楓ちゃんに膝枕してもらいました
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紙ヒコーキをキャッチする修業を初めて2週間が経過した。
この2週間、俺は必死に紙ヒコーキを追い続けたが、一度もキャッチすることはできなかった。
賢三さんとの鬼ごっこもまだクリアできてないし、確実に成長はできてるんだがまだまだ課題は山積みである。
焦るな……焦るなよ俺。今すぐ楓ちゃんたちに追いつこうだなんて思うな。苦戦するのはわかっていた。長引くのもわかっていた。俺はひたすら修業を地道にじっくり頑張っていくだけだ。
明日からまた1週間の休息期間に入る。
夜の修業を終えて帰宅した。
「涼くん、お疲れさま」
「ありがとう楓ちゃん」
修業直後に楓ちゃんの笑顔は俺の芯に沁み渡るように癒してくれる。
―――フラッ……
「!? 涼くん!」
俺はフラフラとふらついてしまった。楓ちゃんがすぐさま駆け寄って俺の身体を支えてくれた。
「涼くん、大丈夫?」
「ごめん楓ちゃん、ありがとう。大丈夫だよ、ものすごく眠いだけだから」
毎朝4時起きで修業漬けだからな。そりゃあ睡魔もえげつない猛威を振るうだろう。
「……頑張ってるんだね、涼くん」
「まだまだ努力が足りないよ、俺は……」
「そっか、じゃあ涼くんが安眠できるように、私がお手伝いしてあげよう」
「え? いやそんな、悪いよ。俺1人で寝れるから……」
「遠慮しないで、って前に言ったはずだよ? 最愛の彼氏がこんなに一生懸命頑張っているんだから、私も彼女としてそれくらいしないと気が済まないの。ホラ、来て。ねっ?」
楓ちゃんに引っ張られ、やってきたのは楓ちゃんの部屋。
楓ちゃんの部屋に入ること、多い……すごく眠くてもこの空間に足を踏み入れるだけでドキドキする。
「おいで、涼くん」
ベッドの上に正座し、太ももをポンポンと叩いて俺を誘導する。
「楓ちゃん、これって……」
「膝枕してあげる」
楓ちゃんの膝枕……!!
ピチピチの白い太ももを、痣一つない雪景色のような太ももを、俺が枕にするというのか……!
すごく悪いことをするような気になるが、花の蜜に引き寄せられる虫のように、俺はフラフラと楓ちゃんの太ももに誘われる。
身体が無意識に動く……絶対に抗えない、楓ちゃんの誘惑には。
ふにっ
楓ちゃんに膝枕してもらった。
柔らかい、暖かい、いい匂い……なんて心地よい……天使の羽で雲の上を漂うように、気持ちよく優しく包み込まれる至福。睡眠欲促進効果が凄まじい。
そして、俺の顔の上には大きな2つの膨らみ。感動と興奮を両立させる圧倒的な絶景だ。膝枕でしか見られない楓ちゃんの胸の景色だ。
睡眠欲も強いけど、それに負けないくらいの強い性的刺激が股間に集まってピクピクと膨らんでいく。
しかし本当にでかいな……俺の視界いっぱい埋め尽くされそうな極上の下乳。ここからじゃ顔も見えない。乳しか見えない。
「涼くん……」
2つの山の間から、楓ちゃんの可愛い顔がそっと覗き込んでくる。その表情は慈愛に満ちていた。
下乳の景色を眺めていたのがバレてしまったな完全に。恥ずかしくてとっさに視線を横に逸らした。
「涼くん、照れてるの? 可愛い……」
優しく、頭を撫でられる。甘えたい気持ちや下卑た下心、すべてを受け入れてくれる。
俺の頭をスリスリと撫でる楓ちゃんのしなやかで柔らかい手の感触も、ゾクゾク感とふわふわ感がこの上なく気持ちよかった。脳髄が蕩けて睡眠欲がさらに加速する。
「涼くんの耳、キレイだね」
横を向いているので、楓ちゃんに耳を晒す体勢になっていた。耳の穴にまで、楓ちゃんの熱い視線が注がれる。
「汚いと思うから、あまり見ないでほしいんだが」
修業漬けでそういう細かいところまでちゃんと洗えてなかった。いい男はそういうところにもちゃんと気を遣えるんだよな、俺も気をつけないと。
「ううん、キレイだよ」
―――スッ
「っ!」
楓ちゃんの柔らかな指が、俺の耳のふちを優しくなぞるように撫でる。ゾクゾクッと電気のような快感が俺の脳内を駆け巡る。
俺の耳が、急速に熱くなっていくのを感じた。
「涼くん、耳真っ赤だよ。可愛い」
「っ……!」
耳の裏や耳たぶもプニプニと摘まれたり揉まれたりする。すげぇ気持ちいい。
ああ、気持ちよく夢の世界に行けそう……ドキドキして眠れないかもしれないと思っていたが、楓ちゃんのホスピタリティが神の領域なのでこれは安心して眠れる。
楓ちゃんの膝枕が幸せすぎて眠るのがもったいない気もするが、瞼が閉まる圧力を跳ね返せない。
ああ、俺はもう肩までどっぷりと夢の世界に浸かっている。99パーセント眠っている……
「ホントに可愛い耳……可愛すぎて、耳をちぎりたくなっちゃう……」
「―――ヒョッ!?!?!?」
ほとんど眠っていた意識が覚醒。俺はガバッと飛び起きて、心臓をバクバクさせながら耳を押さえて楓ちゃんを見る。
ほとんど不意打ちでついマヌケな声を出してしまった。
楓ちゃんはハッとして、失言しちゃったという感じで両手で口を覆った。
「あっ、口に出しちゃってた? ごめんね涼くん。冗談だから、ホントにやったりしないから!
……涼くんが好きすぎて変なこと言っちゃうなぁ、私。気をつけないと……」
楓ちゃんは恥ずかしそうに俯いた。
ちょっとビックリしてしまったけど、たまにすごく怖いこと言っちゃうところも楓ちゃんの魅力の一つだ。
いろんな意味で刺激的な楓ちゃん、大好きだ。
こんなにも刺激的なのにすごく安心できるところも、大好きだ。
一瞬覚醒した意識も、またトロンと眠くなっていく。
俺は再び楓ちゃんの太ももに頭を預けた。
「…………いいよ」
「涼くん……?」
「楓ちゃんが望むなら……耳だっていくらでもくれてやる……」
楓ちゃんに膝枕してもらえるなら、耳をちぎられてもいいと本気で思える俺も大概狂ってるな。
身も心もすっかり染まっている。楓ちゃんに。
「……いくらでも、くれるの……?」
「……いくらでもとは言っても、耳は二つしかないけどな……」
「ふふふっ、そうだね」
「はははっ……」
ほとんど意味のない会話でも、たまらなく楽しい。楓ちゃんが楽しそうに笑ってくれるのが、俺にとってもすごく嬉しい。
会話をしながらゆっくりと、夢の世界に戻っていく。
「おやすみなさい、涼くん」
「おやすみ……楓……ちゃ……ん」
楓ちゃんの柔らかい太ももの上で、楓ちゃんの聖母のような微笑みとボインな下乳を眺めながら、俺は安らかに眠りについた。




