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第15話『国境の砦と、届いた「二種類の荷物」』

前回、砂漠で干からびていた元パーティ『紅蓮の牙』を回収(荷台へ放り込み)したケントたち。

いよいよ目的地である国境の砦へ到着します。


灼熱地獄で絶望していた兵士たちの前に現れたのは、銀色に輝く巨大トラック。

そこから降ろされるのは、キンキンに冷えた氷と水。


そして……カチンコチンに冷凍された「元英雄たち」でした。


物流による圧倒的な救済と、残酷な現実の突きつけ。

元英雄たちをご覧ください。

 国境の砦は、「熱」に支配されていた。


 外気温四八度。

 遮るもののない岩肌に建設された砦は、まるで巨大なフライパンのようだ。

 動ける人影は少なく、兵士たちは物陰で脱水症状に喘ぎ、うわ言のように水を求めていた。


 そこへ、俺の『ギガ・フロスト号』が到着した。


「なんだ、あの乗り物は……?」


 砦の司令官らしき男が、フラフラと歩み寄ってくる。

 その目は絶望に濁っていた。


「水を持ってきてくれたのか……? しかし、たった一台で何ができる……我々は大勢いるんだぞ……」


「一台で十分だ。ウチの積載量を舐めてもらっちゃあ困る」


 俺は運転席から降りると、バインダー片手に事務的に告げた。


「ケント運送だ。Sランク緊急依頼の品を届けに来た。

 ……まずは『生モノ』から下ろすぞ。鮮度が落ちる前に渡さないとな」


 俺はベアトリスに合図を送る。

 彼女は頷き、トラック後部の巨大な冷凍コンテナのレバーを引いた。


 プシューッ……ゴゴゴゴ……ガコンッ!


 分厚い扉が開く。

 同時に、白い冷気が辺り一面に溢れ出し――その中から、四つの塊がゴロンと転がり落ちた。


「さ、さむかった……」

「あ、あったかい……」


 地面に転がったのは、ガチガチに震える『紅蓮の牙』の面々だった。

 グレイ、ライラ、ボルグ、ゼッド。

 コンテナ内で急速冷凍された彼らは、唇を紫色に変え、眉毛や髪の毛には真っ白な霜が降りている。


 外は灼熱地獄だというのに、彼らだけは極寒の雪山で遭難したような姿だった。


「な、なんだこの連中は?」

「まるで遭難者のようだが」


 集まってきた兵士たちが、困惑した顔で囁き合う。

 無理もない。

 パンツ一丁で肌がただれた男や、化粧が崩れて泥人形のようになった女を見て、誰が「Sランクパーティ」だと思うだろうか。


「おい司令官、まずはこの『生モノ』の受け取りサインを頼む。返品は不可だぞ」


 俺が伝票を突きつけると、司令官はポカンと口を開けたままサインをした。


「よし……次だ! 本命を下ろすぞ!」


 俺の号令で、ミナとルルが飛び出す。


「はーい! 開封しまーす!」

「みんなー! お水だよー!」


 ルルが指を鳴らすと、荷台に積まれた無数の『真空パック』が弾けた。

 現れたのは――太陽の光を浴びて宝石のように輝く、巨大な氷のブロック。

 そして、結露して汗をかいている大量の水樽と食料だ。


「ベアトリス、頼む」

「イエス、マスター!」


 ベアトリスが『重量軽減』を発動し、大人の背丈ほどある氷塊を軽々と持ち上げる。

 その細腕で数トンの氷を運ぶ姿に、兵士たちが息を呑んだ。


「この光景はなんだ……? 天使はここにいたのか……」

「凄腕の騎士様だ! 美しい……」


 ベアトリスが氷を広場に置く。

 俺はそこへ向けて『温度操作』で風を送った。


 ブワァァァァ……!


