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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第19章…話

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元カノとヤることはできません

 「えぇ~帰っちゃうの? 女の子をほっぽって帰っちゃうんだ?」


俺が帰ろうとすると、背後から媚びたような声が聞こえた。もちろん雲母の声だ。


「……俺を捨てたお前が言うか」


俺は構わず歩き出す。すると雲母がスッと回り込んでくる。



「涼馬、お願い。あたしちょっと疲れちゃったの。休みたいわ」


ちょっと都合が悪くなると、媚びたような態度で誘惑してくる。これも俺がよく知っている雲母の姿だ。

昔の俺ならその場で悩殺されてすぐさまホテルに直行してるところだったが、今の俺の中には楓ちゃんがいて、楓ちゃんを裏切りたくなくない。

俺は楓ちゃんを悲しませてしまった。これ以上悲しませたくない。



「ごめん、どいてくれ」


「お願い、涼馬……」


ズイッ


「っ……!」



雲母は大きく距離を詰めてくる。ちょっとでも動いたら唇が触れてしまいそうな、そんな距離。

長く付き合ってきただけあって、この女は何の躊躇もなくこういうことができる。


瞳を潤ませて、上目遣いで見つめてくる。俺が上目遣いに弱いことをよく知っている。


で、胸元の大きく開いた服の隙間から、派手な色のブラジャーと控えめなサイズの胸がチラリと覗く。

雲母はわかっててわざと見えるようにやっている。俺がチラ見することも知っている。実際俺はチラ見してしまう。

谷間はできていないが、二つの膨らみの隙間が強く誘惑していた。

俺が胸に弱いことも、雲母はよく知っている。



ああ、昔はこの誘惑で何度も悩殺されたな。もう我慢できなくて雲母をお姫様抱っこしながらラブホに直行したこともあった。


でも今は……心の中に大きく強くハッキリと楓ちゃんの姿がある。

楓ちゃんと交わったことで、心の中でも楓ちゃんと強く繋がっている。


雲母の誘惑は確かに強い誘惑だが、今回ばかりは流されるわけにはいかなかった。

スケベな俺がラブホを忌避してる時点で、俺の中ではかなり大きく楓ちゃんに傾いているのがハッキリとわかった。


ダメだ。とにかくダメだ。



「ごめん雲母! やっぱりダメだ―――」


―――ドスッ!


