まさか僕……
瓦礫の降り注ぐ街の中、ルナが死神に立ち向かうのを確認した倉田は、佐々木に視線を向ける。
「佐々木……聞け」
倉田の声は低く、しかし確固たる指示を帯びていた。
佐々木は息を整えながら頷く。
「はい……倉田さん」
倉田は言葉を続ける。
「おまえ、あの夜……俺の血を飲んだだろう。あの時の力を覚えているか?」
佐々木の脳裏に、倉田の血を受けた時の感覚が鮮明に蘇る……
――――――
廃屋に連れられた夜……
倉田は無言のまま佐々木を椅子に沈める。
鋭く伸びた爪が、自らの手首を深々と裂いた。
滲み出た血の一雫を、佐々木の唇へと落とす。
瞬間、熱が爆ぜるように全身を駆け巡り、倉田と自らの意識が重なる感覚に飲み込まれた。
それは同時に――凶暴な吸血鬼の血が目覚める刻でもあった。
――――――
「……はい。思い出しました」
倉田は目を細め、佐々木の肩に手を置く。
「大丈夫だ。おまえも俺の力を使えるはずだ。これから少しずつ、教えるはずだったんだが……今のおまえは俺の攻撃の感覚も共有できる」
佐々木はその言葉に息を飲む。
「……俺も……倉田さんと同じ力が……?」
倉田は小さく頷く。
「戦いながら試せ。最初はぎこちないかもしれないが、すぐ慣れる。
おまえの援護があれば、ルナの魔法ももっと活かせる」
佐々木は決意の色を浮かべ、拳を握りしめる。
「……わかりました。倉田さん……力を合わせます」
その瞬間、瓦礫の向こうで死神の黒い影が揺れ、低く響く笑い声が街にこだまする。
「……やるしかない」
倉田は静かに呟き、前に進む足を止めなかった。




