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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第17章…邂逅

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ヤンデレ巨乳ちゃんと元カノが衝突しました ※楓視点


 ―――……


涼くんの元カノ、高井雲母は鏡の前でメイクを続けている。

私はその近くでジッと動かずに待っていた。


私はもうメイクバッチリ終わったしさっさと帰りたい。早く涼くんが待つ家に帰りたい。そうしたいのは山々なんだけど、せっかく元カノ登場という願ってもない展開が来たんだからそうもいかない。

聞きたいことが山ほどある。こいつ本人の口から聞かせてくれないと納得できないことがたくさんある。


別にメイク中に話しかけてもいいんだけどさ、メイクは女にとって戦いみたいなものだからね。たとえ憎い相手でも邪魔はしない方がいい。

私だってメイク中に邪魔されたら殺したいくらいムカつくから。ああ、涼くんは別だよ? 涼くんにならいくら邪魔されたとしても全然構わないんだけど、それ以外の人だったら絶対キレる。

だから私はこの女がメイクを終えるまで待つ。


……待つよ。待つけどさ。まだまともに会話すらしたこともない相手を待つ時間とか地味に辛い。しかし最近のモヤモヤはほぼこいつが原因。聞きたいことをこいつに聞いてハッキリさせないと私は前に進めないんだ。



 ………………

…………

……


でもこいつ地味にメイク時間長いな……

私もメイクは時間かける方だけど、私よりさらに長くメイクしている。真っ赤な唇をぷっくりと仕上げて、アイシャドーも塗っている。


……なんだろうな、メイクの時間が私より長くてちょっとだけ負けた気分……

いやいや、メイクの時間で対抗意識燃やしてどうするんだよ。メイクの時間とかむしろ短い方が男の子には喜ばれるだろう。短く済むなら短い方がいいに決まってる。


それはわかっているが、なんか謎の悔しさがある。すべてにおいてこの女に完全に勝たないと気が済まないみたいな自分が確かに存在している。



 あ、やっとメイクが終わったようだ。

高井雲母は私の方を向く。私は高井雲母と対峙した。


高井雲母はさっきまで塗っていた口紅を口元に添えて、フッと口角を上げながら私を見る。

なんなんだろうか。唇を強調しているのだろうか。


それにしてもこうして向かい合ってみると、ものすごく美人だな。そして大人っぽい雰囲気も醸し出している。



()()()()に会う前のメイクって大事よね。何ならこれに命をかけてもいいっていうくらい」


高井雲母が初めて私に話したセリフはそれだった。

それに関しては私も全面的に同意する。同意はするが、警戒心を最大に働かせる。


()()()()というのは、涼くんのこと……?

この女もこれから涼くんに会いに行くというのか? 涼くんは私の家にいるんだぞ。今から私の家に来るというのか? 冗談じゃない。死んでもこの女に敷地を跨がせないぞ。



「やーねぇ、そんなに怖い目で見ないでくれないかしら。わざわざ自己紹介しなくても、あたしのことは知ってる感じね」


「……ええ、涼くんが教えてくれましたよ。涼くんの()彼女さんの、高井雲母さん」


()をものすごく強調して言った。この女は元だ、過去の女だ。涼くんとこの女に未来なんてない。来させない。



「あたしもあんたのことは知ってるわよ。中条グループのお嬢様、中条楓ちゃん」


こいつにちゃん付けで呼ばれるの背筋がゾッとする。今はそんなこと大した問題じゃないけど。


中条グループは国内でもトップクラスの大企業だし、私も別に正体は隠してないし、私のことを知っててもまあおかしくはない。


私のことを知ってるだけならまだわかる。でも私の家の場所を知ってるのと、私の家に涼くんが住んでることを知ってるのは一体どういうことだ。

知ってるのは中条家の者のみのはずなのに、なぜ。



「あの、私の家に涼くんが住んでること、なんで知ってるんですか? なんで私の家知ってるんですか?」


「ねぇ、あんたは涼馬の何なの?」


「…………」



質問ガン無視……

涼くんに謝罪の言葉がなかった時点でかなり自分勝手で性格悪い女だと思ったけど、私の予想通り人の話を聞かないワガママ女のようだ。


まあいい、こいつの質問は私が一番答えたかったものでもある。



「私は涼くんの彼女です!」


「……彼女……? ホントに?」


「……彼女……になる予定の、女です!」



堂々と()()だって、言いたかった。

しかし誠に不本意ながら、()()()()彼女ではない……ウソをついたところで虚しいだけ……悔しさを搾り出すようにプルプルと震えた。

高井雲母はそんな私を見て余裕そうな笑みを浮かべた。



「ふふ、そうよねぇ。涼馬にもう新しい彼女ができたわけじゃないわよねぇ。

あたしと別れてまだ2ヶ月くらいしか経ってないものね。涼馬はそんな短期間で他の女に乗りかえられるような男じゃないわ」


2ヶ月……私が涼くんを拾ってから経った時間。

時間にすれば大した長さじゃないかもしれない。しかし私にとっては無限にも匹敵する、濃厚で濃密な時間。私はこの2ヶ月、身も心も蕩けるくらい幸せだったと胸を張って言える。



「ふふふ、2ヶ月ねぇ……ふふっ」


「何笑ってんですか」


「あんたが涼馬と過ごした時間はたったの2ヶ月。あたしは涼馬と7()()も一緒に付き合っていたわ」


「……!」


「7年よ、7年。この時間の重みがわかるかしら? 小学生が入学してから卒業するまでの期間より長いのよ? あたしはそれだけの長い期間、涼馬とたくさんの想い出を作ってきたの。

たったの2ヶ月しかないあんたとは格が違うのよ」


「ッ……!!!!!!」



じ……時間マウントだと……なんて卑怯な……!! いくら愛が強くても物理的な時間の流れだけはどうにもならない。7年も涼くんと一緒にいたなんてあまりにもズルい。


私は2ヶ月……この女は7年……単純計算で私の42倍……!!


妬ましい……この女が憎い……!!

私の心の中にある愛の炎が大炎上した。私の愛の炎は言われっぱなしで黙っていられるほどおとなしくなかった。


何が7年だ。その程度の時間で私の愛を砕けるとでも思っているのか。



「……ふふ……ふふふ……7年ですか……」


「何がおかしいのよ」



「実は私、1()0()()()に涼くんと会ってるんですよ。

わかります? 10年ですよ10年。あなたは高校生の頃に涼くんと出会ったんですよね? 私は涼くんが中学生の頃にすでに出会ってるんです。

私の方が先に出会ったんです。私の方が先に涼くんを好きになったんです。私は10年間ずっと涼くんを想い続けてきました。この10年、1日たりとも私の心に涼くんがいなかった日はありません。

私の方が涼くんを想う時間が長いです! 時間で勝負するなら私の方が上です! 早いもの勝ちです残念でした!」



はぁ、はぁ……少し息切れしてしまったけどちゃんと言ってやったぞ。

高井雲母は余裕そうな笑みを崩してはいないが、まあそれは別にいい。言いたいことをちゃんと言わなきゃならない時もあるんだ。言えたからいいんだ。



「ハッ、バッカじゃないの? 愛に時間の長さなんて関係ないわよ」


「先に時間の長さでマウントを取ろうとしたのはどこの誰でしたっけ?」


「…………チッ」



あっ、舌打ちしたなこの女。


中条家のお嬢様として、事を荒立てるようなことは控えるべきである。

しかしそれ以前に私は1人の女。女として絶対に譲れないものがある。


私は一歩も退かない。これは戦争になりそうだ。


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