第23話『氷結の凱旋と、敗北した火力』
帝都のメインストリートを、銀色の閃光が駆け抜ける。
音速の壁を突破した衝撃波が、街路樹を激しく揺らした直後。
「――到着だ! 総員、衝撃に備えろ!!」
俺はハンドルを限界まで切り込み、同時に全魔力をブレーキと逆噴射に叩き込んだ。
ギュイイイイイイイイイッ!!
耳をつんざくスキール音。
トラック『ギガ・フロスト号』は、帝都中央広場の石畳の上で、横滑りにスライドしながら減速する。
タイヤから猛烈な白煙が上がり、摩擦熱で火花が散る。
だが、止まる。
俺たちのトラックは、広場のど真ん中、皇帝の銅像の鼻先数メートルの位置で、ピタリと静止した。
プスン……。
エンジンが息をつくような音を立てて停止する。
ドラゴンの熱暴走エネルギーも、このラストスパートですべて運動エネルギーとして消費し尽くしたようだ。
「……着いた……」
俺はハンドルに突っ伏し、大きく息を吐いた。
胃が痛い。寿命が三年は縮んだ気がする。
◇
静寂が、広場を支配していた。
集まっていた群衆、警備の兵士、そして城から出てきた貴族たちが、ポカンと口を開けて俺たちを見ている。
無理もない。
トラックの後ろに連結されているのは、常識外れの代物だ。
猛スピードと熱暴走によって、ピンク色の綿とシャボン玉の梱包材は溶け落ちていた。
剥き出しになったのは――伝説の『炎竜』。
だが、それは燃えていなかった。
熱暴走で核のエネルギーを吐き出しきり、俺の『極低温冷凍』によって分子運動を完全に止められた姿。
白く輝く霜を纏い、カチコチに凍りついた氷の竜が、そこに鎮座していた。
「おおお……! 見ろ、あの炎竜が!」
「傷ひとつないぞ! 完全な状態だ!」
駆け寄ってきた帝国の高官たちが、興奮のあまり震えている。
彼らの目は、フィアンへと向けられていた。
「さすがはフィアン様! 圧倒的な魔力で、化け物を屈服させたのですな!」
「これぞ帝国の威光! 我らの『火力』が最強である証明だ!」
口々に「火力、火力」と連呼する高官たち。
フィアンはそれを聞いて、不思議そうに首を傾げた。
「火力? ……違うよ。よく見て」
彼は凍りついたドラゴンの鱗を、コンコンと指で叩いた。
「燃えてないでしょ? 焦げてすらいない。
火力で制圧したら、手元には灰しか残らないよ。僕がやろうとしたみたいにね」
「は、はあ……? では、これは一体……?」
困惑する高官たちに、フィアンは涼しい顔で、運転席から降りてきた俺たちを指差した。
「彼らがやったんだ。『冷やして、運んだ』だけさ」
「なっ……あのような、薄汚れた鉄の箱でですか!?」
「そう。君たちが馬鹿にするような箱と、魔法でね」
フィアンは楽しそうに笑い、俺の肩に腕を回した。
「参ったよ。力でねじ伏せるのが最強だと思ってたけど……『賢く扱う』ほうが、ずっと成果が良いみたいだ。
……僕の負けだね」
帝国最強の魔道士が、あっさりと認めた「力の敗北」。
それは、どんな演説よりも雄弁に、広場の空気を変えた。
広場は一瞬の静寂の後、割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。
それは、「力」ではなく「技術」への称賛だった。
ミナとルルが手を振り、ベアトリスが誇らしげに胸を張る。
シエラも、溢れる拍手の音に、安らぐような表情を浮かべていた。
◇
「約束の報酬だ。受け取ってくれ」
騒ぎが落ち着いた後。
フィアンは約束通り、トラック一台分では積みきれないほどの金貨と、ドラゴンの素材の所有権を譲渡してくれた。
「この鱗と骨は、数千度の熱にも耐える最高の耐熱素材だ。君のトラックの強化に使うといい」
「ああ、助かる。……正直、もう二度と御免だがな」
俺が苦笑すると、フィアンは悪戯っぽく笑った。
「楽しかったよ。君の『物流』は、魔法よりも魔法的だ」
彼は分厚い魔導書を小脇に抱え、背を向けた。
「それじゃ、僕は研究室に戻るよ。
また面白い『実験』があったら呼んでくれ。すぐに飛んでいくから」
「呼ぶか! 二度と来るな!」
俺の怒鳴り声に、彼は手をひらひらと振って応え――次の瞬間、陽炎のように揺らめいて消えた。
最後まで、嵐のような男だった。
「……ふぅ。やっと終わったか」
俺はトラックのボディに背中を預け、空を見上げた。
大仕事を成し遂げた達成感。
そして何より、あの「無邪気な災害」から解放された安堵感が一番大きかった。
「マスター。これからどうしますか?」
ベアトリスが尋ねてくる。
手元には、莫大な資金と、最強の耐熱素材がある。
これで『ギガ・フロスト号』を改造すれば、さらに過酷な環境も走破できるだろう。
その時。
シエラが不意に、南の方角へ顔を向けた。
「……マスター」
「どうした、シエラ」
「南から……音がします。
波の音と……とても悲しい、助けを求めるような音が」
南。
帝国のさらに南に広がるのは、広大な「海」だ。
「海、か」
俺はニヤリと笑った。
陸路専門の運送屋にとって、海は行き止まりだ。
普通なら、そこで道は途切れる。
だが、液体なら『固体』に変えればいいだけの話だ。
「上等だ。船がなくたって関係ねえ」
俺は仲間たちを見回し、次なる旅路を告げた。
「道がないなら、作ればいい。
俺たちが走れば、海の上だろうがなんだろうが、そこが『道』になるんだよ」
「僕の負けだね」
フィアンは嬉しそうでした。
彼はきっと、自分の力を超える「知恵」に出会えたことが嬉しかったのでしょう。
これにてひと段落です!
手に入れたのは莫大な報酬と、ドラゴンの耐熱素材。
これでトラックはさらに進化します。
そして、シエラが聞いた「南の海からの悲しい音」。
次なる舞台は、陸を離れた大海原!?
船? いえ、トラックで走ります。
次回、第24話は
【 明日の 18:10 】に更新します!
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【 読者の皆様へのお願い】
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます!
「熱暴走からのドリフト熱い!」
「フィアンくん、いいキャラだった!」
「次は海!? どうやって走るの!?」
と思っていただけましたら、
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明日も全力で更新します!
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※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。




