第7話『荒野の拠点「フローズン・ステーション」』
王様からの報酬は、誰も欲しがらない「灼熱の荒野」でした。
貴族たちは「不毛の地を押し付けられた」と笑いますが、
現代知識を持つ主人公にとっては、そここそが「宝の山」でした。
今回は、物理と魔法を駆使した「拠点建設」回です。
「褒美として、王都南方の『灼熱荒野』一帯を与える。……まあ、あそこは草も生えんがな」
王様は申し訳無さそうに言った。
周囲の貴族たちが、「不毛の大地を押し付けられて哀れだ」「あんな岩砂漠、タダでも要らぬ」とクスクス笑っているのが聞こえる。
だが、俺は内心でガッツポーズをしていた。
分かってないな、アンタら。
あそこはゴミ捨て場じゃない。「エネルギーの油田」だ。
◇
数日後。
俺たち4人は、その『灼熱荒野』に立っていた。
ジリジリと肌を焼く強い日差し。
気温は優に40度を超えているだろう。
見渡す限りの赤茶けた岩と砂。水など一滴もない。
「……ケント様、正気ですか?」
厚手の騎士服を着たベアトリスが、滝のような汗を流しながら絶望的な顔をしている。
「こんな地獄のような場所に住むのですか? 騎士団の懲罰房だって、もう少しマシな環境ですよ……」
「暑いよー、溶けちゃうよー」
「おじちゃん、アイス食べたい……」
ミナとルルもぐったりしている。
俺はニヤリと笑い、足元の焼けた岩盤を踏みしめた。
「安心しろ。ここを世界で一番涼しい場所にしてやる」
貴族たちは、ここを「不毛」と言った。
だが、熱力学屋の視点は違う。
昼は灼熱、夜は極寒。この激しい「寒暖差」こそが、無尽蔵のエネルギー源になる。
さらに、土地が広くて障害物がない。
巨大な物流倉庫を建てるには、最高の立地だ。
「さあ、着工だ。俺たちの城を作るぞ」
◇
俺の号令と共に、異世界で最も騒がしい工事が始まった。
「ベアトリス、そこの鉄骨(H鋼)を頼む」
「は、はいっ! 『重量軽減』!」
ベアトリスが数トンの鉄骨に触れる。
彼女はそれを小脇に抱え、ヒョイヒョイと足場を登っていく。クレーン車なんて目じゃない。
「基礎の杭打ちはどうしますか!?」
「君の突きで沈めてくれ」
「……私の神速の突きが、土木工事の杭打ち(パイルバンカー)に使われるとは。……ですが、悪くない手応えです! セイッ!」
ズドン! ズドン!
彼女が剣の柄で杭を叩くたび、岩盤に深々と杭が食い込んでいく。
彼女一人で、重機一個小隊分の働きだ。
骨組みができたら、俺の出番だ。
――対象:鉄骨の接合部。
――プロセス:局所溶解からの分子結合。
ジュッ……!
ボルトもリベットも使わない。
俺の『温度操作』で金属そのものを溶かし合わせる。強度は一体成型並みだ。
「次は壁だ! ミナ!」
「はーい! もこもこハウスにするねー!」
ミナが魔法で、分厚い壁の隙間に『綿菓子』を隙間なく充填していく。
これが重要だ。
いくら中を冷やしても、外からの熱(伝導熱・輻射熱)が入ってきたら意味がない。
ミナの綿は、空気を大量に含んでいる。
空気は、最強の断熱材だ。
グラスウールもびっくりの「超高断熱壁」の完成だ。
「仕上げだ、ルル!」
「まかせてー! ペタペタするのー!」
ルルが窓枠やドアの隙間に、特殊なシャボン玉の膜を張り付けていく。
これがパッキンの役割を果たす。
隙間風を完全にシャットアウト。
C値(隙間相当面積)0.1以下。世界最高峰の「超高気密住宅」だ。
◇
日が傾く頃。
荒野の真ん中に、巨大な銀色の箱――物流倉庫兼、居住棟が完成していた。
「……完成、ですか?」
ベアトリスが肩で息をしながら見上げる。
外見は無骨な鉄の要塞だ。
「ああ。だが、まだ魂が入っていない」
俺は建物の裏手に回り、地面に深く埋め込んだ金属パイプの束に手を触れた。
地中深くは、年間を通して温度が安定している。
そして地表は灼熱。
この温度差を利用し、さらに俺の冷却魔法による「排熱」を循環させる。
いわゆる『ゼーベック効果』を応用した熱電発電と、地中熱利用ヒートポンプのハイブリッド・システムだ。
「よし、魔力循環(通電)開始。……エアコン、オン」
ブゥゥン……。
低い駆動音と共に、建物全体が呼吸を始めた。
「入れ。天国へ案内してやる」
俺は分厚い断熱ドアを開けた。
◇
一歩、足を踏み入れた瞬間。
ベアトリス、ミナ、ルルの三人が、同時に声を上げた。
「「「あ、ああぁぁぁ~~~……生き返るぅ……」」」
そこは、別世界だった。
外気温45度の地獄から、室温24度・湿度50%の極楽へ。
汗が一瞬で引き、火照った体が芯から癒やされていく。
「な、なんですかここは……! 王城の避暑地よりも涼しい……いえ、空気が澄んでいます!」
ベアトリスが信じられないといった顔で、自分の頬を触っている。
「これが『高気密・高断熱』の力だ。魔法で冷やした空気を、魔法の建材で逃さない。一度冷やせば、あとは小さなエネルギーでこの環境を維持できる」
俺はキッチン(自作)へ向かい、冷蔵庫からガラスのピッチャーを取り出した。
中に入っているのは、キンキンに冷えた麦茶だ。
「ほら、労働の後の報酬だ」
グラスに注いで渡すと、三人は貪るように喉を鳴らした。
「んんっ! つめたーい!」
「美味しいっ!」
「……っ! あぁ……五臓六腑に染み渡ります……」
ベアトリスが、空になったグラスを愛おしそうに見つめ、ほうっと吐息を漏らした。
「……前言撤回します。騎士団に戻るより、ここの方が幸せかもしれません」
「だろ? 貴族どもには、この快適さは一生分かるまいよ」
俺はニヤリと笑い、窓の外に広がる灼熱の荒野を眺めた。
エネルギーがあり、土地があり、最高のスタッフがいる。
ここが俺たちの城。
世界中の荷物が集まり、そして送り出される物流の心臓部。
「ようこそ、『フローズン・ステーション』へ。ここからが本当の物流革命の始まりだ」
俺たちの祝杯の音(グラスの音)が、涼しい部屋に心地よく響いた。
外は灼熱、中はエアコン完備。
異世界において、これ以上の贅沢はありませんね。
ミナ(断熱)、ルル(気密)、ベアトリス(重機)、ケント(溶接)。
誰が欠けても完成しなかった「フローズン・ステーション」です。
特にベアトリスは、もうすっかり「優秀な現場作業員」の顔つきになってきました。
拠点は完成しました。
次回からは、ここを中継地点にして、世界中へ物流網を広げていきます。
次回、第8話は
【 明日の 18:10 】に更新します!
──────────
【読者の皆様へのお願い】
「秘密基地作りワクワクする!」「ざまぁ&快適ライフ最高!」
「冷たい麦茶のみたい……」
と思っていただけましたら、
↓広告の下にある【☆☆☆☆☆】から、評価ポイントを入れていただけると最高に嬉しいです!
(拠点建設パートが面白かったか、★の数で教えていただけると執筆の参考になります!)
明日も更新します。よろしくお願いいたします!
──────────
※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。




