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第4話 弟子入り完全完了!

「魔力を見せろ」

「えっと……どうやればいいですか?」

正直に聞くと、ヴァレリウス様は少しだけ間を置いてから言った。

「両手を前に出せ。手のひらを上に向けろ」

言われた通りにする。

「その上に魔力の玉を作るつもりで力を集めろ」

魔力の玉。

うまくできるだろうか。

両手に意識を集中する。体の奥から、いつも感じているあの力をゆっくりと手のひらへ流す。

じわり、と熱のような感覚が集まり始めた。


その瞬間。

ヴァレリウス様が私の手の上から覆うように、両手をかざした。

触れてはいないけれど、すぐ近くにあるのがわかる。

守ってくれているんだ。

暴走しないように。

少し安心して、魔力を集め続ける。

手のひらの上に、見えない何かが膨らんでいく感覚がある。空気が押し広げられるような、不思議な重み。

もっといける。

まだ集められる。

魔力は止まらない。

膨らむ。さらに膨らむ。

その時、ヴァレリウス様の手に力が入るのがわかった。

視線を上げると、無表情だった顔にわずかな変化があった。眉間に、うっすらと皺が寄っている。

そして。

「そこまで」

低い声が落ちる。

私は慌てて魔力を止めた。手のひらの上の力がスウっと全身に広がるようにして消える。

静寂が戻る。

少しの沈黙のあと、ヴァレリウス様が言った。

「もっと大きくできそうだったか?」

「?」

一瞬意味が分からなかったが、すぐに答える。

「……はい!」

まだ集められたと思う。むしろ、止められたからやめただけで、限界ではなかった。

ヴァレリウス様はほんの少しだけ視線を下げた。

「そう、か」

短く言って、ヴァレリウス様は立ち上がった。

そして部屋を見回す。

床に積まれた本。机の上の紙の束。棚から半分落ちかけている瓶。通路のように空いた細いスペース。

しばらく沈黙。

それから、私を見た。


「……まず、そこを片付けろ」

「え?」

「弟子と言ったな。なら働け」

机の横に積まれている本の山を指差す。

「床が見えるようにしろ」

思わず部屋を見回す。

これは……。

かなり大変そうだ。

でも。

「はい!」

元気よく返事をする。

弟子としての最初の仕事だ。

「魔法士様、任せてください!」


腕まくりをして、本の山に手を伸ばす。積み上げられた本は思ったより重くて、少しバランスを崩した。

「わっ」

慌てて抱え直す。

背中の方で、ヴァレリウス様が椅子に座る気配がした。

「ヴァレリウスだ」

「はい?」

「俺の名だ。呼びにくければヴァレリーでもいい」

「えっ!いやそんな名前を呼ぶなんて畏れ多い」

「構わない」

「いやっでも、弟子ですから!あっ、師匠!師匠と呼ばせてください!」

ヴァレリウス様は嫌そうな目をしていたが、流石にすぐに名前呼びは心臓に悪い。

ヴァレリウス様はため息混じりに言った。

「まあいい。好きに呼べ。それから……無理をするな。大事な本だ。落とすな」

「はい!」

なんだかちょっと嬉しい。

弟子になれた。

本当に、弟子になれたんだ。師匠と弟子。黒髪長身美形の大魔法士様と、師匠と弟子の関係。しかも森の奥の小さなお家で二人きりの生活。たまらんまじで。転生先ガチャ大当たりだ。

私は床に積まれた本を一冊ずつ棚へ運びながら、ニヤニヤが止まらなかった。


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