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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第17章…邂逅

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頑張らなくてはいけません




―――




 雲母の襲来事件から2週間ぐらい過ぎた。

少しは機嫌直してくれたかなぁと思っていた楓ちゃんだったが、やはり未だにピリピリしている。おっかなくて近寄りがたい。


本当に俺のせい。楓ちゃんに救われて家に住まわせてもらってペットの契約を結んでおきながら他の女の子に未練がある。ご主人様以外の女の子に特別な感情を抱いている時点で大きな罪なのだ。


俺が悪いのは大前提として楓ちゃんがゴキゲンナナメを続けている理由がまだある。雲母襲来事件の真相が、2週間経っても何もわからない。

俺に飽きたつまらないとか吐き捨てて俺を捨てた雲母が急に手のひらを返した理由、俺が楓ちゃんの家に住んでいることを知っている理由など、何もかもわからん。

7年付き合ってきたけど、今の雲母が何を考えているのか俺にもさっぱりわからない。


雲母……また来るんだろうか? この2週間全然来る気配がなかったけどまたこの家に来るんだろうか……



 楓ちゃんはゴキゲンナナメでも毎日俺のことをちゃんと起こしてくれる。

起こしてくれるんだが……ちょっと起こし方が乱暴なんだ。



「zzz……」


―――ドスンッ!!


「ぐふぅっ!?!?!?」


「おはよう、涼くん」


「お……おは……よう……」


ピクピクピクッ



現在の楓ちゃんの起こし方は、俺が寝ている布団に勢いをつけてダイブして飛び乗ってくる、というものだ。

助走をつけてジャンプしてるんじゃないかというくらいの勢いで飛び乗って起こしてくる。俺の腹に衝撃が走って強制的に現実世界に呼び起こされる。どんなに睡眠が深い奴でも一発で叩き起こされるだろう。

普通は揺すって起こすものだと思う。しかしこれは叩き潰して起こしている。もうこれタックルじゃねぇのか。


朝っぱらから、目覚めた瞬間からもうすでに瀕死だ……本当に怒ってるなぁ……楓ちゃんの怒りがこれでもかというくらい腹に伝わってくる。


……まあでも……布団越しでもハッキリと伝わる、たわわな巨乳の感触が堪能できるからよしとしよう。目覚めた瞬間から柔らかい胸を感じて、むにゅっと押し潰された双丘を拝むことができる、最高の目覚めで最高の朝だ、うん。




 楓ちゃんはゴキゲンナナメでも食事の時にはあ~んをしてくれる。

楓ちゃんを怒らせてしまった時はあ~んしてくれないことも多かったのだが、現在は不機嫌でも毎日欠かさずにしてくれる。してくれるのだが……



「涼くん、はい、あ~ん」


「あ、あーん……」


モグモグ


「はい、あ~ん」


「ま、待ってくれ、まだ食べてる途中……むぐぐ……」


モグモグ


「はい、あ~ん」


「ちょ、ちょっと速いって……むぐぅっ……」



食べさせてくれるんだけど、あまりにもテンポが速すぎる。あ~んのパワープレイである。

あ~んの時も凄まじい圧力を感じる。箸の先まで、卵焼きにまで威圧感が宿されているような気がする。


ここまで圧力がかかったあ~んはなかなか見られんぞ。俺の咀嚼に合わせずどんどん詰め込んでくるが、ちょっとでも吐き出したら殺される確信があった。いや死んでも吐き出すものか。楓ちゃんが食べさせてくれてるんだからどんなものでも食い尽くしてやる。




