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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第16章…髪型

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つばきちゃんは少しイメチェンしました




―――




 ―――ジョロロロ……


学校の男子トイレで、ていうか俺専用のトイレで、俺はすごい勢いで大量の放尿をしている途中である。


女の子たちのことで悩み続けている俺だが今はちょっと小休止。

我慢の限界だった尿意を解放するこのスッキリ感、ちょっとした幸せを感じる。


女子生徒たちに慕われるようになり、いろんな女の子が好意的に構ってくれるようになってすごく嬉しいし幸せだけど、それはそれとして1人になれる時間も必要だ。

一度フラれて絶望の孤独に叩き落とされてとても辛い時もあったけど、その経験をしたからこそ1人の時間も大切にしたいと思う。


とにかく1人でじっくり考える時間が欲しいんだ。俺にとってその時間がこのトイレタイムだ。

男が俺しかいない環境での男子トイレ。絶対に誰も入ってこないから1人になるには絶好の場所。

正確にはつばきちゃんが一度入ったことあったけど、俺以外の人が使用したら強風が吹く設定になってるみたいなのでもう誰も寄ってこないだろう。ここまでしなくても男子トイレに入ろうとする女子なんているわけないだろとは思うけど。


さらに正確に言うと俺1人だけの空間とは言い切れない部分もある。

相変わらずこのトイレには楓ちゃんのポスターがたくさん貼ってある。オシッコするのにどうしても楓ちゃんと目が合ってしまうようになっている。これはトイレが完成した直後から何も変わっていない。

楓ちゃんの愛の重さがこれでもかというくらい表現されているのがこのトイレというわけだ。


ものすごく恥ずかしい気持ちもあるけど特に剥がす気もない。

恥ずかしいけどものすごく可愛いから剥がせないんだ。剥がそうと思ったことはあるけどポスターの可愛すぎて眩しすぎる笑顔を見たら、剥がせるわけないだろ。

そういうわけで今日もポスターの楓ちゃんに見つめられながらトイレをした。



「ふぅ……」


尿を出し終えた後、チンチンをよく振って最後まで出しきる。

そして小便器の水がジャアアア……と流れる。流れる水の量や勢いがすごくて徹底的にキレイに流される。臭いや汚れを一切残さないつもりか、マジで高性能トイレ。俺にはもったいなさすぎるトイレだ。



