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第24話『氷の城の女主人(キーパー)と、商魂たくましい報告書』

 灼熱の荒野をひた走り、俺たちのトラック『ギガ・フロスト号』は、ようやく我が家――物流拠点『フローズン・ステーション』の前へと到着した。


 相変わらず外気温は四五度を超えている。

 だが、ガレージに近づくにつれ、俺は違和感を覚えた。


 閑散としているはずのガレージ前に、見慣れない馬車が数台停まっているのだ。

 さらに、入り口付近には旅人らしき人影まで見える。


「……おいおい。好きにしていいとは言ったが、まさかここまで手広くやっているとはな」


「……マスター。拠点内に、多数の心音がします」


 助手席でシエラが体を強張らせ、耳を澄ませた。


「数は十数名……。知らない人たちです。ですが……変です」


「変?」


「はい。……彼らの心音に『敵意』や『緊張』がありません。むしろ、くつろいでいます。……どういうことでしょうか?」


 状況が掴めず、混乱するシエラ。

 そこで、後部座席のベアトリスが苦笑交じりに声をかけた。


「警戒不要ですよ、シエラ殿。あれはきっと『お客様』です」


「お客様?」


「ええ。相変わらず商魂たくましいですね、あのひとは」


「あ! サラお姉ちゃんだー!」

「お土産あるかなー!」


 ミナとルルが窓に張り付いてはしゃぎ出した。

 シエラはきょとんとして首を傾げている。

 無理もない。彼女がウチに来たのは旅の途中からだ。この拠点に「管理人」がいることは話していなかった。


「……まあ、行けば分かる。中に入るぞ」


 ◇


 トラックを停めてロビーに入ると、そこは別世界だった。

 室温二四度の快適な空間。

 そこには、汗を拭いながら冷たい水を飲む行商人たちの姿があった。


「いらっしゃいませー。冷えたお水は銅貨一枚、休憩スペースは銀貨一枚だよー」


 カウンターの奥から、聞き覚えのあるハスキーな声が響く。

 金髪を無造作に束ね、健康的に日焼けした肌を持つ二〇代後半の女性――サラだ。

 彼女は俺たちの姿を認めると、感動の再会……をするわけでもなく、手元のそろばん(計算機)を弾きながら片手を上げた。


「おかえり、社長。予定より三日早いね」


「ただいま。……随分と繁盛してるじゃないか、サラ」


「おかげさまでね。この砂漠で『冷房』なんて看板出しゃ、客なんて放っておいても集まるさ」


 サラはカウンター越しに、分厚い帳簿と、ずっしりと重い革袋を突き出してきた。


「はいこれ、今月のあがり。経費と私の取り分は引いてあるから」


「仕事が早いな」


「商人は時は金なりだからね。……で?」


 サラは鋭い視線を、俺の後ろに隠れるように立っているシエラに向けた。


「後ろの目の見えない子が、新入りかい?」


「ああ、シエラだ。ウチの優秀な『航法士ナビゲーター』だよ」


「……初めまして。シエラです」


 シエラが緊張した面持ちで頭を下げる。

 サラはふん、と鼻を鳴らし、ニカッと笑った。


「私はサラ。ここの留守番兼、倉庫番だ。よろしくな」


 ◇


 サラとの契約は、俺たちが国境へ向けて出発する直前に遡る。


(回想)


 長期遠征に出るにあたり、俺は拠点の管理を誰に任せるか悩んでいた。

 そこで声をかけたのが、昔馴染みの行商人サラだった。


「留守番? 私が?」


「ああ。タダとは言わない。この拠点の設備を使っていい」


 俺の提案に、サラは目を細めた。

 彼女の後ろでは、ベアトリスがサラの荷物(重い木箱)を軽々とトラックへ積み込みながら、呆れたように口を挟んだ。


「マスター。この女狐に城を預けて大丈夫ですか? 帰ってきたら売り払われていそうですが」


「失礼なこと言うねぇ、騎士様は。私は契約は守るよ」


 サラはベアトリスにウィンクし、俺に向き直った。


「いいだろう。引き受けてやるよ。

 ただし条件がある。この涼しい倉庫と、あんたが作った……何だ?『魔法瓶』?ってやつ……これを自由に使って商売をさせろ」


「在庫管理さえしてくれるなら好きにしろ。売上の二割をお前にやる」


「三割だ。その代わり、掃除から客の対応、不審者の撃退まで全部やってやる」


「……商魂たくましいな。いいだろう、交渉成立だ」


「毎度あり!金さえ払えば、地獄の釜の蓋でも管理してやるよ」


 俺たちは握手を交わした。

 それは友情というより、もっと強固な「利害」による信頼関係だった。


(回想終了)


 ◇


 そして現在。

 サラは見事にその手腕を発揮していた。


 俺が作り置きしていった「魔法瓶構造のコンテナ」を活用し、近隣の町へ氷を卸したり、行商人から腐りやすい生鮮食品を預かって「保冷倉庫」として貸し出したりしているらしい。


「あんたが寝ている間も、私の才覚とあんたの設備が金を稼ぐ。悪くないシステムだろ?」


 サラが得意げに胸を張る。


「ああ。俺が走ることに専念できるのは、お前のおかげだ。優秀な支店長を持って鼻が高いよ」


「お世辞はいいからボーナスを弾みな。……で、シエラちゃんと言ったかい?」


 サラはカウンターから身を乗り出し、シエラに飴玉を一つ手渡した。


「あんたも大変な職場に来たねぇ。この社長、人使いが荒いだろう?」


「……えっと」


 シエラは飴玉を握りしめ、戸惑いながらも、少しだけ表情を緩めた。


「……彼女の心音、すごく早いです。計算高い音がします」


 シエラが俺にだけ聞こえる声で囁く。


「でも、嘘がありません。……自分の利益と同じくらい、この場所を大事に思っている音がします。

 信頼できる『音』です」


「だろうな」


 俺は笑って、サラから受け取った売上袋をポケットにねじ込んだ。


「さて、荷下ろしをしたら少し休ませてもらうぞ。

 次は南の海だ。準備にかかるからな」


「はいよ。ゆっくりしな、社長。

 留守ここは私が、しっかり金に変えて守っておくからさ」


 頼もしい「女主人」に背を預け、俺たちは久しぶりの我が家で、束の間の休息を取ることにした。




無人のはずの拠点に戻ったら、道の駅になっていました。


「商売していいとは言ったが、ここまでやれとは言っていない」


ケントの予想を遥かに超える、サラの商魂。


しかし、彼女のような「金で繋がれるドライな関係」こそが、プロの運送屋には心地よいのかもしれません。

留守中もしっかり利益を出してくれる、優秀な支店長です。


次回、持ち帰った「炎竜の素材」と、サラが稼いだ「軍資金」。

この二つを使って、トラックを『魔改造』します。


次回、第25話は

【 明日の 18:10 】に更新します!


──────────

【商魂たくましい再会! 応援のお願い】


「サラさん、有能すぎるw」

「拠点が繁盛してて笑った」

「留守番もプロだなぁ」


と楽しんでいただけましたら、


↓広告の下にある【☆☆☆☆☆】から、評価ポイントを入れていただけると嬉しいです!


(皆様の★が、ケント運送の利益になります! よろしくお願いいたします!)


明日も更新します!


──────────

※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。

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