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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第15章…仕事

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悩ましい女の子たちです




―――




 『私はずっとキミのことを想い続けてきた』


楓ちゃんの言葉。



『あたしとヨリを戻しましょ』


雲母の言葉。



『私のことも好きになってみませんか?』


つばきちゃんの言葉。



3人の女の子の言葉が、俺の頭の中でグルグルと回り続けている。

しかも雲母の言葉とつばきちゃんの言葉は同じ日に言われた。全く処理が追いついてないのにさらに爆弾が足されて、さらに混乱を強くする。俺の矮小な脳みそで対処できるわけがなかった。


2人でも悩みに悩んでいたのに、3人になった……?

しかも3人ともありえないくらい可愛い。本来なら俺なんかでは絶対に手が届くことはないはるか雲の上の絶世の美少女。


なんで俺……? 俺のどこがいいんだ……? なんで? ナンデ……



俺は壊れた。考えるのをやめた。

俺は機械と化して、ただただ与えられた仕事をやるだけになった。


とりあえず、今日中に終わらせろという飼い主様の指令があったからそれに従うのみ。仕事だ仕事。とにかく仕事しろ。仕事仕事仕事……



 次は花壇で花に水をあげる仕事をしよう……

アレ? 花壇に水をあげる仕事もあったよナ? うんあった、間違いない。壊れていても楓ちゃんの可愛い声はちゃんと記憶に残ってイル。


マダマダ仕事ハ残ッテイル。早クシナイトナァ……



「お? 安村じゃねぇか」


「オ水ヲアゲナキャ、オ水ヲ……って、堀之内さん!?」



花壇のところでしゃがみ込んでいる堀之内さんに会った。

堀之内さんに会って、壊れていた俺はハッと正気を取り戻した。



「堀之内さん、授業は……」


「だってあのデカパイ女がすげぇ機嫌悪くてよ、やってらんねぇから今日は適当にサボって帰るわ」


うっ、それは俺のせいだ。俺のせいでやる気をなくす生徒が出てしまった。やはり俺は害なのか……俺のせいなんで偉そうに授業に戻れとは言いづらい。


「あ、別にデカパイ女が怖いから逃げてきたってわけでは断じてねぇからな! それだけは違ぇからな! 勘違いすんなよ安村!」


「わかったわかった……」


楓ちゃんが怖くて逃げてきたんだな……気持ちは俺もすごくよくわかるよ。大丈夫、誰にも言わないから。



……それにしても……なんだろ、堀之内さんと話している今が一番ホッとしてる。

3人の女の子のことで悩みに悩みまくっている俺にとって、堀之内さんが唯一のオアシスみたいな感じになっている。


とにかく今、平和だ。心の平穏タイムが訪れた。

堀之内さんなら俺なんかに興味関心を持つことはないって安心できる。初対面であれだけ怖かったヤンキーの堀之内さんが一番安心できるなんて、不思議なこともあるもんだなぁ。



「ていうか安村、なんだよお前その顔」


「ああ、まあ、キスマークだ」


「それは見りゃわかんだよ。あのデカパイ女にされたのか?」


「……ああ……」


「……そのキスマーク見てるとなんか不快な気分だ。その顔、一発殴っていいか?」


「ああ、殴っていいよ。今の俺は殴られるべきだから」


「なんだよそれ、殴っていいって言われると殴る気失せるぜ。気持ち悪ぃ」


ああ、こんな会話でもちょっと癒しだ。堀之内さんとは恋愛要素がない気楽な会話ができて助かる。



…………え、ないよな……?

