表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/22

第18話『燃やすしか能のない天才』

 フィアンに案内された場所は、国境の山脈にある巨大なクレーターだった。

 かつて山頂だったはずの場所が、スプーンで抉り取られたように消失している。


 そして、その中心に――「それ」はいた。


「……でかいな」


 俺は思わず呻いた。

 全長一〇〇メートル級。伝説の『炎竜グレイト・フレイムドラゴン』の死骸だ。


 だが、死骸と呼ぶにはあまりに活動的だった。

 息絶えているにもかかわらず、その巨体は数千度の熱を放射し続けている。

 こぼれ落ちた血液はマグマのように煮えたぎり、鱗の隙間からは灼熱の蒸気が噴き出している。

 生物というより、「形を保った山火事」そのものだ。


 俺は慌てて周囲の空気の温度を下げ、ミナたちを熱波から守る『エアカーテン』を展開した。

 これを維持するだけでも魔力が削られる。


「……すごい音量。鼓膜が震えるようです」


 隣でシエラが耳を押さえて呟く。

 彼女には、この熱エネルギーが轟音として聞こえているらしい。


「でも……やっぱり『悪意』はありません。フィアン様と同じ。ただそこにあるだけの『現象』……台風や地震のような音がします」


「違いない。災害そのものだ」


 俺は額の汗を拭いながら、隣でニコニコしている元凶フィアンを見た。


「おい、天才様。一つ聞くぞ」


「ん? 何かな?」


「お前ほどの魔力があれば、『空間転移テレポート』で帝都まで飛ばせたんじゃないか? わざわざ運ばなくても」


 帝国の筆頭魔道士だ。それくらいの高等魔法は使えるはずだ。

 だが、フィアンは困ったように眉を下げた。


「うん、試したよ。でもダメだった」


「ダメ?」


「座標を指定して、ゲートを開いた瞬間……空間ごと燃えちゃって。転移術式そのものが消し炭になったんだ」


 俺は絶句した。

 空間が燃える?

 物理的には意味不明だが、魔術的な理屈はなんとなく分かる。

 電気回路に過剰な電圧を流せば、基板が焼き切れるのと同じだ。

 こいつの魔力は出力がデカすぎて、魔法という「回路」の方が耐えきれずに自壊するのだ。


 (……繊細な術式が組めない。ただひたすらに、出力を叩きつけることしかできないのか)


 神は二物を与えずと言うが、極端すぎる。

 こいつは、燃やすしか能のない天才だ。


「だから困ってるんだよ。僕が触ると灰になる。魔法で運ぼうとすると空間が燃える。

 ……ねえ、ケント君。どうすればいいと思う?」


 フィアンが、無垢な瞳で俺を見つめてくる。

 俺はため息をつき、一歩前へ出た。


「魔法でどうにかしようとするからダメなんだ。

 熱を力で抑え込むんじゃない。『奪って、固定する』んだよ」


 俺は熱波に耐えながら、ドラゴンの巨大な爪先へと近づいた。

 表面温度は下がる気配がない。近づくだけで作業着が焦げ付きそうだ。


 俺は右手をかざした。


 ――対象:炎竜の鱗、半径一メートル。

 ――プロセス:分子運動の強制停止。


 魔力で熱を相殺するのではない。

 熱とは、原子や分子の振動(運動エネルギー)だ。

 俺はその振動そのものを、「止まれ」と命じて凍結させる。

 これぞエントロピーの減少。熱力学への逆行。


 パキィィィン……ッ!


 硬質な音が響いた。

 次の瞬間、赤熱していたドラゴンの爪先が、一瞬にして青白く変色し――分厚い霜に覆われた。

 そこだけ、熱が「死んだ」のだ。


「……っ!!」


 それを見たフィアンが、子供のように目を輝かせて俺に詰め寄ってきた。


「すごい! すごいよこれ!!」


「お、おい! 近えよ!」


 フィアンが俺の顔を覗き込む。

 距離が近い。そして何より、こいつ自身が熱い。

 しかも何故かヒートアップしている。


「魔力をぶつけた感じがしない! なのに、熱が消えた!

 どうなってるの!? 君の脳内はどうなってるの!?

 僕の炎も消せる!? ねえ、僕も凍らせてみてよ!」


「近えっつってんだろ! お前がいるだけで暑苦しいんだよ! 離れろ!」


 俺は全力でこの「歩く熱源」を引き剥がした。

 無邪気な好奇心ほどタチの悪いものはない。こいつ、俺を「未知の研究対象」として見てやがる。


「……とにかく、だ」


 俺は自分の右手を瞬間冷却して熱断熱の膜を作り、火傷しそうなほど熱いフィアンの手を振り払った。


「触んな! 作業着が焦げるだろ!」


 俺はドラゴンの巨体を見上げた。


「こいつをこのまま解体するのは無理だ。中からマグマみたいな血が噴き出して、大惨事になる」


「そうだね。僕が剣で切った時も、山が一つ溶けちゃったし」


「……(こいつ、サラッと怖いこと言いやがる)」


 俺は頭の中で輸送プランを組み立てた。

 小細工は通用しない。

 物理(熱量)には、物理(冷却)で対抗するしかない。


「方針は決まった。

 こいつを丸ごと一本、『極低温冷凍ディープ・フリーズ』する」


 俺は後ろで待機していたミナ、ルル、ベアトリス、シエラを振り返った。


「総力戦だ。

 俺が熱を奪い、ミナが断熱し、ルルが密閉し、ベアトリスが積む。

 この馬鹿でかいフライドチキンを、鮮度そのままお届けだ」


 俺の宣言に、フィアンがパチパチと拍手をした。

 無邪気な災厄と、最強の物流チーム。

 奇妙な共同作業が、今始まろうとしていた。



「熱を抑えるのではなく、分子の運動を止める」

ケントの実演に、フィアンは大興奮。

距離感ゼロで詰め寄ってくる彼は、人間サイズの暖房器具そのものです(熱い)。


解体不能なマグマの塊。

これを運ぶ方法は一つ。「丸ごと冷凍」しかありません。

次回、最強の布陣で、100メートル級のドラゴン凍結作戦を開始します!


次回、第19話は

【 明日の 18:10 】に更新します!


──────────

【物理vs魔法! 応援のお願い】


「フィアンくん、スペックが高すぎて不便そう……」

「分子運動の停止! 理系無双かっこいい!」

「丸ごと冷凍とか規模が違うw」


と楽しんでいただけましたら、

↓広告の下にある【☆☆☆☆☆】から、評価ポイントを入れて応援していただけると嬉しいです!


(皆様の★が、ケントの冷却効率を最大化させます! よろしくお願いいたします!)


明日も更新します!


──────────

※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