第21話『迎撃効率:過剰(オーバーキル)』
上空を旋回する無数の黒い影。
死臭に群がるハゲタカのように、数十体のワイバーンが急降下態勢に入っていた。
「ベアトリス、迎撃できるか!?」
俺はハンドルを握りしめながら、背後へ叫んだ。
「くっ……申し訳ありません、マスター!
ドラゴンの『重量軽減』維持で手一杯です! 魔法を解けば、トラックの車軸が折れます!」
ベアトリスは歯を食いしばり、脂汗を流している。
やはり、物理的な迎撃手段(彼女の剣)は封じられているか。
ミナとルルに戦闘力はない。
フィアンに撃たせれば荷物ごと消し飛ぶ。
戦えるのは、運転中の俺と、ナビゲーターのシエラのみ。
「上等だ。……シエラ、俺の目になれ! 敵の座標を送れ!」
「はい。……周囲の音響、解析開始」
シエラがヘッドホンに手を添え、意識を研ぎ澄ませた。
彼女の脳内では今、ワイバーンの羽音と風切り音が、三次元の座標データへと変換されているはずだ。
「敵影、三。右舷、仰角三〇度。距離二〇〇。
……突っ込んできます。衝突まで三秒」
「了解!」
俺は右手を窓の外へ突き出した。
使うのは火球でも雷撃でもない。そんな派手な魔法は、運転しながらじゃ狙いが定まらない。
俺が狙うのは、敵そのものではない。
敵の周囲にある「環境」だ。
――対象:ワイバーンの翼周辺の水分。
――プロセス:過冷却による急速凍結。
「落ちろ! 『着氷』!!」
俺が魔力を放った瞬間。
ワイバーンの翼の表面に、大気中の水分がビキビキと音を立てて張り付いた。
分厚い氷の膜が、翼の流線型を無慈悲に歪ませる。
ギャアアアッ!?
先頭の三匹が悲鳴を上げた。
翼の形状が変われば、揚力は失われる。
航空機にとって最も恐ろしい現象――失速だ。
空中でバランスを崩したワイバーンたちは、糸が切れた凧のようにきりもみ回転しながら墜落していく。
ドサッ、ドサッ! と鈍い音がして、地面に叩きつけられた。
「次! 座標!」
「左舷、四! 回り込んできます!」
「見えてるぞ! まとめて凍れ!」
俺は次々と『着氷』をばら撒いた。
ワイバーンたちが次々に翼を凍らされ、物理法則に従って墜落していく。
殺しはしない。ただ、飛べなくして地面へ縫い付けるだけだ。
「……お~、なるほど」
後部座席で、フィアンがポカンと口を開けていた。
「殺していない。……ただ、落としただけ?」
「ああ。殺す必要なんてねえよ」
俺はハンドルを操作し、墜落したワイバーンの横を猛スピードで駆け抜けた。
「死体を作れば、腐敗して病原菌の温床になる。処理の手間もかかる。
追い払って『ここはヤバイ』と学習させる方が、よっぽど効率的だ」
「……効率的、なのか? これが?」
フィアンは信じられないものを見る目で、墜落してもがくワイバーンたちを見つめていた。
彼にとっての戦いとは、圧倒的な火力で灰にすることだったのだろう。
「生かしたまま無力化する」という発想は、彼の辞書にはなかったはずだ。
数分後。
群れの半数が地上にキスをしたところで、残りのワイバーンたちは恐怖を感じたのか、散り散りに逃げ去っていった。
「……敵影消失。オール・グリーンです」
シエラが静かに告げた。
トラック『ギガ・フロスト号』は、傷一つなく、もちろん荷崩れもなく、荒野を走り続けている。
「……なるほど、ね」
フィアンがおもむろに手帳を取り出し、サラサラと書き込みを始めた。
「『物流』における勝利条件は、敵の殲滅ではなく、荷物の安全確保。
そのために、あえて敵を殺さず、リソース(魔力)消費を最小限に抑える……」
彼は顔を上げ、感心したように俺を見た。
「良いね。僕の魔法は『引き算(消滅)』しかないけど、君の戦い方は『割り算』みたいだ。
うん、勉強になるよ」
「……何を言ってるかわからんが、納得したなら大人しく座っててくれ。お前が動くたびに寿命が縮むんだよ」
俺は大きく息を吐き、胃の辺りをさすった。
ワイバーンの群れより、背後の「味方」の方がよほど心臓に悪い。
帝都までは、まだ遠い。
俺の胃薬の在庫が尽きるのが先か、帝都に着くのが先か。
熾烈なレースは続いていた。
指先サイズのプラズマ球で、空を制圧しようとするフィアン。
「荷物ごと消えるだろ!」というケントのツッコミが冴え渡ります。
敵を殺さず、翼を凍らせて重力に任せる。
「引き算(消滅)」しか知らない天才に、「割り算(効率)」を教える回でした。
地味ですが、これが物流屋の戦い方です。
次回、ついに帝都が見えてきます。
しかし、冷やされすぎたドラゴンが「生存本能」を思い出してしまい……?
フィアンの「あ、計算ミスだ」という軽い一言から、悪夢のラストスパートが始まります。
次回、第22話は
【 明日の 18:10 】に更新します!
──────────
【物流流・害虫駆除! 応援のお願い】
「翼への着氷、地味にエグいw」
「フィアンくん、学習能力が高い……!」
「荷物を守るのが最優先、プロだなぁ」
と楽しんでいただけましたら、
↓広告の下にある【☆☆☆☆☆】から、評価ポイントを入れていただけると嬉しいです!
(皆様の★が、熱暴走を食い止める冷却材になります! 何卒応援をよろしくお願いいたします!)
明日も更新します!
──────────
※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。




