第4話『冒険者は廃業だ、これからは「運送屋」をやる』
王都へ到着。いよいよ納品です。
現代物流が、異世界の常識をひっくり返す瞬間をご覧ください。
ドォォォォン……。
王都の巨大な城門前。
俺たちのトラックが到着すると同時に、衛兵たちが一斉に槍を構えた。
「と、止まれぇぇ! なんだその鉄の怪物は!?」
「魔導兵器か!? 侵入者だ、囲めぇ!!」
警報の鐘が鳴り響く。
助手席のミナとルルが怯える中、俺は窓から顔を出して、一枚の羊皮紙をヒラヒラと振った。
「落ち着け。ただの運送屋だ」
「は、運送屋……?」
「これが通行証。港町の商会長の発行だ。確認してくれ」
恐る恐る近づいてきた衛兵隊長が、通行証と俺の顔、そしてトラックを交互に見る。
書類には不備がない。
隊長は首を傾げながらも、槍を下げさせた。
「……通ってよし! だが、変な真似はするなよ!」
重い門が開く。
石畳の街並みを、無骨な鉄の塊が進んでいく。
道行く人々が、口をあんぐりと開けて振り返る。
その視線を浴びながら、俺は少しだけハンドルを握る手に力を込めた。
さあ、納品の時間だ。
◇
王都の一等地にある高級レストラン。
その裏口にトラックを停めると、恰幅の良い男――依頼人の美食家が待ち構えていた。
「……本当に三日で着いたのか」
男は懐中時計を見ながら、信じられないといった顔をしている。
「だが、肝心なのは中身だ。『水晶鮭』は半日で腐る。いくら早くても、中はドロドロの……」
「まあ、見ていてください」
俺はトラックの荷台へ回り、分厚い鉄のレバーに手を掛けた。
ミナとルルも、左右にスタンバイする。
「オープン!」
ガコンッ。
重厚な音と共に扉が開く。
その瞬間。
ブワァァァァァ……!
真っ白な冷気が、滝のように荷台から溢れ出した。
ドライアイスの煙のような、濃密な冷たさ。
周囲の空気が一気に冷やされ、地面に霧が漂う。
「な、なんだこれは!? 雲か!?」
「ひんやりするぞ!?」
集まっていた料理人や野次馬たちが騒めく。
冷蔵庫のないこの世界で、この光景は魔法そのものだ。
その霧の中から、二人の小さな影が飛び出した。
「荷下ろし開始ー!」
「任せてー!」
ミナが手際よく『綿』の緩衝材をかき分ける。
その奥から現れたのは、虹色の膜に包まれた魚体。
ルルがそれに指を触れる。
「開封っ!」
パチンッ。
シャボン玉が弾け飛ぶ。
中から現れたのは――獲れたての姿そのままに、銀色に輝く『水晶鮭』だった。
腐敗臭など微塵もない。あるのは、食欲をそそる磯の香りだけ。
「ば、馬鹿な……!」
美食家が震える手で魚に触れる。
身は硬く締まり、指を弾き返すほどの弾力。
「すぐに捌け! 味を見るぞ!」
数分後。
皿に盛られた透き通るようなピンク色の刺身を口に運び……美食家の動きが止まった。
「……なんだ、これは」
彼はカッと目を見開き、叫んだ。
「美味いッ!! 港町で食べた時より、旨味が濃いじゃないか!!」
「ほう、分かりますか」
俺はニヤリと笑った。
当然だ。ただ凍らせて運んだわけじゃない。
(……『低温熟成』だ)
魚の筋肉に含まれる酵素は、死後、自身のタンパク質を分解してアミノ酸(旨味成分)に変える。
通常、このプロセスは腐敗と隣り合わせだ。
だが、俺の『温度操作』でマイナス帯のギリギリをキープし、腐敗菌の活動だけを停止させれば――輸送時間は、そのまま「熟成時間」に変わる。
鮮度を保つだけじゃない。
「運ぶことで、価値を上げる」。それが現代物流の真髄だ。
「素晴らしい……! 約束の金貨100枚だ、いや、ボーナスとしてもう20枚出そう!」
ジャラジャラと重い革袋が手渡される。
周囲で見ていた他の商人たちが、目の色を変えて殺到してきた。
「おいあんた! 俺の荷物も頼む!」
「南方からの果物は運べるか!?」
「言い値で払うぞ!」
俺は彼らを片手で制した。
「悪いな。今はまだ試運転中だ。予約は『ケント運送』の事務所ができてからにしてくれ」
そう言ってトラックに乗り込む。
背中越しに聞こえる称賛の声。
……悪くない。
魔物を倒した時よりも、ずっと胸が熱くなる感覚(達成感)があった。
◇
その日の夜。
俺たちは下町の焼肉屋にいた。
「「いただきます!!」」
ジュゥゥゥ……!
網の上で肉が焼ける音と香り。
ミナとルルが、涙目で肉を頬張っている。
「おいひぃ……! こんなお肉、初めて食べた……!」
「幸せ~……!」
二人の皿に、次々と肉を追加してやる。
今日の稼ぎがあれば、この店ごと買い取ったって釣りがくる。
「たくさん食えよ。お前たちは、俺の自慢の従業員だからな」
「うんっ! おじちゃん、ありがとう!」
二人の笑顔を見ながら、俺はジョッキを干した。
ぬるいエールが、今日は最高に美味い。
冒険者ギルドで「湯沸かし係」と馬鹿にされていた日々。
けれど今、俺の技術は、確実に誰かを笑顔にしている。
世界を変える第一歩を、踏み出したのだ。
(……決まりだな)
俺は心の中で、かつての自分に別れを告げた。
冒険者は廃業だ。
俺は、この異世界で『運送屋』として生きていく。
◇
帰り道。
満腹で眠ってしまったルルを背負い、ミナの手を引いて宿へ向かう。
幸せな重みだが……ふと、俺は腰にピキッとした痛みを感じて顔をしかめた。
「……いっ、つつ」
思わず腰をさする。
運転はいいが、荷物の積み下ろしは42歳の体には堪える。
ミナとルルは梱包のプロだが、力仕事は無理だ。
(フォークリフトがあればいいんだが……流石にそれは作れん)
となると、必要なのは。
この重い荷物を軽々と持ち上げるような、「馬鹿力のある従業員」か。
「……求人、出すか」
新たな出会いの予感を感じながら、俺たちは王都の夜を歩いていった。
無事、納品完了!
ドライアイスのような冷気の中から、ピカピカの魚が現れる。
これがやりたくて書いたシーンでした。
さて、無事に仕事を終えた主人公ですが……
重い荷物の積み下ろしで、さっそく腰をやられました。
トラックはできましたが、人手が足りません。
次に必要なのは、重い荷物を持てる「力持ち」の従業員。
次回、新たな仲間(ヒロイン?)が登場予定です!
次回、第5話は
【 明日の 18:10 】に更新します!
──────────
【読者の皆様へ、大切なお願い】
ここまで読んで、
「納品シーンよかった!」「焼肉美味しそう!」「続きも期待してるぞ!」
と思っていただけましたら、
↓広告の下にある【☆☆☆☆☆】から、評価ポイントを入れていただけると最高に嬉しいです!
(「★5」だと作者が小躍りして喜びます。「★3」でも執筆の燃料になります!)
皆様の応援が、毎日の更新モチベーションに直結します。
何卒、応援よろしくお願いいたします!
──────────
※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。




