第2話『絶対に腐らない魚と、鉄クズの魔導トラック』
第1話から続けて読んでいただき、ありがとうございます!
本日2本目の更新です。
ここからは主人公の真骨頂。
現代知識(物理)と魔法を組み合わせた、異世界への「技術介入」が始まります。
「『水晶鮭』を王都まで? はっ、悪い冗談だ」
港町の商館。
恰幅のいい商会長は、呆れ顔で手を振った。
「いいか、元冒険者殿。水晶鮭ってのはな、水揚げされた瞬間から魔素の崩壊が始まって、半日で腐るんだよ。王都までは馬車で三日。到着する頃にはドロドロの毒物だ」
「だから、干物にするしかない……というのが、これまでの常識でしたね」
俺はカウンターに身を乗り出し、ニヤリと笑った。
「俺なら『生』のまま届けられる。刺身で食える鮮度を維持したままでな」
「……は?」
「ただし、報酬は金貨100枚だ」
商会長が目を丸くし、次に顔を赤くして怒鳴り出した。
「ふ、ふざけるな! そんな大金、Sランク依頼並みだぞ! 大体どうやって運ぶ気だ! 転移魔法でも使う気か!?」
「企業秘密です。……どうします? もし腐っていたら、違約金として俺の全財産と、この身柄を差し出してもいい」
俺の目は本気だ。
商会長は脂汗を拭いながら、しばらく俺を睨みつけ……やがて、ため息をついた。
「……いいだろう。どうせ廃棄予定の魚だ。好きにしろ。だが失敗したら、鉱山送りにするからな!」
「商談成立だ」
◇
商館の裏口。
そこには、俺がタダ同然で引き取った「車輪の欠けた馬車」と、サビだらけの「鉄クズ」が山積みになっていた。
「ケントおじさん……これで、お仕事するの?」
ミナが不安そうに聞いてくる。ルルも俺の服の裾を握りしめている。
無理もない。どう見てもゴミの山だ。
「ああ。ここからが腕の見せ所だ」
俺は鉄パイプと歯車を手に取った。
溶接機も、ボルトもナットもない。
だが、俺には『温度操作』がある。
俺は鉄の車軸を手に取り、魔法を発動した。
――対象:車軸の穴。
――プロセス:800度まで局所加熱。
シュゥゥゥ……!
鉄が赤熱し、分子振動が激しくなる。
『熱膨張』だ。
金属は熱すると膨らむ。ミクロン単位で穴が広がった瞬間、俺はそこに冷たい軸を素早く差し込んだ。
――プロセス:マイナス100度へ急冷。
ジュッ!!
一瞬で冷やされた鉄は、強烈な力で収縮し、軸を締め付けた。
『焼き嵌め』完了。
溶接よりも遥かに強固に、二つの金属が一体化した。
「わあぁっ! 鉄がくっついた!」
「おじちゃん、魔法使いみたいー!」
姉妹がパチパチと手を叩く。
はは、魔法使いじゃなくて、ただの物理現象なんだけどな。
「よし、次はエンジンだ」
俺が作るのは、この世界には存在しない動力機関。
内燃機関ではない。爆発なんて野蛮なことはしない。
シリンダーの中に閉じ込めた空気を、外部から加熱・冷却してピストンを動かす。
『スターリングエンジン』だ。
通常、このエンジンの弱点は「出力が低い」ことだ。
だが、俺には無限の熱源がある。
荷台を「冷凍(冷却)」する際に奪った熱エネルギー。
さらに、走行中にラジエーターから取り込んだ「大気の熱」もまとめて、エンジンの加熱側にぶち込む。
つまり――荷台を『冷却側』、灼熱の外気を『加熱側』として利用する温度差機関だ。
荷台が冷えれば冷えるほど温度差が広がり、高出力で回転する。熱力学をハックした、永久機関スレスレのシステムだ。
1時間後。
そこには、馬を繋ぐ棒がなく、代わりに無骨な鉄の箱を背負った、異様な車両が完成していた。
名付けて、『魔導冷凍トラック・試作一号機』。
◇
「よし、積み込み開始だ!」
俺の号令で、小さな従業員たちが動き出す。
「はいっ! えーい!」
ミナが手をかざすと、モコモコとピンク色の『綿』が溢れ出し、荷台の底に敷き詰められた。
どんな馬車の揺れも吸収する、最強のサスペンションだ。
「ルルもやるー! ふーっ!」
ルルが息を吹くと、虹色の『シャボン玉』が水晶鮭を包み込む。
ピタリと表面に張り付き、空気を完全に遮断。
真空パック完了。酸化による劣化を物理的に防ぐ。
「よし、仕上げだ」
俺は運転席……剥き出しの鉄の椅子に座り、荷台に手を触れた。
――庫内温度、設定マイナス20度。
――奪った熱量(排熱)を、すべて動力パイプへ転送。
カシュン、カシュン……。
背後のシリンダーが、熱を受けて動き始めた。
最初はゆっくり。
次第に、ドッドッドッ……と力強い鼓動に変わる。
「な、なんだ!? 何の音だ!?」
異音を聞きつけて、商会長や街の人々が集まってきた。
彼らの目の前で、俺はアクセルペダル(蒸気弁)を踏み込んだ。
ドォォォォォン!!
重低音が響き、鉄の車輪が地面を噛む。
「う、動いた!? 馬がいないのに!?」
「魔物か!? 鉄の魔物なのか!?」
パニックになる群衆を尻目に、俺はハンドルを握りしめた。
「ミナ、ルル、しっかり捕まってろよ!」
「うんっ!」
俺は前方を指差した。
長年の癖が出る。
「荷崩れなし! 機関圧力よし! 前方よし!
ケント運送、定刻通りに出発だ!」
キュルルルッ!
タイヤ代わりの鉄輪が火花を散らし、俺たちのトラックは猛スピードで港町を飛び出した。
目指すは王都。
この世界で誰も見たことのない、「鮮度100%」を届けるために。
ついに「魔導冷凍トラック」が完成しました!
焼き嵌め(やきばめ)やスターリングエンジンなど、異世界人が見たら訳のわからない技術の詰め合わせです。
次回、第3話は
【 明日の 18:10 】に更新します!
(※ここからは毎日更新でお届けします!)
いよいよ出発。
馬のいない鉄塊が爆走し、商会長や街の人々が度肝を抜かれる爽快なシーンです。お楽しみに!
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※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。




