第3話『熱衝撃(サーマル・ショック)』
いつもお読みいただきありがとうございます!
今回は、道中のトラブル(山賊遭遇)編です。
「攻撃魔法の火力が足りない」と言われた主人公が、
物理法則(熱衝撃)を使って、平和的(?)に解決します。
ドッドッドッ……!
重低音を響かせながら、俺たちの「魔導冷凍トラック」は街道を爆走していた。
「すごーい! 速いよおじちゃん!」
「景色がびゅんびゅん飛んでくー!」
助手席のミナとルルが、窓に張り付いて歓声を上げている。
無理もない。この世界の馬車は時速10キロ程度。対してこのトラックは、現在時速60キロで巡航中だ。
俺はハンドルを握りながら、魔導計器(水温計)を指差呼称した。
「冷却パイプ異常なし。エンジン温度、安定。庫内温度マイナス20度キープ……よし」
完璧だ。
荷台の魚から奪った熱が、そのままエンジンの出力に変換されている。
冷やせば冷やすほど加速する。熱力学の勝利だ。
これなら、予定より早く王都に着くかもしれん。
そう思った矢先だった。
キキーッ!!
俺は慌ててブレーキ(蒸気弁閉鎖)を踏み込んだ。
カーブを抜けた先の道に、巨大な倒木が横たわっていたからだ。
「きゃっ!?」
「っぶねえ……!」
トラックが砂煙を上げて停止する。
同時に、道の脇の茂みから、ぞろぞろと男たちが現れた。
「ヒャッハー! 止まりやがったな!」
「見ねえ顔の乗り物だなぁ、おい!」
薄汚れた革鎧に、錆びた剣や斧。
テンプレ通りの山賊(障害物)だ。数は10人ほどか。
「ひっ……!」
「ケントおじさん……怖い……」
ミナとルルが俺の腕にしがみついて震えだす。
俺は二人の頭をポンポンと撫でた。
「心配すんな。……ちょっと『道路清掃』をしてくるだけだ」
「え?」
「荷物には触るなよ。鮮度が落ちる」
俺は作業用手袋を嵌め直し、丸腰のまま運転席を降りた。
◇
「あぁ? なんだそのナメた格好は。武器はどうした?」
リーダーらしき大男が、身の丈ほどある大剣を担いでニタニタと笑う。
「おいおっさん、命が惜しけりゃ荷物を置いて失せろ。その妙な鉄の箱も置いていけよ!」
やれやれ。
これだから「配送遅延」の原因になる連中は嫌いだ。
俺は懐中時計を取り出し、時間を確認した。
「3分だ」
「あ?」
「3分で片付ける。納期が詰まってるんでな」
「ふ、ふざけやがって! 死ねぇ!!」
リーダーが激昂し、大剣を振り上げた。
ブンッ、と風を切り裂く音がして、凶刃が俺の頭蓋骨めがけて振り下ろされる。
俺は、一歩も動かない。
ただ冷静に、迫りくる「鉄の塊」を見据えた。
(……俺の魔法には制約がある)
生物の体内には、無意識の「魔力抵抗」が存在する。
だから、こいつの血液を沸騰させたり、心臓を凍らせたりすることはできない。
それが、俺が冒険者として「火力不足」と言われた理由だ。
だがな。
お前が持っているその剣は、ただの『物質』だろう?
剣先が、俺の鼻先10センチに迫った瞬間。
俺は右手をかざした。
――対象:鉄剣。
――プロセス1:800度まで局所急加熱。
俺の思考速度の中で、鉄の分子が悲鳴を上げて振動する。
『熱膨張』。体積が一気に増大しようとする力。
――プロセス2:直後にマイナス100度まで急冷。
刹那、今度は猛烈な収縮が始まる。
膨張しようとする内側と、収縮しようとする外側。
相反する二つの力が、金属の結晶構造に致命的な歪みを生む。
いわゆる、『脆性破壊』だ。
『熱衝撃』
キンッ。
硬質で、どこか儚い音が響いた。
俺の頭をカチ割るはずだった大剣は、俺に触れることなく――根元から粉々に砕け散った。
パラパラパラ……。
ガラス細工のように砕けた鉄の破片が、足元に降り注ぐ。
「……は?」
リーダーの手には、剣の「柄」だけが握られていた。
男は目を白黒させ、柄と俺を交互に見ている。
「な、なんだ!? 何が起きた!?」
「魔法の光も見えなかったぞ!?」
部下たちも騒然となる。
俺はため息をつき、足元の鉄屑を蹴飛ばした。
「ただの『温度管理』だ。金属ってのは急激な温度変化に弱いんだよ。職人なら常識だぞ」
「じょ、常識なわけあるかぁ! てめぇ、何者だ!」
「やっちまえ! 素手のおっさん一人だ、囲んでボコれば……」
まだやる気か。学習能力のない連中だ。
俺は眉をひそめ、地面に視線を落とした。
――対象:地面の水分。
――プロセス:凝固点降下を無視して瞬間凍結。
パキパキパキッ!
一瞬にして、山賊たちの足元が鏡のように凍りついた。
摩擦係数ゼロの世界へようこそ。
「うおっ!?」
「す、滑るッ!?」
ズデーン! ドサッ!
踏ん張りの効かなくなった男たちが、次々と派手に転倒する。
起き上がろうとしても、ツルツルと滑って立つことすらできない。
俺は氷の上をスタスタと歩き(靴底の接地部だけ解凍している)、リーダーを見下ろした。
「どけ。俺たちは急いでるんだ」
低い声で告げる。
リーダーの男は、腰を抜かしたままガタガタと震え出した。
「ば、化け物だ……! 逃げろ、逃げろぉぉ!」
這うようにして逃げ出す山賊たち。
俺はそれを見送ることなく、邪魔な倒木に手を触れた。
内部の水分を急速沸騰させ、水蒸気爆発でボロボロに崩して道を開ける。
作業完了。所要時間、2分40秒。
車に戻ると、ミナとルルが目をキラキラさせて待っていた。
「おじちゃん、すごーい!!」
「剣がパリーンってなった! かっこいいー!」
二人の純粋な尊敬の眼差しが、少しこそばゆい。
俺は咳払いを一つして、エンジンを再始動させた。
「……ただの障害物撤去作業だ。さあ、行くぞ」
「はーい!」
再び走り出したトラック。
目指す王都は、もう目の前だ。
「熱衝撃」
ガラスのコップに熱湯をかけて、急に氷水につけると割れるあれです。
物理法則を知らない相手には、最強の初見殺しですね。
さて、邪魔者は排除しました。
次回、第4話は
【 明日の 18:10 】に更新します!
ついに王都へ到着。
「絶対に腐る」と言われた水晶鮭を、ピンピンの状態で納品します。
依頼人や、周囲の野次馬たちがどんな顔をするのか……お楽しみに!
──────────
【お願い】
「物理で武器破壊するの好き!」「ざまぁ展開楽しみ!」と思っていただけましたら、
ページ上下の【ブックマークに追加】と、
広告の下にある【☆☆☆☆☆】から評価ポイントをポチッと入れていただけると嬉しいです。
(皆様の応援が、ランキング駆け上がりの燃料になります……!)
明日も定刻通りに更新します。よろしくお願いいたします!
──────────
※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。




