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グロテスク・ラブ   作者: 津田椿
序章
8/28

フリーズ

『それで結局サボった?』

「うん、まあ」

『お兄ちゃん』

「ん?」

『門の前で私に言ったよね。結構偉そうに』

 下から目線と可愛らしい声の影響で怒りはあまり感じ取れないんだけれど、口調――入力される語調は辛辣だ。語調も口調も同意だけれど、語調の方が、憩の意思疎通にはしっくりくる。

 結構偉そうに――門前で僕は憩に言った。

「授業は真面目に受けろよ」

 と。言った。二つの意味で上から目線をして、言った。

 憩は反抗意識を微塵も持たずに、笑顔で二度頷いたのだが。まあ、五〇分後にチャイムが鳴るまで、僕は机に突っ伏して仮眠をとっていたのだからしょうがないか。期待外れもいいところ。

「どうせ行っても見学なんだし」

『見ることも勉強だよ』

「ていうか眠かったし」

『自業自得』

 深夜二時頃まで小説を読んでいたことか。

「まあ、たかが一回だ」

『たかが?』

 憩の表情が強張る。

『たかが一回なんてそんな軽い気持ちで。たかが一回なら殺人とかしてもいいのか!?』

「小学生の屁理屈みたいなツッコミはやめろ」

 いたよ、こういう奴。

 虫を殺すのと人を殺すのは同じだ。そういう理屈を投げかけて、いわゆる痛い奴の烙印を押された同級生。

「まあ、サボったのは悪かったよ」

『私に謝るなみんなに謝れ!』

「いや、今のところ僕が謝れるのはお前だけなんだけど」

 迷惑をかけた人物は、実際には皆無だし。

 僕の評価が低下しただけだ。

 二限目からはちゃんと出席したしね。

 下らない戯言だ。

『でもサボるのはよくないよ。先生はお兄ちゃんのためにわかりやすいプログラムを組んでたかも知れないのに』

 確かに。憩の言う通りだ。

『クラスの人たちだって』

 それだけで言いたいことは分かった。僕を歓迎する用意、とでも言うのだろうか。

『イジメで歓迎しようとしてたかもなのに』

「転校生イジメかよ」

『ボールをお兄ちゃんに回さないとか』

「……それは中々陰湿だな」

 僕じゃなかったらの話だ。

『でもお兄ちゃん、バウンドボールは全部取っちゃいそうだけどね』

「え、バウンド?」

 リバウンドの間違いか。

「まあそれは置いといて」

『置いとくな!』

「結局部活には入るのか」

『無視すんな!』

「……あ?」

 冗談のつもりで、圧力をかける。目を細めて、眉をひそめて、視線だけを憩に向ける。

『ゴメンナサイ』

 一瞬固まってから、憩は謝る。

 僕が悪い。

「で、部活は――」

 なぜか目を逸らされる。

「どうした?」

 なぜか無視される。

「憩?」

 答えたくないらしい。

 …………。

「おーい。憩――?」

 我が家のリビング。雰囲気が不味くなる。

『あのさ』

「うん?」

『喋れないのってやっぱりダメなのかな』

 

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