 手を洗ってハンカチで拭きながらトイレを出る。



「涼馬さーん!」



…………

ここは女の世界。トイレから一歩出たその瞬間からもう1人の時間ではない。

それはわかっているがそれにしても早いな。本当にトイレから一歩しか出てないんだが、もう俺を呼ぶ声が聞こえた。


この声、そして『涼馬さん』と呼ぶのは、つばきちゃんだ。

つばきちゃんが俺を呼んでいる。


で、どこだ。どこにいるんだ、姿が見えない。

周りには草むらや木があるが人の姿はどこにも見えない。


「涼馬さーん!」


姿は見えないがまた声が聞こえた。よく耳を澄ましてみると、上から聞こえる。

なんで上から聞こえるんだ。俺の方が背が高いのに頭上からつばきちゃんの声がするのはなぜだ。

校舎の2階か3階にいるのか? しかし校舎の方からじゃないなこの声。マジでどこだ。


「ここですよ涼馬さーん!」


「どこだ……?」


「ここですって~!」


だからどこだ。()()しか言ってないじゃないか。

マジでこことしか言ってくれないので声がする方向を自力で探すしかないのか。




たくさん探して、ようやく見つけた。

見つけるまでに10分くらいかかってしまった。疲れた。



「もう、見つけるの遅いですよ涼馬さん」


「な、なんでそんなところにいるんだ……」



つばきちゃんはなんと、木の上にいた。

なんで木登りしてるんだ。けっこう太くて長い木だな、よく登れたなこれ。俺はちょっと登れそうにない。



「ちょっとしたかくれんぼのつもりだったんですけどね、見つけるの下手ですね涼馬さん。かくれんぼザコですねぇ」


ほっとけ、友達少ないからかくれんぼの経験とかほとんどないんだよ。

っていうか……見つけたら見つけたでちょっと問題が……



「? 涼馬さんどこ見てるんですか、私を見てくださいよ」


「いや、ちょっと……」



俺のはるか頭上で、太い木の枝にしゃがみ込んでいるつばきちゃん。

で、スカートが短いから……パンツが丸見えになってしまっている。

下から見たら丸見えなことにつばきちゃんは気づいてないのか。木登りでドヤ顔してる場合じゃないぞ、パンチラしてるぞ。


つばきちゃんの今日のパンツは水玉パンツだった。見てしまったのは一瞬だけであとは目を逸らしているが、脳裏に焼きついてしまった。

楓ちゃんは一切パンツを見せない鉄壁ガードなのに。スカートの長さは2人とも同じくらいなのにこの差はなんだ。なんでつばきちゃんはここまでガバガバ無防備なんだ。



「とにかくつばきちゃん、降りてきてくれないか?」


「わかりました。かっこよく飛び降りますので見ててください」


「え? ちょっ……」


「とうっ!」



つばきちゃんはかけ声とともに木の枝から飛び降りた。


!!!!!!


見ててくださいと言われたから見てしまったが、短いスカートで上から飛び降りたりしたら、案の定スカートが捲れ上がってパンツが……

ヒラヒラと揺れるスカートと魅惑の水玉パンツが、俺の脳内でスローモーションで再生された。



ズダンッ!


つばきちゃんは着地した。かっこよくポーズ決めることしか考えてないっぽくて着地の瞬間も水玉パンツが露わになっていた。



「どうですか涼馬さん、私の大ジャンプは」


「だ……大丈夫なのか? けっこう高いところから飛び降りたけど……」


パンツばっかり意識するな俺。それより3メートルくらいの高さから飛び降りたりしてケガとかは大丈夫なのか。


「大丈夫ですよこれくらい。バレー部だしジャンプには慣れてるし」


つばきちゃんは軽くステップを踏んで全然平気なことを示してみせた。身体能力すごいな、俺だったら骨折してたと思う。


つばきちゃんは笑った。赤髪がふわりと揺れた。どこを切り取っても完璧に可愛いとんでもない美少女だ。



……ん?

水玉パンツやジャンプに気を取られて最初は全然気づかなかったが、つばきちゃんを見て今までと少し違うことに気づいた。



「あれ? つばきちゃん、ちょっと髪切った?」


「あ、わかります!? そうなんです、ちょっと切ったんですよ!」


「髪型もちょっと変わったな、似合ってるよ」


「そうなんです! ちょっとイメチェンしたんですよ私! でも誰も気づいてくれなくて……私全然友達いないから仕方ないですけど!

気づいてくれたのは涼馬さんだけですよ! えへへ、嬉しいなぁ」



つばきちゃんはハーフアップな髪型だったが、髪を結ぶ位置を少し横に変えている。それだけでもかなり印象が変わる。

頬に手を添えて、つばきちゃんは照れくさそうに笑う。ヤバイ、可愛い。


雲母と付き合っていた経験から、女の子の髪型の変化とかは敏感に感じ取れるようになった。

雲母は黒髪のショートカットにこだわっていたようでしょっちゅう髪を切っていた。それで変化にすぐに気づいて褒めてあげないと不機嫌になってしまうんだ。めんどくさいところも多かったけど美しさを磨く努力は怠ってなくて、そういうところも愛おしいと思っていた。

とにかく女の子が髪型変えたらすぐに気づいて褒めてあげるのが大事だということを雲母から学んだ。



「でも、どうしてイメチェンを?」


「それは……恋をした女の子は、変わりたいって思うからです」



つばきちゃんは()という言葉を口にして上目遣いで俺をまっすぐ見つめてきて、髪の先を指でくるくるしている。

これは反則だ。こんなの、男ならみんなドキッとしてしまうに決まってる。

ヤバイヤバイ、やめろ、ドキドキするな。



「涼馬さん……好きです」



「!」



大きな木の下、体育館でも聞いた愛の言葉が緩やかな風に乗った。


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