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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第21章…修業

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修業でボロボロになりました

 山奥の森の中で、ついに修業が始まる。



「では、これから修業を始めるわけだが」


「はい!」


「まあ、そう緊張するな。さっきは脅かすようなことを言ったが、もちろん命の危険になるようなことは一切しないから安心してくれ」


「はい、ありがとうございます」



「では、まずは鬼ごっこでもしてみるか」


「鬼ごっこ……ですか?」


「ああ、では最初は儂が鬼になるから、10秒数える間にキミは逃げてみなさい」


「はい」



賢三さんがその場で数を数え始める。俺は逃げる。


鬼ごっこか……基本的には子どもの遊びで過酷なイメージはないが、賢三さんとやるなら凄まじく過酷なものになるんだろうな……


ここは山の中。土が滑りやすくなっているところがあったり石がたくさん転がっていたり地面がデコボコしてたり傾斜があったりでかなり走りづらい。

早く遠くに逃げたいのになかなかうまく走れず、逃げるのに苦戦する。


あっ、賢三さんが10秒数え終わった。ヤバイヤバイ、急いで早く逃げないと……



―――シュバッ!


「捕まえたぞ、涼馬」


「え……えぇ!?」



ガシッとしっかり肩を掴まれている。

俺は、一瞬で賢三さんに捕まってしまった。

まあ捕まるのはわかっていたがいくらなんでも早すぎるって。賢三さんの今の動きがヤバすぎて捕まる瞬間まで俺は全然気づかなかった。


まあ、これはアレだな。まずは弟子をわからせてやる、って感じか。

万が一でも逆らう気なんて起こさせないよう、格の違いってヤツを見せつけて、師匠と弟子の上下関係をハッキリ形成する、と。

こんなことしなくても俺が賢三さんに逆らうなんてできるわけないけどな。



「では次は涼馬が鬼だ」


「はい……」


瞬殺されたが、落ち込んでいるヒマなどない。鬼として切り替える。


「10秒数えなくても良い。今すぐ動いていいから儂を捕まえてみなさい」



ハンデつけられたか。悔しい、絶対に捕まえてやる。

賢三さんは逃げて、俺は追いかける。



「ハァ、ハァ、ゼェ、ゼェ……」


「ほれ、どうした? そんなんでは一生捕まえられんぞ」



あ、これ無理だわ。

俺がドタバタとぎこちない走りをしているうちに、賢三さんはひょいひょいぴょんぴょんって感じで険しい山道を軽~く駆け抜けていく。

ハンデなんてものともせず、俺と賢三さんの差は広がっていくばかり。


速すぎる……忍者みたいだ。なんでこんなゴチャゴチャした道とは言えないような道をスムーズに移動できるんだ。


やっぱりすげぇな。ご老体であの身のこなし、全盛期はどれほどのバケモノだったんだ。俺もあんな風に走れるようになるんだろうか……いや、なる。



ヤバイ、差がつきすぎて賢三さんがどんどん小さく、見えなくなっていく。山の中だから木が多くて余計に見えづらい。


ハッ、賢三さんを見失ったら迷子になるかもしれない。この山の中で迷子になったらシャレにならんぞ。見失うわけにはいかない、なんとか追いかけるんだ。


俺がめっちゃ遅くても、賢三さんは全然待ってくれない。容赦なくどんどん先に行ってしまう。

もう捕まえるのは無理だとして、見失わないようにするのが俺の精一杯だった。



「タイムアップだ。遅すぎるぞ涼馬」


「ハァ、ハァ、ハァ……!! ずみません……」



時間切れで鬼ごっこ終了。賢三さんは丸太に座っていた。賢三さんが座っている場所

までたどり着くのも時間がかかってしまった。



「では、また涼馬が鬼だな」


賢三さんはまたぴょーんと軽く跳ねて逃げていった。

あ、休憩なしですか。これ賢三さんを捕まえるまで休憩なしで何度でも鬼ごっこをやるヤツか。


「ハァハァ、ハァハァ……!!」


休憩もなく、地獄の鬼ごっこ再開。まさに鬼。

もうすでに体力の限界だ。もう走れない。しかしそんなもん関係ない。走れなくても走るしかない。鬼ごっこと言われた以上、俺は鬼の役割を果たさなければいけない。捕まえるまでずっと鬼、鬼鬼鬼だ。


とにかく走れ! ひたすら走って追いかけろ!



あっやべっ、どうしよう、賢三さんを見失った!!

どこだ、賢三さんどこ!? ヤバイヤバイ、こんな山奥で迷子なんて詰むって。

俺は立ち止まって焦ってパニックになりながらキョロキョロと見渡す。


すると、賢三さんがこっちにやってきてくれた。よかった、助けに来てくれた。



「喝!!!!!!」


バシィッ!!!!!!


「ぶへぇっ!?!?!?」



賢三さんの鋭い手刀が俺の肩に炸裂した。肩を引き裂かれたかと思った。マジで木刀を振り下ろされたみたいなこの威力、貝塚のパンチより効くわこれは。

鬼ごっこ中に見失ったり立ち止まったりしたら容赦なく罰を与えられるってことか。


そして賢三さんはまたシュバッと逃げる。俺はフラフラしながらも追いかける。



「喝!!」


バシッ!!


「喝!!」


バシッ!!


「かーつッ!!」


バシバシィッ!!



捕まえるどころか見失うことも多くなり、喝を入れられまくる。俺はボロボロのボロボロになっていく。


うん、本当に容赦ない。キツイ辛い。

これはあくまで鬼ごっこ、修業の序の口ですらないだろう。それでこの過酷さ、エグすぎるな。


初日の朝からすでに心が折れそう、泣きそう倒れそう。


だが折れない倒れない。俺は負けない。

俺は絶対に楓ちゃんを幸せにするんだ!!!!!!

という強い想いを胸に、ひたすら自分自身を奮い立たせた。




―――




 朝の修業終了。俺たちは楓ちゃんの家に帰ってきた。


当然、俺は最後まで賢三さんを捕まえることはできなかった。かすりもしない。捕まえられるかもしれないという気配すら微塵も感じなかった。そのまま修業終了の時間となった。


ああ、足がガクガク震えている。普通の歩行も困難なほどガタガタだ。さらに肩もシバかれまくってボロボロだ。

朝の修業だけでこの地獄。これから学校に行って仕事をして、帰ってからもまた修業がある。地獄の地獄だ。



「涼くん、おかえりなさい。お疲れ様」


「ああ、ただいま、楓ちゃん……」



俺が自分で選んだ道だ。たとえボロボロでも辛そうな顔やイヤそうな顔をするべきではない。特に楓ちゃんにはこれ以上へこたれている姿など見せたくない。


俺は笑顔を作った。笑える状況じゃなくても、無理やりにでも笑うんだ。


楓ちゃんも儚い笑顔を返してくれた。天使のような可愛い笑顔。


ああ、癒される……無理やり作った笑顔も自然な笑顔になれる。

楓ちゃんの笑顔を見れるなら、どんな地獄でもいくらでも頑張れる。単純バカな俺はそう確信したのであった。


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