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第1話『追放された湯沸かし係と、捨てられた梱包材』

短編版を読んでくださった皆様、ありがとうございます!

多くの反響をいただき、このたび連載版として正式にスタートすることになりました。


この物語は、火力至上主義の異世界で、

「お湯沸かし係」と追放されたおっさんが、

現代知識(熱力学)と冷凍トラックで物流革命を起こす物語です。


短編では描けなかった「魔改造の詳細」や「姉妹との旅路」を大幅に加筆しています。

どうぞお楽しみください!

「悪いな、ケント。お前、今日でクビだ」


 冒険者ギルドの喧騒の中。

 Sランクパーティ『紅蓮の牙』のリーダー、グレイが鼻をほじりながら告げた。


「……理由は?」


「分かってんだろ? 火力だよ、火・力! 俺たちのパーティ名言ってみろよ」


「紅蓮の牙、だな」


「そうだ。俺たちは派手な爆発魔法で魔物を消し飛ばすのが売りなんだよ。なのにお前の魔法……えっと、なんだっけ?」


「『温度操作サーモ・コントロール』だ」


「そうそう、それ。ぬるま湯を沸かしたり、飲み物を冷やしたりするだけの生活魔法。……正直、地味すぎて客受けが悪いんだわ」


 周囲の取り巻きたちが、下卑た笑い声を上げる。


「違いない! ドラゴンの鱗一枚焦がせねえもんなぁ!」

「便利屋としては優秀だったぜ? 野営のコーヒー係としてはな!」


 俺は小さく溜息をつき、首を振った。

 やれやれ。


 これだから、熱力学サーモダイナミクスも知らない脳筋どもは困る。


 俺の魔法は、単に温度を変えるだけのチャチな代物じゃない。

 対象物体の『分子振動』に直接干渉し、運動エネルギーを加速・減速させる能力だ。


 その気になれば、相手の脳の血管だけを沸騰させることも、空気中の水分を一瞬で絶対零度近くまで奪って窒息させることもできる。

 ただ、生物相手には「魔力抵抗」があるから効率が悪いだけだ。


 だが、物質相手なら話は別だ。

 エントロピーを自在に操るこの力が、産業革命レベルのチートだとは夢にも思うまい。


「……分かった。手切れ金はいらん」


「へえ、物分りがいいじゃねえか」


「その代わり、倉庫に転がってる『鉄クズ』と『廃棄馬車』。あれを貰っていくぞ」


「はっ! ゴミ拾いかよ。好きにしろ、『湯沸かし係』のおっさん!」


 哄笑を背に、俺はギルドを出た。

 怒りはない。

 あるのは、ブラック企業を退職した時のような、奇妙な清々しさだけだった。


 俺、ケント。42歳。

 前世は日本の物流倉庫で、管理職として走り回っていた男だ。


 ◇


 ギルドの裏路地。

 廃棄物が積まれたその場所は、腐った生ゴミと汚水の臭いが充満していた。


 これからの身の振り方を考えながら歩いていると、道の隅に小さな影を見つけた。


「……お腹、すいたね」

「うん……ごめんね、ルル」


 ボロボロの布切れを纏った、二人の少女だ。

 姉のほうは10歳くらい、妹はまだ5、6歳だろうか。

 痩せこけた手足を震わせながら、寄り添って座り込んでいる。


 通りがかりの若い冒険者たちが、彼女たちを見て嘲るように声をかけた。


「おい見ろよ、あの孤児たち。また変な魔法で遊んでやがる」

「綿とシャボン玉だっけ? 攻撃力ゼロのゴミスキル持ち姉妹だな」

「魔物の囮にもなりゃしねえよ」


 男たちはゲラゲラと笑いながら去っていく。

 少女たちは何も言い返さず、ただ悔しそうに唇を噛み締めていた。


 俺は足を止めた。

 彼女たちの手のひらで輝く、その魔法に目が釘付けになったからだ。


 姉の手から溢れているのは、ピンク色のふわふわとした物体。

 ――魔法『綿菓子』。


 妹が息を吹き込んで作っているのは、人が入れそうなほど巨大で、虹色に輝く泡。

 ――魔法『シャボン玉』。


 ……待て。

 あれは、ただの綿と泡じゃない。


 俺の『管理者マネージャー』としての目が、その物質特性を瞬時に解析する。


 あの綿。

 弾力性が異常に高い。指で押しても即座に復元している。

 あれは、極上の『衝撃吸収材クッション』だ。発泡スチロールやエアキャップ(プチプチ)の代わりになる。


 そして、あのシャボン玉。

 地面の尖った石に触れても割れていない。表面張力が強化されているのか?

 いや、それだけじゃない。内部の空気を遮断している。

 あれは……完全な『真空パック』と『防水コーティング』が可能なんじゃないか?


 電撃が走った。

 俺の頭の中で、バラバラだったパズルのピースがカチリと嵌る音がした。


 この世界には「物流」がない。

 生鮮食品はすぐに腐るし、瓶詰めは馬車の揺れで割れる。

 だから、特産品は産地でしか消費されない。


 だが。


 俺の『冷凍保存(温度操作)』。

 姉の『衝撃吸収(綿)』。

 妹の『密閉保存(シャボン玉)』。


 この三つが揃えば。

 不可能と言われた「鮮魚の長距離輸送」も、「割れ物の高速輸送」も可能になる。


 これは、ゴミじゃない。

 『ダイヤの原石』だ。


 俺はゆっくりと、少女たちの前にしゃがみ込んだ。

 威圧しないように、できるだけ優しい声を作る。

 ……まあ、おっさんの枯れた声だが。


「おい、そこのお嬢ちゃんたち」


 姉がビクリと肩を震わせ、妹を庇うように前に出る。

 警戒心剥き出しの目だ。無理もない。


「……な、なに? 私たちは、何も持ってないよ」


「いや、持ってるさ。とびきりの才能をな」


「え……?」


 俺は懐から、先ほど貰ったばかりの鉄クズ(銅貨数枚分の価値しかない)を取り出し、空中に放った。

 そして魔法を発動する。


 ――対象:鉄片。

 ――プロセス:熱運動停止。絶対零度へ。


 キンッ。

 鉄片が白く霜をまとい、地面に落ちるとパリンと高い音を立てて砕けた。


「俺はケント。しがない運送屋だ」


 俺は二人に手を差し伸べた。


「腹、減ってるんだろ?

 俺の仕事を手伝ってくれるなら、死ぬほど美味い飯を食わせてやる」


 姉妹が顔を見合わせる。

 ゴクリ、と妹が喉を鳴らした。


「……本当に? 私たちの魔法、役に立たないよ? ゴミだって言われたよ?」


「誰が言ったか知らないが、そいつは見る目のない節穴だ」


 俺はニヤリと笑った。

 安全第一。納期厳守。

 俺の新しい職場の、最初の従業員が決まった瞬間だった。


「さあ、行こうか。

 世界中の商人を驚かせてやる準備シゴトの時間だ」




最後まで読んでいただきありがとうございます!


この連載版では、

・トラックのエンジンの仕組み(魔改造)

・道中の山賊やライバル業者との対決

・元パーティの没落していく様子

などを、より深く、詳しく書いていく予定です。


次回、第2話は

【 本日の 20:10 】に更新します!

いよいよ、鉄クズから最強のトラックを作り上げます。お楽しみに!


──────────

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※本作品は、執筆の補助・推敲(誤字脱字チェックや表現の調整など)にAIツールを活用しています。

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