敬礼で答えるミヤ。まず、お前の脳みそを洗礼しろ。色々な意味で無駄が多すぎだろ。
「じゃあ、孔子の論語からの出題な。子曰く、我十有五にして?」
「額をぶち壊す!」
「何のだよ」
ぶち壊すのは幻想だけにしろよ。異能を打ち消す右手を持ってればの話だけどな。ちなみに、正解は「学に志す」
「三十にして?」
「喝!」
それはお前に入れるべきものだと思う。正解は「立つ」
「四十にして?」
「かどわす!」
正解は「惑わず」。ちなみに、「かどわす」とは「誘拐する」とかそんな意味。惑わないどころか、思いっきり人生の迷子になってんじゃねぇか。
「五十にして?」
「低迷を知る!」
これの正解は「天命を知る」だ。天に運命を任せようとかそういう意味合いだが、ミヤの回答だと、すでに自分の中で人生を終わらせてしまっている。
「六十にして?」
「君、アラフォー」
……正解は「耳順う」。
「……七十にして?」
「心の欲するところに従えども、峠を越えずと」
……孔子、死んじまったじゃねぇか。