からくり競艇人物外伝第5話:野田あかり編
外伝:『ネオンの閃光、爆風のダンプ』
――野田あかり vs ポンコツ会
下関競艇場。山口と福岡の合同練習日。
ピットでひと際異彩を放つピンク色のからくり馬の横で、野田あかりはスマホをいじりながらガムを膨らませていた。
「まじ練習とかダルくね? さっさと終わらせてタピりに行きたいんだけど」
そこへ、福岡支部が誇る「ポンコツ会」のメンバーが、爆音と共に乗り込んできた。リーダーの西野貴志を筆頭に、森田勝司、武田静香、そして獲物を睨みつけるような目をした渡辺優子だ。
「おい、そこネオン街じゃねぇんだぞ。そのキラキラした玩具、レース場に持ち込むんじゃねぇよ」
渡辺優子が、愛機のボイラーを吹かしながらあかりを威嚇する。
「は? これ『デコからくり』だし。お姉さんのそれ、オイル臭くてエモくないよ?」
あかりが平然と返すと、渡辺の額にピキリと青筋が立った。
「……面白い。その生意気なツラ、水面に叩きつけてやる。行くぞ、ポンコツ会!」
模擬レースが始まった。
スタートで飛び出したのは、「神速」の森田勝司。しかし、4カドから西野の「爆炎」がコースを荒らし、武田が精密な旋回で包囲網を作る。ポンコツ会による「新兵教育」という名の洗練された嫌がらせだ。
だが、あかりは動じない。
「誠師匠に言われたんだよねー。『お前のマブイは派手すぎて隙が多いから、一箇所にまとめろ』って」
あかりが指先でタブレットをフリックすると、機体の装飾(外付けマブイ28,000)が一斉に輝き、エネルギーが一点に収束した。
「属性解放・ネオン・バースト!」
目も眩むようなピンクの閃光が水面を走り、西野たちの視界を奪う。その隙を突いて、あかりがトップに躍り出ようとした瞬間――。
「逃がすかよ、ガキがぁ!」
横から猛烈な勢いで突っ込んできたのは、渡辺優子の「ダンプ」だった。負けん気のマブイ33,333が、物理的な衝撃となってあかりの機体を襲う。
「きゃっ!? まじ危ないんだけど!」
「これがプロの洗礼だ! 華麗に回れると思うなよ!」
渡辺の強烈な体当たりに機体が傾く。しかし、あかりはニヤリと笑った。
「あーあ、ネイル剥げちゃったじゃん。……お返し、していいよね?」
あかりは、誠直伝の「重心移動」を応用し、あえて渡辺のダンプの衝撃を利用して機体を180度反転。ネオン属性の推進力を逆噴射させ、渡辺の機体の鼻先を「弾き飛ばして」強引にターンを決めた。
「なっ……ダンプをいなしやがった!?」
渡辺が驚愕する中、あかりはそのままチェッカーフラッグを駆け抜けた。
ピットに戻ると、渡辺は悔しそうにヘルメットを地面に置いた。
「……チッ、首席は伊達じゃねぇってことかよ」
「お姉さんのダンプ、超ヤバかった! 記念に自撮りしていい? 誠師匠に自慢しよーっと!」
あかりが無邪気にスマホを向けると、渡辺は毒気を抜かれたように溜息をついた。
「……優子、負けたな。あいつ、誠の弟子なだけあって、根性が『ポンコツ』寄りだわ」
西野が笑いながら近づいてくる。
「西野さん、変なこと言わないでください! ……おい、あかり! 次は本番のレースで、その機体ごと粉砕してやるからな!」
「おっけー! ウチも次はネイル、もっと硬化させてくるし!」
山口のギャルと、福岡の狂犬。
新たな女子のライバル物語が、爆音と共に幕を開けた瞬間だった。




