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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第23章…紙ヒコーキ

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紙ヒコーキを飛ばしました

 賢三さんは『折り紙を折る』と言った。

どういうことなのか俺にはさっぱりわからなかった。


楓ちゃんをチラッと見る。楓ちゃんは特に驚いてる様子はなさそうだった。

楓ちゃんは経験済みの修業方法なんだろうか。


賢三さんは白い折り紙を取り出した。冗談ではないようだ。



「この折り紙で、紙ヒコーキを作りなさい」


「はい」



よくわかんないけど、賢三さんに言われた通りに紙ヒコーキを折った。

折り紙とかやるの小学生の頃以来だな……


紙ヒコーキ完成。普通のシンプルな紙ヒコーキだ。

賢三さんも紙ヒコーキを作っていた。賢三さんが作った紙ヒコーキは俺が作ったのより鋭い感じでよく飛びそうだった。



「この紙ヒコーキを使って修業を行う」


「はい!」


紙ヒコーキで修業……一体どんな修業なんだ……



「まあ、何も難しいことはない、至って簡単だ。

まずこの紙ヒコーキを飛ばす。最初はそこまで遠くに飛ばさなくてよい。それで、飛ばした紙ヒコーキが地面に落ちる前にキャッチする。それだけだ」


紙ヒコーキを飛ばして、地面に落ちる前にキャッチする……


「まずは儂がやってみよう」


「お願いします」



賢三さんはシュッと紙ヒコーキを飛ばした。


えっ、飛距離すげぇ! めっちゃ飛んでる!

賢三さんは軽く手を動かしただけにしか見えなかったのに、すごく飛ぶ。


飛ばした瞬間、賢三さんは地面を蹴り、凄まじい速さで動き出す。

疾風迅雷という言葉がよく似合うような動きで賢三さんは紙ヒコーキに向かっていく。

木や石がたくさんある環境なのにものともせずスムーズに山中を駆け抜け、見事に紙ヒコーキをキャッチしてみせた。


すげぇ……さすが賢三さん。俺と楓ちゃんは拍手をした。



「まあこんな感じだ。さあ涼馬もやってみなさい」


「はい!」



俺は紙ヒコーキを持って、構える。


「涼くん、頑張ってー!」


楓ちゃんが応援してくれてる。ものすごく張り切る俺。

だが、最初から賢三さんのようにはできないのはわかっている。楓ちゃんにかっこいいところを見せたいが、身の程も知らないとな。身の程も知らずに張り切ってるだけでは大恥かくだけだ。



スッと、軽く紙ヒコーキを飛ばした。紙ヒコーキは山の中を緩やかに飛んでいく。

飛ばした瞬間に取りに行かないと間に合わない。俺は走り出す。


紙ヒコーキは、変則的な飛び方をする。どこに着地するかわからない。賢三さんが飛ばした紙ヒコーキはまっすぐにキレイに遠くまで飛んだが、俺はそうはいかない。フラフラふわふわとぎこちなく飛ぶ。


俺は必死に追いかけたが、木に当たったり石を踏んでバランスを崩したりで上手く動けず、紙ヒコーキは地面にポトリと落ちた。


紙ヒコーキキャッチ失敗。初回から上手くいくとは思ってなかったが、やはり悔しい。



「ドンマイ涼くん! ナイスファイト!」


楓ちゃんの応援が聞こえる。ありがとう、超やる気出る。何としても絶対に紙ヒコーキを取ってやる!!



紙ヒコーキを飛ばす!

そしてキャッチしに行く!

無情にも紙ヒコーキは地面にポトリと落ちる。失敗。


紙ヒコーキを飛ばす!

そしてキャッチしに行く!!

失敗……


紙ヒコーキを飛ばす!

そしてキャッチしに行く!!

失敗……!



俺は必死にチャレンジするが、案の定全然キャッチできない。全然間に合わない。

まずはキレイに飛ばすところから始めないとと思ったが、俺が飛ばした紙ヒコーキはフラフラと変な方向に行ってばかり。

平地ならまだなんとか取れるかもしれないが、ここは山の中。土で滑りそうになったり石で躓きそうになったりで、動きづらくて取りづらい。


俺はその後も何度もチャレンジして何度も失敗した。



「ふむ……」


賢三さんは失敗しまくる俺をジッと見ていた。



「楓」


「はい」


賢三さんは楓ちゃんを呼んだ。



「せっかくだから楓もやってみるかね?」


「え、いいんですか!?」


楓ちゃんはキラキラと瞳を輝かせた。可愛い。


「ああ、ちょっと涼馬に手本を見せてあげなさい」


「わかりました!」



楓ちゃんは楽しそうに折り紙を折る。俺は楓ちゃんに見惚れる。



「できた! 見て見て涼くん!」


「おお……」



楓ちゃんが完成させた紙ヒコーキ……!

