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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第20章…山奥

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楓ちゃんとおじい様が山奥に参上です ※楓視点

 『雲母が来たからちゃんと話し合ってくる』


私のスマホに届いている、涼くんからのメッセージ。

今日の午前中に送信されたみたいだが、私がこのメッセージに気づいたのはそれから6時間ほど後のことであった。


今日は習い事でとても忙しかった。スマホを見る時間もほとんどないくらい忙しかった。いつもの習い事はここまで忙しくないけど、今日は特別に忙しかった。

ようやく習い事が終わってスマホを確認した時にこのメッセージを見つけて、心臓がドクンとイヤな音を立てた。


私が忙しすぎて手が離せなかった、そんな時に限って元カノの高井雲母が涼くんにちょっかいを出してきていた。

本当にタイミング最悪だよ。なんでよりによってこんな一番忙しい時に……!



……いや、おそらくこれは()()()だ。

ワザと私が一番忙しい時を狙ったんだ。あまりにも向こうに都合の良い時間帯だから偶然とは考えづらい。


私のスケジュールが高井雲母に把握されている。私のスケジュールを知る人物が、高井雲母の近くにいる……!

私のことを詳しく知っている人物となると、まず間違いなく富裕層。

絶対に突き止めて、その人物を叩き潰してやる。



涼くんは、誘拐されてしまった。



でも大丈夫、何も問題ない。

中条家は大金持ちなだけあって悪い人間もよく寄ってくる。涼くんに危害が及ぶ可能性だってちゃんと考慮していた。

こんなこともあろうかと、涼くんには発信器をつけてあるのだ。


本音を言えば涼くんの動向を常に見守っていたいという下心が主な理由だけど、涼くんに何かあった時に守りたいという理由だって紛れもない本心だ。


とにかくそういうわけで涼くんの居場所は私のスマホにきちんと表示されている。

けっこう遠い山奥だ。発信器がなければ見つけるのはかなり困難だったであろう。でも場所がわかれば遠くても大丈夫。中山さんに最速で到着できるようにお願いしてあるからすぐに行ける。



そしてスマホには現在の涼くんの居場所だけではなく、いつどこに行ってどこをどう移動したのか、涼くんの軌跡も保存、表示されている。



そのデータによると、今日涼くんはラブホテルに行ってるね。



そのデータを見て私はスマホを握り潰しそうになった。ていうかちょっとヒビが入ってしまった。

今はそれより涼くんを助けることが最優先なのはわかってるけど、ラブホテルはどうしても後回しにはできない。


落ち着け、私。心を黒く染めるな。

このデータをよく見ると、涼くんは一度帰ろうとしている。それからラブホテルに入る、という動きをしている。


涼くんはラブホを拒否したけど、高井雲母に無理やり連れていかれた可能性もある、ということだ。

しかし、我慢しようとしたけど結局誘惑に負けて我慢できずに高井雲母とラブホに入ってしまった、という可能性もある。ていうかその可能性の方が高い。


涼くんが高井雲母とヤってない場合は、涼くんは無罪。責めることはない。

本当は私以外の女とラブホに入ったという時点でもう絶対にイヤと言いたいところなんだけど、無理やりの可能性がある以上そこは不問とする。

でも、どんな理由があってもヤってる場合は有罪だよ。無理やり連れ込まれたとしてもヤってたら有罪。お仕置きせざるを得ない。



有罪か無罪かどう判定するのか、私はすでに手を打ってある。


涼くんが入ったラブホの部屋に、中条グループの調査員を潜入させて徹底的に調べてもらっている。


もし涼くんが高井雲母と行為を致しているのであれば、必ず痕跡が見つかる。

ゴミ箱に捨てられたティッシュや避妊具、部屋のどこかに飛び散った体液、ベッドの温度や臭いなど、部屋中をくまなく徹底的に調査すればヤってるかヤってないかがわかるんだ。


とにかくラブホの件は後で調査結果を聞くといて、今は涼くんを助けることに集中したい。調査結果が出た後どうするかは涼くんを助けてから考えればいい。



「……お嬢様」


「なんですか中山さん」


「この先は大変危険かもしれません。中条グループから増援を要請した方が良いかと思われますが……」


確かに、中条グループには頼りになる警護の精鋭部隊がいるけど……


「いいえ、私とおじい様の二人だけで十分だよ」


「そ、そうなのですか」



そう、十分だ。()()()()、精鋭部隊を呼ぶまでもない。

私とおじい様がいれば何も問題ない。




 中山さんのすごい運転で目的地にたどり着いた。

暗い山奥。そこには車が2台と、複数の人物がいた。ガラの悪そうな男が多い。

まあ高井雲母の単独犯ではないだろうとは思っていたので、仲間の男がいるのは想定内だ。


私とおじい様は車から降りて、少しずつ近づいて行った。

連中は私たちのことにまだ気づいていない。とりあえずまずは敵地の確認だ。敵をよく観察する。

本当は今すぐにでも突っ込んでいきたいところだが、ヤバイ武器や罠とかがあるかもしれない。万が一でも返り討ちにされるわけにはいかないので、落ち着いて慎重に見極める。



そして問題の高井雲母を発見した。なんかすごく楽しそうに笑っている様子なので殺意が湧きまくった。


高井雲母以外にも、もう一人見たことがある人物がいた。

ツーブロックな髪型をした男。あれは確か……



思い出した。バイオリン教室の最終試験で10人くらいの審査員が来ていたけど、そのうちの一人だ。


私が通うバイオリン教室に参加していたということは身分の高い者であることは間違いない。そんな人物が暗い山奥でカタギではなさそうな男たちとつるんでいるとは、これは大問題だね。


高井雲母はそのツーブロックの男に腕を絡めて抱きついた。男も高井雲母に腕を回している。

あの様子を見る限り、あの男……高井雲母の彼氏か。

バイオリン教室の審査員もやるような男が彼氏だったのか。


……バイオリン教室の近くのパウダールームで高井雲母に会った。なんでそこに高井雲母がいるんだ、と不思議に思ったが、審査員の彼氏に会いに来たというわけだったのか。

なるほど……好きな男に会う前のメイクは大事だとあの女は言っていたが、それは涼くんではなくあの男のことだったんだな。

ワケわかんなかった部分が、ようやくわかってきた。



それより涼くん! 涼くんはどこ!?

間違いなくこの辺にいるはず。暗くて探しづらいけどよく見渡して探す。


いた! 10メートルくらい奥、木や草の陰になって見つけづらかったけど私の目ならすぐに見つけられた。



涼くんは、傷だらけで膝をついていた。

涼くんの姿を見た瞬間、サーッと血の気が引いた。


そして、ツーブロックの男が涼くんの腹を蹴飛ばした。

涼くんの身体はさらに奥に吹っ飛んでいった。



あの男が、涼くんを……!!!!!!

私の大切な涼くんを、よくも……!!!!!!

許さない。絶対に許さない。



「涼くんっ!!!!!!」



私は涼くんの名前を叫んだ。叫ばずにはいられなかった。



「―――……楓ちゃんっ……!」



涼くんも私に気がついて、名前を呼んだ。


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