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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第19章…話

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元カノがまた家に来ました

 とにかく、つばきちゃんは授業に出席させた。大変だったけどなんとか説得した。


あとは、堀之内さんか……でもあの子はまあ、直接ハッキリと好きって言ったわけじゃないし、俺の勘違いって可能性もなくはない。

向こうから何かしてこない限りは、俺も何もしない方がいいかもしれない。




―――




 今日は休日。今日も楓ちゃんは習い事に行った。

楓ちゃんバイオリンガチ勢なんだなぁ。すごく頑張っている。楓ちゃんの頑張りを俺も見習わなくては。


今日の俺は掃除とか課されることもなく、ずっと家でのんびりしてていいようだ。

お言葉に甘えてちょっとのんびりしよう。のんびりしながらこれからどうするかじっくり考えよう。



……いい天気だし、たまにはどっかに外出したいなぁという気持ちもなくはないが、今はちょっとできない。


実は俺、楓ちゃんがいないとこの家を出入りできないんだよな。

正確に言えば出ることはできるんだが、入ることができない。

この家に入るために必要なカードは、楓ちゃんの胸の谷間にある。だから楓ちゃんがいないと家に入れない。


家から出たい時は楓ちゃんの許可を得た上で楓ちゃんも一緒に行くということになっている。1人で外に出るだけなら可能ではあるが、発信器がついてるので居場所はバレるから意味ない。

俺はペットなだけあって楓ちゃん不在時でも完全に楓ちゃんに管理されている。首輪はついてないけど実質首輪をされているようなもの。



まあ別にいいんだけどさ。1人で家を出入りできないことを不便に思ったり窮屈に思ったりしたことは一度もないから。


この家に住み始めてからけっこう経つのに未だに行ったことがないところがあるくらいすごく広いし、やろうと思えばどんな遊びでもどんなスポーツでもできるぞ。


だから基本的には外出する必要はない。万が一でも俺が危険な目に遭うことを防ぐために、セキュリティ万全のこの家が守ってくれてるんだ。これ以上安全な場所なんてめったにない。ここにいさせてもらえることに本当に感謝感謝だ。




 俺は池で錦鯉を眺める。鯉の観賞にちょっとハマった。動きが優雅で色もキレイで、いくらでも見てられる。

この時間、かなり落ち着く。なんでもいいから落ち着く時間があるのは本当に幸せなことだよな。



スマホにメッセージが来た。もしかして楓ちゃんかな?

そう思ってスマホを確認すると……



「―――!!!!!!」



俺は自分の目を疑って何度も瞬きした。何度瞬きしても表示されている名前は、『高井雲母』。


雲母……! 雲母からメッセージが来た。

着信拒否されていたはず……フラれてからずっと連絡が取れてなかったはず。その雲母から、メッセージが来た。


心臓を強く震わせながら、メッセージの内容を見る。



『あたし、今家の前にいるわ。早く来なさい』



え……今家の前にいるの……?

またしてもホラー展開を味わった。最近俺の周りの女の子怖すぎだって。


雲母が、また家にやってきた。また来るんじゃないかとは思ってたけど、本当に来た。


またメッセージの音がピコンって鳴って、心臓が跳ねた。



『早く来て。会いたいわ、涼馬』



会いたい……? 雲母が、俺に?


『会いたい』という元カノの言葉は、たった四文字でも凄まじく重い言葉。俺はどうしても嬉しい気持ちを否定することができない。

悔しいけどこの女は俺の喜ばせ方をよく知っている。


ちょうどよかった、雲母とはちゃんと話し合いたいと思っていたんだ。

前回会った時の雲母の言葉や動きが何もかもわからなかったんだ。ずっとモヤモヤしていたんだ。本人と面と向かって本人の口からよく話を聞きたい。

これだけはちゃんとハッキリさせないと、俺は前に進めないんだ。


だからもちろん行く。雲母に会いに行く。

行くけど、行こうと歩き出した瞬間に脳裏に浮かぶは、楓ちゃん。

そして一度出たら自力ではもうこの家に戻れないという懸念。いいのか、俺。


別に悪いことをするわけじゃないんだから、楓ちゃんにちゃんとメッセージを送っておけばいいだろう。どちらにせよ楓ちゃんにバレないように雲母と密会するのは不可能なんだから。



『雲母が来たからちゃんと話し合ってくる』というメッセージを楓ちゃんに送った。


これでよし。さあ行くぞ。

緊張しながら家の入口まで行った。



 家の門を通って、初めて俺1人で家を出た。

一歩出ると、門が自動的に閉まる。これで退路は断たれた。



「涼馬……」


「雲母……」



出てすぐのところに、雲母が立っていた。

衝撃の再会以来の雲母。雲母はハイヒールの音を鳴らしながら近づいてくる。



「遅いわね、待ったわよ」


「ごめん」


「インターホン何回も鳴らしたんだけど誰も出なかったからあんたのスマホに直接メッセージを送ったのよ」


「そうだったのか」


楓ちゃんも賢三さんも出かけてるし、使用人さんたちは忙しいし、俺は庭の池にいたしで誰も雲母の来訪に気づかなかったのか。家が広すぎるがゆえの弊害か。



「まあそんなことは別にどうでもいいわ、会いたかったわ涼馬」


「…………」


「何黙ってんのよ。せっかくあたしが会いに来たっていうのに、何か言うことはないのかしら?」



前回再会した時は半分パニックで何が何やらだったが、今は少しは落ち着いて雲母と対峙できる。実質今がちゃんとした久しぶりの元カノとの再会と言えよう。


正直雲母にムカついてる気持ちはあるし、必要最低限のことしか話したくないと言いたいところだけど、やはりこうして改めて見ると、雲母は美人すぎる。



「……相変わらず、キレイだよ」


だからごく自然にサラッと雲母の()()を褒める言葉が出てきた。

いつもオシャレだけど今日は特にオシャレに見えた。雲母に会ったらまずは褒めるというクセが沁みついていて、今回もそれが出てしまった。

自分を最大限に美しく見せるメイク。そしてトレードマークとも言える赤い唇が今日もとてもよく似合っていた。


俺の言葉を聞いた雲母は赤い唇の口角をスッと上げた。



「ふふっ、当然よ。()()()()に会うためならどんなオシャレの努力も厭わないわ」


()()()()……って、俺のこと……だよな……?

今でも俺を好きって言ってくれるのか? じゃあなんでフったんだよ。なんで俺を捨てたんだよ。マジでわけわかんねぇんだよ。


まあ、今日はそこんとこを詳しく聞くために来たんだ。



「……来てくれてありがとう、雲母。俺もお前とちゃんと話し合いたいと思ってたところなんだ」


「そう。ここじゃ何だし、落ち着いて話ができる場所に移動しましょ」



ギュッ


「!」



雲母は俺の手を握って、歩き出す。

付き合っていた頃もこうしてよく手を握られた。一度手を握られたら俺が立ち止まることは許されなかった。


雲母の手……相変わらず派手なネイル。キレイだ。

雲母と付き合っていた想い出がどんどん流れてきて、切ない気持ちになった。


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