 氷を経由した冷たい風が、熱気が籠もる砦全体へと拡散していく。

 瞬間、空気が変わった。


「す、涼しい……!」

「氷だ! こんな砂漠に、氷が来たぞぉぉ!」


 兵士たちが歓喜の声を上げて群がる。

 樽の栓が開けられ、キンキンに冷えた水が振る舞われる。


「つ、冷てぇ! 水がうめぇ!うめえよぉ!」

「母ちゃん、俺助かったよぉぉ……!」


 コップを握りしめ、涙を流して喜ぶ男たち。

 それは、地獄に垂らされた蜘蛛の糸などではない。

 確かな質量と温度を持った、物流による救済だった。


「……聞こえます。皆さんの心音が、『絶望』から『安堵』に変わりました」


 トラックの横で、シエラが耳を澄ませて小さく微笑む。

 その穏やかな表情が、作戦の成功を物語っていた。


 ◇


「あ、あんたは救世主だ! この砦の英雄だ!」


 司令官が俺の手を両手で握りしめ、ボロボロと涙を流している。


「たった半日で、これほどの物資を……しかも最高の状態で届けてくれるとは! なんと感謝すればいいか!」


「仕事をしただけだ。礼なら、ウチの優秀な従業員たちに言ってくれ」


 俺が肩をすくめた、その時だった。

 ようやく解凍されて意識を取り戻したグレイが、よろよろと立ち上がった。


「お、俺たちは……『紅蓮の牙』だぞ……」


 彼は霜だらけの顔で、虚勢を張った。


「Sランクの……英雄だ……敬え……水をよこせ……」


 しかし。

 兵士たちの反応は冷淡だった。


「あ? なんだこいつ、うるさいぞ!」

「Sランクだと? ふざけるな、そんな薄汚い格好で!」

「装備の手入れもできない連中が、英雄なわけあるか! 遭難者なら隅っこで寝てろ!」


——装備の手入れもできない


 兵士の何気ない正論が、グレイの胸に深々と突き刺さる。


「……くっ……」


 グレイは言葉を失い、膝から崩れ落ちた。

 かつて彼らが俺に浴びせた「湯沸かし係」という蔑み。

 その重要性を理解しなかった彼らは今、名もなき兵士たちから「役立たず」の烙印を押されたのだ。


「さて、と」


 俺はグレイたちを一瞥もしないまま、最後の一仕事に取り掛かった。

 司令官に、一枚の書類を渡す。

 「納品書」だ。


「こ、これは……」


 金額を見た司令官の目が飛び出る。


「物資の代金は分かる。だが、この下の……『人命救助費』と『生体搬送費』というのは?」


「そこの四人の輸送料だ。Sランク冒険者様の命だぞ? 当然、それに見合った『特別割増料金』を適用させてもらった」


 俺はニヤリと笑い、絶望に顔を歪めるグレイを見下ろした。


「安心しろ。お前らの命の値段、しっかり請求しといてやったからな。

 ……ギルドに戻ったら、借金返済頑張れよ?」


「ち、ちくしょう……おぼえてろ……ハックション!」


 グレイが情けないくしゃみをする。

 俺は鼻を鳴らし、踵を返した。


「行くぞ、みんな。仕事は終わりだ」

「はーい! お腹すいたー!」

「マスター、次は私たちも冷たいご飯にしましょう」


 ベアトリスたちがトラックへ乗り込む。

 俺たちは、呆然とする元英雄たちを熱砂の中に残し、涼しい顔で去っていく。

 物流は止まらない。

 次の依頼が、俺たちを待っているからだ。



「装備の手入れもできない連中が、英雄なわけあるか」


名もなき兵士が放ったその言葉こそ、彼らへの最大の断罪だったのかもしれません。

これまで彼らが英雄でいられたのは、ケントという「土台」があったから。

それがなくなった今、彼らはただの「汚れた遭難者」でしかありませんでした。


さて、商品(氷)と荷物(元パーティ)の納品は完了しました。

仕事のあとには、当然「お支払い」が待っています。

Sランク冒険者の命を救ったのですから、さぞかし高額な「特別料金」になることでしょう。


次回、感動の(?)請求タイム。


そして、この異常な熱波の原因となった「規格外の来訪者」が姿を現します。


次回、第16話『英雄の破産と、熱波の彼方からの来訪者』は

【 明日の 18:10 】に更新します!


──────────

【読者の皆様へのお願い】


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


「冷凍マグロ扱い最高!」「兵士の反応がリアルでスカッとした!」「請求書の金額が気になる!」

と思っていただけましたら、


↓広告の下にある【☆☆☆☆☆】から、評価ポイントを入れていただけると最高に嬉しいです!


(皆様の応援が、次の章へ進むための燃料になります。何卒、★5つ応援をよろしくお願いいたします!)


明日も全力で更新します!


──────────

※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。

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