昔々あるところに_014
昔々あるところにモグさんという貧しい青年がおりました。
あるとき、モグさんは黒猫堂という骨董品屋の店先で、マジックハンドを見ました。
「何でも金目のものを、一瞬にして拾ってくれる全自動マジックハンド。これであなたもお金に困ることはありません(本物)」とありました。
モグさんはそのマジックハンドを店のカウンターに持って行って聞きました。
「何でも金目のものを、一瞬にして拾ってくれる全自動マジックハンド。(本物)」
と言うのは本当ですか?
「本当だニャ」カウンターに座っていたのは黒猫でした。
「これであなたもお金に困ることはありませんというのも……」
「本当だニャ」
「売ってください。買います」
「じゅうまんえんだニャ」
モグさんは全財産十万円をはたいてそのマジックハンドを買いました。
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さっそくお金が落ちていそうな繁華街渋谷のスクランブル交差点に行ってみようと思いました。
電車に乗って20分ほどかかります。
モグさんは駅の券売機で切符を買おうとしました。
そのとき、ポケットに入れてあった全自動マジックハンドが
ぶうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん
と低いうなり音を出し始めました。
「ん?なんだ、スイッチが入ったのか?」
モグさんがふと下を見ると、ポケットからマジックハンドが伸びて
隣の券売機で、切符を買おうとしていた女性が、右手指先につまんでいるコインを
モグさんのマジックハンドがむりやりもぎ取って
シュッッッ
と引っ込みました。
「泥棒~~~~!」
すぐに駅の係員が飛んできました。
モグさんは窃盗で現行犯逮捕されました。
あああああああああああああああああああああああああああああ