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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第19章…話

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元カノに連れていかれた場所はアレでした

 ああ……帰りてぇ……雲母は何も話してくれないまま時間だけが過ぎていく。

話し合いがしたい俺、話し合いに応じてくれない雲母。かつて7年も付き合ってきた俺たちに、未来など見えない。


本音は帰りたいけど、このままでは終われない。ここで帰ったら何しに来たんだよってなる。雲母が何を考えているのかハッキリさせるまでは終われない。

どんな結果になろうと、俺自身の気持ちに決着をつけるために。



「おい雲母、いいかげん教えてくれよ。お前は何がしたいんだよ」


「あんたさ、今は中条グループのお嬢様と一緒に住んでるんでしょ?」


「聞けって!」


「一緒に住んでるんでしょ?」


「……そうだけど……なんで知ってんの?」


「すごく広くて良さそうな家よね。いいわねぇ」



なんで知ってんの、って聞いてんだけど……

これが一番腑に落ちないところだ。こいつが人の話を聞かないのはいつものことだが、せめてここだけでも教えてほしいんだが。

こっちは何もわからないのにそっちだけがわかってる感じなのがとても怖い。



「ねぇ涼馬」


「……なんだよ」



「あんたさ、中条楓とはもうヤったのかしら?」



「……っ……!」



俺の知りたいこととは全然違う方向に行ったし、しかも一番聞かれたくないことを聞かれた。

俺の質問には答えないくせに、そっちは質問を拒否する権利はないみたいな圧力かけてくるんだな。

昔から雲母はそうだったんだけど、昔は全然気にしなかったんだけど、今は少し、癪に障るような感覚ができている。



「いや……それは……」


俺は返答に困る。答えられない、元カノだろうが他人に言えるようなことじゃない。そっちだって他の男との話はしないじゃないか、こっちだってしないぞ。



「……へぇ~、ヤったんだ?」


「っ……!」


「隠そうとしたって無駄よ。あんたとは長い付き合いだもの、目を見ればすぐにわかる」



頬杖ついて鋭い視線で俺を見つめてくる。俺の首にヘビが巻きついているような感覚。


すべて、見透かされている。

俺は……わかんねぇよ。こいつの言う通り長い付き合いなのに、高井雲母という女が、何もわかんねぇよ。

なんで俺だけわかんねぇんだよ。だんだん不快になってきた。


この女がどんどん黒くなっていく。モヤモヤした闇で、この女が見えなくなっていく。



「……お前とはもう別れてるんだから、楓ちゃんとシてたとしてもお前には関係ないだろ」


「別にダメとは言わないわ。ただ、あたしと別れてまだ日も浅いのにもう他の女を抱いてるっていうのが、ちょっとだけガッカリかなって。あんたならもうちょっとあたしのことを引きずってくれるかなって思ってたのに」


メチャクチャ引きずったよ。お前が思ってるより10倍以上はダメージ受けたよ。ていうか今でもまだ引きずってる部分は残ってるよ。


「お前の方からフってきたのにそんなこと言われても知るかとしか言えない」


「……で、どうだった? 中条楓を抱いた感想は。おっぱい大きいもんねあの女。さぞかし良かったんでしょうね」


「お前には関係ないって言ってんだろ」



この女は……俺が女の子とセックスしたと聞いて、どんな感情なんだ?

キレられるかとか殴られるかと思ったがそんなことはなく。

『おっぱい大きいもんね』のところだけは凄まじい殺意の感情を感じたんだが、それ以外は淡々としている。

昔はもっと嫉妬深いところが多かったのに今はあまり感じられない。何を考えている、雲母。


『お前より気持ちよかったかもしれない』って言ってみるか?

いや、やめよう。これ以上話を逸らしたくない。


自分の感情ですらよくわかってないのに、相手の感情などわかるはずもないか。

とにかく関係ないからやめよう。関係ない話はもう何も答えない。



「おい、雲母!」


「何よ、うっさいわね」


「これ以上は付き合ってられん、これが最後だ。ヨリを戻そうと言った話、ちゃんと説明しろ」


「……じゃあ、また移動しましょうか」


「はぁ? 移動する必要ないだろ。話ならここでできるだろ」


「いいから行きましょ」


雲母は立ち上がった。俺も舌打ちしながら立ち上がる。

カフェを出て、雲母についていく。今度はどこに行くか知らんが、このままじゃ終われないので地獄でも行ってやる。


今度はそんなに遠くなかった。カフェから歩いて5分もかからなかった。

繁華街ならだいたいどこにでもあるモノだった。



「……は……!?」


その場所を見て俺は絶句した。

『HOTEL』の文字と、ピンク色がいっぱい。どこからどう見ても、ラブホテル。


俺と雲母は、ラブホテルの入口の前に立っていた。



「ここよ。さあ早く入りましょ」


雲母は平然とした感じで普通に入ろうとする。



「おい待てよ!」


「何よ」


「どういうことだよ。なんでラブホなんだよ」


「は? ここがあんたのお望みの場所でしょ? どうせスケベなあんたのことだから()()()()()()()であたしについてきたんじゃないの?」


「違う! 違ぇよ!! そんなつもりで来たんじゃねぇよ!! 真面目に話し合いするために来たんだよ!!」


確かにスケベな俺だが、今は絶対に違う。欠片もそんなこと考えてなかった。

ちゃんと話し合いをして、俺たちがこれからどうするかをしっかり決めるつもりだったんだ。それで自分の気持ちを整理して前に進もうと思っていたんだ。それらが全然なってないのにラブホとか行けるか。

地獄でも行くと言ったが、ラブホだけはない。



「今さら何照れてんのよ。あたしたちラブホなんて数えきれないほど行ったじゃない。デートでいろんなところに行っていろんなことをしたけど、いつだってラブホに帰結したでしょ」


「それは付き合ってた頃の話だろ! 今は違う!!」


「えっ……ウソでしょ……!?」


雲母は目を見開いて大げさに驚いた。



「ウソよ……あんなにスケベで年中発情期のあんたがラブホを拒否するなんて、そんなのありえない……絶対にありえないわ!

あんた、本当に涼馬……?」


ギュッ


「いって……!」


頬をつねられて引っ張られた。俺はその手を振り払った。



「ふざけんのも大概にしろよ……俺は大真面目なんだよ!

もういい、帰る!!」



俺は楓ちゃんのペットだ。さすがにラブホは行けない。いくら優柔不断なカスの俺でも、他の女とラブホなんて……それだけはやっちゃいけないことだってわかる。


俺は雲母に背中を向けて、去ろうとする。


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