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第11話『熱波の依頼と、光を失くした少女』

前回、山賊たちを「梱包」して衛兵に引き渡し、平和な祝杯をあげたケントたち。

しかし、休息も束の間。ギルドから緊急の依頼が舞い込みます。

行き先は、かつての仲間たちがいる国境の砦。


ですが、そこへ続く道は「視界ゼロ」の砂嵐が吹き荒れる、物理的に走行不可能な難所でした。

「国境まで特急便だ!」


 勢いよくタンカを切った数分後。俺は拠点のデスクで頭を抱えていた。


「……参ったな。このルート、物理的に『見えねえ』ぞ」


 ギルドからの緊急依頼は受諾した。荷物の積み込みも、ベアトリスのおかげで秒速で終わる。

 だが、地図を確認して致命的な問題が発覚した。

 目的地である国境の砦へ向かう最短ルート――通称『砂の回廊』。

 地形効果により、そこは年中猛烈な砂嵐が吹き荒れる「視程ゼロ」の死に場所だった。


「ベアトリス、すまんが出発は一時待機だ」


「な、なぜですかマスター!? 氷が溶けてしまいます!」


「今のままだと崖下に転落してオシマイだ。……『目』が必要だ。この砂嵐を透視できる、高性能なセンサーがな」


 俺はあてなどないまま、解決策(センサー代わりの魔導具や人材)を探すため、灼熱の街へと飛び出した。


 ◇


 魔導具屋を三軒回ったが、成果はゼロだった。


「クソッ、どいつもこいつも『砂嵐の中で使える探知機』なんて置いてねえ……!」


 焦りが募る。刻一刻と、砦の連中の生存率は下がっていく。

 苛立ちながら路地裏をショートカットした、その時だ。


「……うるさい。足音が、刺さる……」


 ゴミ箱の陰で、薄汚れた少女が耳を塞いで震えていた。

 目には包帯。

 盲目か。


 酔っ払いの男が、彼女を蹴り飛ばそうと足を上げる。

 危ない、と俺が声を上げようとした瞬間――世界がスローモーションに見えた。


 少女の上半身が、幽霊のように揺らいだのだ。


 男の蹴りは空を切り、勢い余ってゴミ箱に突っ込む。

 少女は包帯で目を隠したまま、ミリ単位で回避していた。


(……空間把握能力? いや、今のは……音響解析ソナーか?)


 俺の背筋に電流が走った。

 探していた「センサー」は、魔導具屋の棚じゃない。

 こんなドブの中に転がっていた。


 俺は、彼女に近づいた。

 足音を殺して歩いたつもりだが、彼女はビクリと顔を上げた。


「……誰? 変な、足音……」


 包帯の下の闇の中で、彼女は俺を「見て」いるのだろう。

 おそらく彼女の脳内では、足音の反射によって、俺の姿がワイヤーフレーム(線画)のように描画されているはずだ。


「怪しいもんじゃない。運送屋だ」


 俺はしゃがみ込み、彼女の顔を覗き込んだ。


「辛そうだな。……ここじゃノイズが多すぎる」

「……ノイズ?」

「ああ。少し静かな場所がある。来るか?」


 彼女は警戒していたが、俺の声に含まれるトーン(敵意のなさ)を聴き取ったのか、小さく頷いた。


 ◇


 俺は彼女を連れ、駐車していた『ギガ・フロスト号』の前まで戻った。

 外装は厳つい装甲車だが、中身は違う。


「乗れ。天国へ招待してやる」


 彼女の手を取り、助手席へと乗せる。

 そして、分厚い装甲ドアを閉めた。


 バムッ。


 重厚な閉鎖音と共に、世界が切り替わった。


「…………え?」


 少女が目を見開く(包帯の下で)。

 外の喧騒、怒号、風の音。

 それら全てが遮断され、完全な静寂が訪れたからだ。


 ルルの『二重シャボン玉』による真空断熱層と、ミナの『綿』による吸音壁。

 このキャビンは、現代のレコーディングスタジオ並みの「完全防音室」になっている。


「……静か。……すごい、なにも聞こえない」


 彼女の肩から力が抜けた。

 今まで張り詰めていた糸が切れたように、包帯の下から涙が零れ落ちる。


「心臓の音しか……聞こえない……」

「そうだろうな。ここは俺の城だ。不快な音波は立ち入り禁止になってる」


 俺は冷蔵庫から冷えた水を取り出し、彼女に渡した。

 彼女はそれを両手で大事そうに握りしめ、震える声で言った。


「……ありがとう、ございます。私は、シエラと言います」

「俺はケントだ。……単刀直入に言うぞ、シエラ」


 俺はビジネスの話を切り出した。

 可哀想な子供として保護するつもりはない。一人の能力者として、契約を結ぶ。


「お前、目は見えないが、音で周りの形が分かってるな?」


 シエラは一瞬驚いた様子を見せたが、コクりと頷いた。


「……はい。私には魔法の才能がなくて……これしか使えません。『反響定位エコー・ロケーション』。音を飛ばして、その跳ね返りで世界を見ています。……暗闇の中に、緑色の線が浮かぶような、変な世界ですけど」


「十分だ。いや、最高の才能ギフトだ」


 俺は彼女の言葉を遮り、ニヤリと笑った。


「俺たちはこれから、視界ゼロの砂嵐の中を走らなきゃならない。

 俺の目じゃ、一メートル先も見えない地獄だ」


 俺は彼女の手を握った。


「シエラ。ウチで働け」

「え……?」

「俺のトラックに乗れ。そして、俺の『目』になってくれ。

 この砂嵐を突破するには、お前のその高性能なレーダーが必要なんだ」


 シエラは呆然としていた。

 盲目の、役立たずだと言われてきた自分を。

 必要だと言ってくれる人がいる。


 その時、足元から微かな振動が伝わってきた。

 アイドリング中のエンジンの鼓動だ。

 一定のリズムで、力強く、けれど優しく響く重低音。


「……この音。心臓みたいで、落ち着きます」


 シエラはシートに深く身を預け、小さく息を吐いた。


「……いいですよ。私でよければ、あなたの目になります」


「商談成立だ。ようこそ、ケント運送へ」


 俺たちは握手を交わした。

 冷却のケント。緩衝のミナ。密閉のルル。積載のベアトリス。

 そして今、航法ナビゲーションのシエラが加わった。


 俺は運転席に座り、ギアを入れた。

 目指すは国境の砦。

 最強の布陣で、灼熱の砂嵐へと突入する。



「目が見えない」

それは冒険者としては致命的かもしれませんが、視界ゼロの砂嵐においては、最強の「センサー(反響定位)」となります。


冷却、緩衝、密閉、積載。そして今回加わった「航法ナビ」。

これで、物流に必要なピースは全て揃いました。


次回、この最強の布陣で砂の回廊を突破し、干からびた元英雄たちの元へ向かいます!

圧倒的な「性能差」を見せつける、再会の時が近づいています。


次回、第12話は

【 明日の 18:10 】に更新します!


──────────

【読者の皆様へのお願い】


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


「シエラちゃん健気で可愛い!」「最強のトラック完成!」「早く元パーティの顔が見たい!」

と思っていただけましたら、


↓広告の下にある【☆☆☆☆☆】から、評価ポイントを入れていただけると最高に嬉しいです!


(皆様の応援が、執筆のガソリン(熱源)になります。何卒、★5つ応援をよろしくお願いいたします!)


明日も全力で更新します!


──────────

※本作品は、執筆の補助・推敲にAIツールを活用しています。

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