……ちょっと個性的な感じの紙ヒコーキだな。俺はすごくいいと思う。



「すごいかっこいい紙ヒコーキだな楓ちゃん」


「ありがとう! ふふっ、涼くんに褒めてもらえるならいっぱい折っちゃおうかなぁ」



楓ちゃんは無邪気に笑う。

10年前の想い出……小さい頃の楓ちゃんが見せた笑顔と重なって、ドキドキした。ちょっとノスタルジックな気持ちになった。


楓ちゃんはすごく嬉しそうにどんどんたくさん紙ヒコーキを折った。賢三さんはちょっと呆れたように見ている。


「楓……たくさん折るのは構わんが、あくまで手本を見せるだけだからな?」


「わかってますよ~! じゃあこれにしようかな」


一番の自信作な紙ヒコーキを楓ちゃんは手に取った。



「じゃあ、飛ばしてキャッチするからよく見ててね涼くん!」


「わかった」



ウキウキで楽しそうに紙ヒコーキを構える制服姿の楓ちゃん。俺の視力は回復する。

よく見ててと言われて、ついついミニスカートから伸びる白い太ももとか、豊満な胸の膨らみに視線が行ってしまう。

おい俺、今は修業中だぞしっかりしろ。楓ちゃんが手本を見せてくれるというんだ、集中しろ集中。


ウキウキで楽しそうな楓ちゃんも、紙ヒコーキを飛ばす直前は真剣な表情に変わって集中モードになった。呼吸をするのも忘れるほど、凛として美しい。早朝の山の静けさにとてもよく似合う。



―――スッ……


楓ちゃんは紙ヒコーキを飛ばした。飛ばす瞬間の指の動きが、とてもしなやかで美しく、スローモーションに感じた。


紙ヒコーキはスーッ……と、キレイに飛ぶ。山の中に線を引くように。

そして楓ちゃんが地面を蹴って走り出す。



優雅で、華麗で、それでいて凄まじいスピードとテクニックで山の中を駆け抜け木や石をキレイに避けながら紙ヒコーキを追う楓ちゃん。

楓ちゃんの動き、すごく速いけど目で追える。楓ちゃんが大好きだから見失わない。

もちろん激しく動くことでたゆんたゆんと揺れるでかい胸も見逃さない。刹那も見逃さない。


楓ちゃんは見事に紙ヒコーキをキャッチした。

キャッチしてすぐに俺のところに駆け寄ってくる。でかい胸を揺らしながら。



「涼くん見た!?」


「ああ、見たぞ。すごいぞ楓ちゃん!」


「ホント!? 嬉しい! えへへ、涼くんにかっこいいところ見せたくてすごく頑張っちゃったよ!」


「俺はいつだって楓ちゃんのかっこいいところしか見てないぞ」


「~~~っ……!」



楓ちゃんの顔がボンッと着火したように真っ赤になった。照れてる楓ちゃんも可愛すぎるぞ。

楓ちゃんは照れくさそうにしながらピースをする。俺は拍手で応える。


本当にすごい。楓ちゃんのすごさを俺はすべて見逃さなかった。

特にすごいと思ったところは、あれだけ速く激しく動いていたのに、()()()()()()()()()()()()()()()ところだ。


一瞬たりともパンツが見えなかった。楓ちゃんの乳揺れのすべてを脳内に記録した俺が言うんだ、間違いない。


ミニスカートがヒラヒラと揺れてはいた。でもめくれなかった。めくり上がらないように調整して動いていたんだ。パンツを見せない鉄壁ガードを保ちながら、それでもなお紙ヒコーキをキャッチしてみせた。

あれだけの凄まじい動きをしながら、それだけの余裕があったということだ。マジですごいぞ。



「どうだね涼馬、楓の手本は参考になったかね」


「はい! すごく参考になりました! ありがとう楓ちゃん!」


「ふふっ、涼くんのお役に立てたなら何よりだよ」



楓ちゃんの動きは柔らかくて柔軟だった。俺は力が入りすぎていたのかもしれない。

楓ちゃんのおかげでなんとなくコツを掴めたような気がする。よーし、頑張って絶対にキャッチしてやるぞ!




―――




 ……まあ、朝の修業では一度もキャッチできないまま終わったけどな。

頭ではなんとなくわかっていても、肉体がついてこれないからダメだった。もっともっと肉体を鍛えないと。今回はダメだったが次こそは取るぞ。



「涼くん、ナイスファイト! 大丈夫、涼くんなら絶対に取れるよ!」


「ありがとう楓ちゃん」


修業直後でズタボロな俺を、楓ちゃんの笑顔と応援が暖かく癒してくれる。



「涼くんすごく頑張ってたから、私が折った紙ヒコーキあげる!」


「え、いいのか?」


「もちろん。私の一番の自信作だよ」


「ありがとう!」



楓ちゃんから紙ヒコーキをもらった。プレゼントだよな、これ。一番の自信作なだけあって、楓ちゃんの愛が籠もった魅力的な紙ヒコーキだ。

一生大切に飾ろう。



「……そ、それでね、涼くん……」


「ん?」


「交換と言っては何だけど、涼くんが折った紙ヒコーキもくれたら嬉しいなぁ~なんて……」


「ああ、もちろんあげるよ。こんなもんでよければいくらでも」


「わぁ、ありがとう涼くん! この紙ヒコーキを涼くんだと思って一生大切にするね!」



俺が渡した紙ヒコーキを両手で優しく包み込むように持ち、楓ちゃんは幸せそうに笑った。

紙ヒコーキだけじゃ足りないな。楓ちゃんが笑ってくれるならどんなものでもあげたいって思う。


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