第6話『「羽の剣」の女騎士と、人間フォークリフト』
腰が限界の主人公。
ギルドへ行き、求めていた「重機」を探します。
そこで出会ったのは、筋肉ダルマ……ではなく、
「自分の剣が軽すぎてクビになった」という、訳ありの女騎士でした。
「不採用だ。次」
冒険者ギルドの面接室。
俺は冷酷に告げた。
「な、なんでだよ! 俺のこの筋肉が見えねえのか!?」
「見えているさ。だが、お前はさっき、テスト用の木箱を置く時に『ドンッ』と音を立てただろう」
「あ? それがどうした?」
「ウチが運ぶのは『商品』だ。音を立てて置くな。赤ん坊を寝かしつけるように置け」
暴れる筋肉ダルマを追い出し、俺は深くため息をついた。
これで10人連続の不採用だ。
集まってくるのは、腕自慢の荒くれ者ばかり。
彼らは「重いものを持てる」が、「丁寧に」扱えない。
そんな奴らに高級ワインや完熟果物を任せれば、到着する頃にはジュースになっているだろう。
ズキリ。
昨日痛めた腰が、抗議の声を上げる。
「……違うんだ。俺が欲しいのは、ただの筋肉じゃない」
ミリ単位の操作ができ、かつトン単位の荷物を軽々と持ち上げる。
そう、俺が求めているのは人間じゃない。
『フォークリフト』だ。
そんな都合のいい人材、この異世界にいるわけがないか……。
俺は諦めて、ギルドのロビーへと出た。
◇
掲示板の隅で、一人の女性がうつむいていた。
銀色の髪をポニーテールに結い、騎士の礼服を着ている。
凛とした美女だが、その背中からは「人生終わりました」という負のオーラが漂っている。
彼女は、自分の求人票を悲しそうに剥がしているところだった。
「……君、仕事を探しているのか?」
声をかけると、彼女はビクリと肩を震わせ、力なく振り返った。
「……いえ。もう、諦めました」
「諦めた?」
「私は元王宮騎士、ベアトリス。ですが……先日、騎士団をクビになりました。私の魔法は、戦闘の役に立たないので」
ベアトリスは自嘲気味に笑い、腰の剣を抜いた。
立派な長剣だ。数キロはあるだろう。
「私の魔法は『重量軽減』。触れたものの質量を、極限まで軽くする魔法です」
彼女が剣の柄を撫でる。
すると――。
長剣が、まるで紙細工のようにフワリと浮いた。
「見ての通りです。羽のように軽い。……ですが、それだけです」
彼女は唇を噛んだ。
「剣が軽すぎて、敵の鎧を貫けないのです。オークの皮膚にすら弾かれる。騎士団の皆には『綿毛の剣』と笑われました」
なるほど。
俺の頭の中で、物理方程式が組み上がる。
(……運動方程式 か)
衝撃力(Force)は、質量(mass)と加速度(acceleration)の積だ。
いくら彼女が剣を速く振っても、剣自体の質量 がゼロに近ければ、生み出される衝撃力 もまたゼロになる。
運動エネルギー の観点から見ても同じだ。
軽い剣は、当たっても痛くない。
戦闘において、質量ゼロは致命的な欠陥だ。
――だが。
こと「物流」においては?
俺の心臓が、早鐘を打った。
質量がゼロなら、慣性も働かない。
重力による負荷も消える。
つまり……「燃費ゼロ」で「無限の積載」が可能になるということだ。
俺はガシッと彼女の肩を掴んだ。
「採用だ」
「……はい?」
「今すぐ来てくれ。君はとんでもない逸材だ!」
◇
俺たちの倉庫(トラックの前)に連れてこられたベアトリスは、困惑していた。
目の前には、俺の腰を破壊しかけた「ワイン樽(60kg)」や、トラック補修用の「鉄骨(200kg)」が積まれている。
「あ、あの……私は力仕事なんてできませんよ? 見ての通り、腕力には自信が……」
「いいから。その樽に魔法をかけて、トラックに積んでみてくれ」
俺に促され、彼女はおずおずと樽に手を触れた。
「……『重量軽減』」
淡い光が樽を包む。
彼女がおそるおそる指先で樽を押した。
フワッ。
60キロの樽が、まるで風船のように浮き上がった。
「えっ……?」
「そのまま荷台へ。優しくな」
「は、はいっ!」
彼女は小指一本で樽を操り、音もなくトラックの荷台へ滑り込ませた。
積み込み完了。所要時間、3秒。
俺の腰を砕いた重労働が、赤子の遊びのように終わった。
「す、すごい……! 鉄骨もやってみます!」
ベアトリスが次に鉄骨に触れる。
200キロの鉄塊が、発泡スチロールのように軽々と持ち上がる。
彼女はそれを頭上に掲げ、優雅なターンを決めて荷台へ収めた。
「すごーい!!」
「お姉ちゃん、軽業師みたい! かっこいいー!」
作業を見ていたミナとルルが、目を輝かせて拍手喝采を送る。
俺は震えた。
これで、ピースは揃った。
ミナの『緩衝材』。
ルルの『真空パック』。
そして、ベアトリスの『重量軽減(荷役)』。
物流の三大要素が、すべて魔法によって自動化されたのだ。
もはや俺が腰を痛める必要はない。
これなら、トラックの積載限界(サスペンションの沈み込み)も無視して、山ほど荷物を積める!
「……信じられません」
作業を終えたベアトリスが、自分の手を見つめて震えていた。
その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。
「私の魔法が……役に立つなんて。誰かに『凄い』と言ってもらえるなんて……」
ずっと「無能」と言われ続けてきたのだろう。
俺は彼女の前に歩み寄り、その手をとった。
そして、物流屋として最大級の賛辞を贈った。
「君は最高の『フォークリフト』だ」
「ふぉ、ふぉーく……?」
きょとんとする彼女に、俺は真顔で続ける。
「重機だよ。何トンもの荷物を、文句ひとつ言わず、正確無比に運ぶ最強の相棒だ。
ベアトリス、君は今日からウチの重役だ。頼むから逃げないでくれよ?」
「……っ!!」
意味は分かっていないようだが、必要とされたことは伝わったらしい。
ベアトリスは顔を真っ赤にし、カカッと騎士の敬礼をした。
「は、はいっ! この身果てるまで、貴方様のフォークリフトとして尽くします、マスター!」
……まあ、意味はそのうち教えればいいか。
こうして、俺の腰痛問題は解決し、最強の物流チームが完成した。
さあ、仕事だ。
今なら、城ひとつだって運べる気がするぜ。
「質量(m)がゼロなら、衝撃力(F)もゼロになる」
戦闘では致命的ですが、物流では最強の能力でした。
適材適所ですね。
これで、
・ミナ(緩衝材)
・ルル(真空パック)
・ベアトリス(フォークリフト)
最強の物流布陣が完成しました。
次回、第7話は
【 明日の 18:10 】に更新します!
役者は揃いました。
いよいよ、このメンバーで「物流革命」を本格化させます。
次回、トラックの荷台に「とんでもないもの」を積むことに……?
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※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。