 「じゃあ涼くん、私はこれから習い事に行ってくるから」


「あ、ああ」



今日休日だったわ。今日の楓ちゃん制服じゃなくて私服なんだなぁとは思ってたけど休日だった。


私服の楓ちゃんも最高に可愛い。全体的に上品で清楚な服装。似合う、あまりにも。

胸元が少し開いていて、鎖骨のあたりに垂れ下がるネックレスが艶かしい。

谷間が見えそうで見えない、いややっぱりちょっとだけ見えるのが絶妙にエロい。



「夕方頃には帰ると思うけど、それまでに家の掃除やっといてほしいの」


「そ、掃除……!?」


「うん、全部はやらなくていいけどできる範囲でやっといて。じゃあ行ってきます」


「ああ、行ってらっしゃい」



楓ちゃんは車に乗って出かけていった。

俺は休日も仕事を課された。やはり怒っているので徹底的に仕事を盛られているな。


まあいい、家の掃除ならやったことある。任せとけ。

俺はペット、楓ちゃんに言われたことは必ずやり遂げる。頑張ってやり遂げて、楓ちゃんの想定よりもキレイにして、楓ちゃんに褒められたい!


どうしようもないカスの俺は、与えられた仕事を、やれることを精一杯やるしかないのだ!



 というわけで家の掃除をやり始める。

掃除道具の場所とか、家の構造とかわかるようになったので、前にやった時よりスムーズに掃除が進む進む。


窓ガラスの掃除もやるぞ。キレイに拭いてピカピカにするぞ。



―――ジーッ……


「…………!」



ヒイイィッ……と叫びたくなるような気分だった。

怖い、怖すぎる。突き刺すような視線を感じる。


楓ちゃんのおじいさん、賢三さんがこっちを見ていた。

和室で座ってお茶を飲みながら、窓拭き掃除をしている俺をジッと見ている。


睨んでる……睨んでるよなぁ、あれ。

賢三さんに釘を刺されてから未だにロクに進展してないもんな、そりゃ睨まれるわ。

賢三さんはそんなに気が長くないと言っていた。今の状況が続けば、そう遠くない未来で殺される。



「……なぁ、安村君」


ぎゃああああああ!!!!!!



いつの間にか、賢三さんは俺の背後に来ていた。

本当にいつの間にかだ。ついさっきまで確かに和室でお茶を飲んでいたはずなのに。


そう遠くない未来というか、今この場で殺されるかもしれない。



「な……なな、なんでしょうか、賢三さん!」


「キミは、楓の言いなりなのかね?」


「えっ……?」


「楓に言われて掃除をしているんだろう? 楓はキミより年下の女の子だ。年下の女の子にいいように使われているのかね、成人した立派な男とあろう者が」



うっ……痛いところを突かれた。本当に俺に刺さる言葉だ。

そりゃ、ペットだからなぁ……俺も年上の男として恥ずかしいとか情けないとか思うところはあるが、ペットだから逆らえない。

だがペットになっているということは賢三さんも知らないからな。言えない。賢三さんには特に言えない。



「そ、それは……楓ちゃんは命の恩人ですからね! その大きな恩を少しでもお返ししたいんです!」


「それはわかるんだが、いくら恩があるとはいえ男としての誇りやプライドはないのかね」


耳が痛い……ぐうの音も出ない。誇り、プライド……今の俺に一番足りないもの。



「キミは楓の結婚相手となるかもしれん男なんだ。もしそうなれば、キミは中条グループの次期社長となる可能性もある」


「じ、次期社長!?!?!? と、とんでもございません!!」


俺が大企業中条グループの社長とか、そんなことになったらもう終わりだよこの国は。正気の沙汰じゃない。



「あくまでも可能性というだけだ。だがただのイエスマンでは到底社長を任せることなんてできんな。今のキミには無理だ」


その通りです、俺には無理です。

俺はもう、目の前にある仕事に集中することだけで精一杯です。



()()()()ならな。これからのことはどうなるかわからん。生まれや育ちは関係ない、誰にだってテッペンを取るチャンスはあるんだ。

キミが中条グループでこれからどうなるか、社長になれるのか、中条グループにいる資格なしとなるのか、すべてはキミ次第だ」



き、気が早いな。賢三さんはそこまで考えて俺を見定めようとしているのか。

マジで勘弁してくれ。社長とか知らん、そんな大それたこと考える余裕なんて俺には一切ないんだ。


賢三さんにジッと見張られながら俺は仕事をする。圧力がすごくてすごくやりづらいけど俺は頑張るしかない。頑張らなくてはいけないんだ。


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