第8話『新型車両「ギガ・フロスト号」始動』
拠点は完成しました。次は「足」です。
試作一号機(元・廃棄馬車)では、増え続ける依頼を捌ききれません。
物理法則を無視した、最強の大型トレーラーを建造します。
「……きしむな。フレームが悲鳴を上げてやがる」
拠点「フローズン・ステーション」のガレージ。
俺は試作一号機のシャーシを点検し、眉間を揉んだ。
依頼は増える一方だ。
ベアトリスの『重量軽減』で荷物を軽くしても、トラック自体の「剛性限界」とエンジンの出力不足はいかんともしがたい。
継ぎ接ぎだらけの試作車では、もうキャパシティオーバーだ。
「仕方ない。……やるか」
俺は図面を引いた。
目指すは、大陸を横断し、あらゆる悪路を走破する物流の王者。
本気の大型トレーラーの建造だ。
◇
開発は、まさに「魔改造の宴」だった。
材料は、荒野の廃墟から回収した巨大な鉄骨と、魔物の素材を使った装甲板。
普通なら加工すら困難な素材だが、俺には関係ない。
――対象:鉄骨接合部。
――プロセス:原子拡散接合。
ジュッ……。
俺の『温度操作』は、金属を溶かすだけじゃない。接合面の原子を拡散させ、一体化させる。
ボルトもリベットも不要。完全な剛体となったフレームが組み上がる。
「ベアトリス、ここがお前の席だ」
「これは……玉座、ですか?」
運転席の後ろに設置したのは、魔導回路を組み込んだ特等席。
彼女がここに座り、常時『重量軽減』を発動することで、車体フレームそのものの質量をキャンセルする仕組みだ。
「内装は任せたぞ、ミナ、ルル」
「はーい! フカフカにするね!」
「お城みたいにするー!」
無骨な鉄の装甲の内側に、ミナが最高級の『綿』を敷き詰め、ルルが『シャボン玉』で二重窓を作る。
断熱・防音・衝撃吸収。
長距離ドライバーにとって、キャビンは家だ。妥協は許されない。
◇
数日後。
荒野の真ん中に、銀色の怪物が鎮座していた。
全長20メートル。
凶悪なスパイクタイヤと、分厚い装甲に覆われた牽引車両。
映画『マッドマックス』に出てきそうな威容だが、ボディは鏡のように磨き上げられ、太陽光を反射している。
大型冷凍トレーラー『ギガ・フロスト号』。
「……信じられません。こんな鉄の城が、自転車より軽いなんて」
ベアトリスが車体に触れ、驚愕している。
見た目は数百トン級。だが、今の総重量は数十キロ程度だ。
「よし、テスト走行だ。全員乗り込め!」
俺たちはキャビンに乗り込んだ。
外見の凶悪さとは裏腹に、内部はピンク色の綿と虹色の窓に囲まれた、ファンシーでメルヘンな空間だ。
このギャップも、悪くない。
「積載物は、岩石ブロック300トン。……行くぞ」
俺はアクセル(蒸気弁)を、ほんの数ミリ踏み込んだ。
ドヒュンッ!!!
背中がシートに叩きつけられた。
爆発的な加速。
300トンの荷物を積んでいるとは信じられない、まるでF1カーのようなロケットスタートだ。
「きゃあぁぁっ!? おじちゃん、速い速い!」
「空飛びそうー!」
姉妹がはしゃぐ中、俺は冷や汗をかきながらハンドルを握る。
(……『パワーウェイトレシオ』がバグってやがる)
出力重量比。
通常、大型トラックは車重があるため加速が鈍い。
だがコイツは、ベアトリスの魔法で質量(m)が極限まで小さい。
運動方程式 の通り、質量が小さければ、わずかな力で凄まじい加速度(a)が得られる。
「これなら、翼をつければ本当に空だって飛べるぞ……(飛ばないが)」
目の前に、かつて試作車がスタックした泥沼が現れた。
だが、俺は減速しない。
「突っ込むぞ!」
「ひいぃっ! 沈みます!」
ベアトリスが悲鳴を上げるが、ギガ・フロスト号は止まらない。
バシャアアアッ!
泥を巻き上げ、アメンボのように水面を滑走していく。
「な……沈まない!?」
「当たり前だ。車重が軽いんだから、タイヤにかかる『接地圧』もほぼゼロだ」
物理法則の勝利だ。
どんな悪路も、今の俺たちには舗装路と同じ。
さらに、車体が軽いからエネルギーロスもない。
それにミナたちの『断熱』が完璧なおかげで、一度冷えた荷台の温度は上がらない。あとは俺が外気の熱をエンジンに送り込み続ければ、理論上は無限に走り続けられる。
ただし、注意点が一つある。
(……止まる時だけは慎重にな。急ブレーキと同時にベアトリスが魔法を解いたら、300トンの『慣性』が復活して、運転席がペチャンコになる)
運用リスクはあるが、それを補って余りある性能だ。
「……私の魔力が、この巨大な鉄の城を支えている」
後部座席で、ベアトリスが自身の両手を見つめて呟いた。
「私は……エンジンの部品になったのでしょうか? ですが……悪くありません。これが、私の新しい剣なのですね」
「ああ、そうだ。お前がいなきゃ、この怪物は一ミリも動かない」
俺はバックミラー越しに彼女に笑いかけ、ハンドルを強く握りしめた。
エンジンの振動が、心地よく響く。
俺の「冷却」。
ミナの「緩衝」。
ルルの「密閉」。
そして、ベアトリスの「積載」。
全てのピースがハマった。
これはもう、単なるトラックじゃない。
世界を縮めるためのシステムだ。
「完成だ。こいつなら、世界の果てまで冷えたビールを運べるぞ」
地平線の彼方へ。
俺たちの最強の布陣が、銀色の軌跡を描いて爆走を開始した。
「パワーウェイトレシオ(出力重量比)」
車の速さを決める数値ですが、質量(m)がほぼゼロなので、計算式が壊れています。
スパイクタイヤの怪物が、F1カーのような加速をする……ロマンですね。
そして、ついに「エンジンの部品」扱いになりつつあるベアトリス。
本人は「特等席(玉座)」だと喜んでいるので、Win-Winということで。
最強のトラックも手に入れました。
次回からは、この「ギガ・フロスト号」で世界中を駆け巡ります!
次回、第9話は
【 明日の 18:10 】に更新します!
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※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。