「ぐぅっ!?!?!?」



断ろうとした瞬間、俺の鳩尾に雲母の拳が突き刺さった。

クリティカルヒットして、立っていられずに膝から崩れ落ちる。



「あんたねぇ、ラブホの前でグズグズグズグズしてんじゃないわよ、男らしくないわね。レディに恥をかかせる気? いいから行くって言ったら行くのよ」



呼吸するのもままならない俺は、雲母にズルズルと引きずられてラブホの中に連れていかれた。




 「…………」



やっとまともに呼吸ができるようになってきたと思った頃にはもう遅い。俺はラブホの部屋の中にいた。

ピンクの部屋……ピンクのカーテン……ピンクのベッド……怪しい雰囲気……ザ・ラブホテルっていうくらいラブホであった。


俺は……顔面蒼白でベッドに座っていた。



何を……何をやってんだ俺は。

ほとんど無理やり連れ込まれたといったって雲母と一緒にラブホに入ったというのは事実だ。


楓ちゃんと交わっておいて、他の女とラブホの中に存在している時点でもう完全にアウトなんだよ。

発信器ついてるんだよな俺。ラブホに行ったのバレバレだよな。終わったな俺。まあ死んだ方がよさそうだよな俺。


青ざめている俺とは対照的に、雲母は赤くなっていた。ほんのりと赤く染めた頬で、艶かしく俺を見つめていた。



「じゃあ涼馬、あたしシャワー浴びてくるわね」



雲母はそう言ってウインクして、バスルームに向かった。

完全にオトナな時間の流れになってしまった。



…………

なんでだよ……なんでこうなったんだよ……

俺は頭を抱えて項垂れた。


ラブホの中って、なんか変な魔法でもかけられてるんじゃないかってくらい特殊な空気が蔓延している。俺も変な気分になってきてしまう。俺はブンブンと首を横に振った。


どうする……どうするんだ俺。マジでどうしよう。

雲母がシャワー中の今なら、逃げようと思えば逃げられる。しかしそれは相手を一番傷つけるようなことだ、そんなことできるか。俺は逃げない、逃げられない。

雲母も俺が逃げないのをわかってて安心してのんびりシャワーを浴びているんだ。


でもどうするんだよ。逃げないけどヤるつもりもないぞ。考えろ、雲母にイヤな思いをさせずにヤらない流れに変える方法、考えろ。


……必死に考えたがどうすればいいのかわからない。

雲母がシャワーを浴びている音が聞こえてきて、俺は狂いそうになる。こういう時に無駄に研ぎ澄まされる聴覚を恨めしく思った。



ラブホにいるとどうしても性的なことを意識してしまう。

今、俺の心の中では楓ちゃんのハジメテを奪った記憶が強く濃くリプレイされる。



楓ちゃんの唇の感触……

楓ちゃんの胸の感触……

楓ちゃんのアレの感触……


楓ちゃんのすべてが柔らかくて、気持ちよくて……

楓ちゃんの笑顔も、10年前の楓ちゃんの笑顔も、ハッキリと鮮明に思い浮かぶ。



全部思い出して強く意識して、魂が熱く震える。

さっきから俺はずっと、楓ちゃんのことばっかりだ。


やはり雲母とはできない。楓ちゃんのことしか考えられないのに、雲母とできるわけない。雲母にも失礼だ。


俺は気持ちを固く引き締めてヤらない覚悟、ヤらない決意をした。



「お待たせ~」


「―――!?!?!?」



しかし、俺のヤらない決意は早くも揺らいでしまった。

なぜなら、シャワーを終えて戻ってきた雲母は素っ裸だったからだ。


バスタオルを手に持っているだけで床に引きずっている。なんで引きずってんだよ、普通身体に巻くだろ! 初手からスッポンポンは卑怯だろ!!



「おい雲母! なんだよその格好!!」


「何言ってんのよ、あたしたち何度も裸で絡み合ってきた仲じゃない。今さら裸の一つや二つ気にしないわ」



雲母は何も隠そうとせずにすべてをさらけ出して平然としている。

そういえば恥じらいがないところあったな雲母は……付き合い始めたばかりの頃は恥ずかしそうにしてたのに、いつの間にか平気で裸で俺の前をウロウロするようになっていた。

裸が見れて嬉しかったと思う反面、恥ずかしがる仕草が好きだったのに……と思う気持ちもあって複雑に思っていた。

でも結局付き合っていた頃は裸が見れて幸せだった。



雲母は素っ裸のまま、俺のとなりにストンと座る。

ベッドが軋む音がして、小ぶりな胸もわずかに揺れた。



「涼馬もシャワー浴びてきていいわよ」


「いや、俺は……」


俺はヤるつもりじゃねぇんだ。俺の決意は揺らいだだけだ、崩れたわけじゃない。

ヤるわけじゃないのにシャワーとか浴びるか。



「浴びないの? シャワー浴びる時間も惜しいくらい、あたしとヤりたいんだ?」


「違う、そうじゃない……」


「いいわよあたしは別に。このままヤっても……」



スルッと、雲母が俺の身体に絡みついてくる。

密着する。小ぶりなサイズの胸でも、柔らかな感触を確かに感じる。


派手なネイルが塗られた指先が、俺の顎をそっと撫でる。


「涼馬……」


赤い唇が耳元に寄せられて、色っぽく囁かれる。



「―――」



決意が崩れたわけじゃない。俺の中では変わらず楓ちゃんの存在が難攻不落の城のように佇んでいる。


しかしそれ以前に、俺は自分がこういう男だって知っている。


さっき俺はヤらない方法を必死に考えたけどそんなものわかるわけがなかった。なぜなら俺は今まで一度も()()()()()()をしたことがなかったんだから。

楓ちゃんに迫られた時だって本当は手を出しちゃダメだってわかってたのに結局ヤってしまった。


だからヤっちゃダメだったんだ。()()()()()()がわかってたから。愚かな俺は同じことをくり返すって。


俺はモテないから、女の子の方から誘ってくれるなんて奇跡より奇跡。だからこそその貴重なチャンスを確実にものにしてきた。

来るもの拒まずで、据え膳食わぬは男の恥という考え方で、穴があったら挿入れてしまう、しょせんはそういう男。


確かに俺の中にいる楓ちゃんの存在は大きい。しかし、微妙に薄れてきているとはいえ雲母が存在するのもまた事実。雲母も消えてはいない。そんな雲母に裸で迫られたりしたら……

抵抗はしてみるが、結局はピンクの波に流される。



俺は裸の雲母をベッドに押し倒した。

雲母もそうなることがわかっていたようで余裕の笑みを崩すことはない。



「いいわよ、涼馬。来て……」



最悪だ。本当に最悪だ俺は。



…………

……


……あれ?


……


勃たない……


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