さすがに堀之内さんはないよな……? ないない、堀之内さんに好かれる要素なんて俺には何もない、絶対大丈夫。

知り合った女の子全員俺を好きになるとでも思ってんのか? 思ってたら本当に死んだ方がいいよ俺。身の程を知れ。



「で、安村はこの花壇に何か用か?」


「俺は仕事で水をあげようと思って……堀之内さんこそ花壇で何してるんだ?」


「あたしは花を眺めてるだけだけどよ」


「花が好きなのか?」


「悪ぃかよ」


「いや悪くねぇけど」


「あたしは植物全般が好きだからな。雑草だって好きなんだ。狩られて捨てられるのもかわいそうだと思ってよ、いくつか保護して邪魔にならねぇところに植え直そうと思ってんだ」


堀之内さんはそう言ってビニール袋を取り出し、その袋には雑草がびっしりと入っていた。根っこの先まで丁寧に保全してある。

ヤンキーの堀之内さんがそこまで植物を大切にしてるのか。不良とか草なんて平気で踏み潰しそうなイメージなのに。ギャップがあるなギャップが。

犬や猫に優しい不良ならよく聞くけど、植物に優しい不良かぁ。第一印象から大きく印象変わるなぁ。


そういえば雑草なら俺も堀之内さんからもらったことあるな。俺には意味わからなかったけど堀之内さんにとっては大切なものだったのか。



堀之内さんはそっと花に触れた。

金属バットを振り回していた子と同一人物とは思えないような、儚いものを慈しむような指先。

髪はボサボサだしオシャレに無頓着な感じで目つきも悪い堀之内さんだが、すごく美人で絵になるなぁこれは、と思った。



「雑草はな、大切な人ができたらあげようって決めてんだ。()()()()()()にあげるんだ」


……ん?


「え、ちょっと待て。俺もキミから雑草をもらったことあるんだが」


「……あ……?

…………ハッ!!!!!!」



俺にあげたこと忘れてたんだろうか。堀之内さんはハッとした表情をした。

そしてみるみる顔が赤くなっていく。

おい待て、なんだその反応。ついさっき気持ち悪ぃとか言ってた堀之内さんはどこに行った。



「いや、違ッ……! てめぇは違う! てめぇは違うから!!

てめぇを大切に想ってるとか、そういうんじゃねぇからな断じて!! 勘違いすんなよハゲ!!」


「…………」



え……えぇ……!?

堀之内さん!? 堀之内さんなんで!? 堀之内さんまで何言ってんだよ!?

いや、さすがにそれはねぇよ。1日で3人も女の子とドキドキイベントが発生するなんて、あまりにも非現実的であまりにも俺に都合が良すぎる。


そうか、これは夢だ。夢に違いない。雲母にヨリを戻そうって言われたのもつばきちゃんに告白されたのも堀之内さんにツンデレな対応されてるのも全部夢だ!

ずいぶんおめでたい夢を見てるな俺は。マジで救いようのない愚物だ俺は。


そう、夢だ。いいかげん現実を見ろ。目を覚ませ。頬を思いっきりつねる。

痛い。なんでだ。なんで痛いんだ。涙目になるまでつねってもなんで夢から覚めないんだ。



「マジで違ぇからな! 違ぇんだよバカヤロー!!!!!!」



堀之内さんは凄まじい速度で走り去っていった。

俺は頬をつねり続けたまま、いつまでも夢から覚めることはなかった。




 俺はその後また壊れてひたすら仕事をする機械になった。

この仕事量と仕事の辛さ、夢じゃない。現実である。いやしかしなぜか女の子たちにモテモテな今日はどうしても現実とは思えない。

脳に靄がかかったような感覚で、夢が現実かどっちなのかハッキリしてないままとにかく楓ちゃんのために仕事をやるのであった。




―――




 放課後、いつの間にか夕方になっていた。



「はぁ……はぁ……はあぁ……」


俺は、なんとか今日の仕事をすべてやり終えた。超キツかった。昔やってた仕事よりもキツかった。機械になってたからなんとか終わらせることができた。人間のままだったら無理だった。仕事に没頭してないと自分の頭を保てないのでひたすら没頭した。燃え尽きて魂抜けかかっていた。


ああ、腕がプルプル痙攣している……立ってるのもしんどくて、ぺたんと情けなく座り込んだ。


アア、コノママ学校ニ吸収サレソウ。マア、ソレデモイイカ。



「涼くん」


「!!!!!! 楓ちゃん!」



楓ちゃんが静かに現れた。

俺は瞬時に人間に戻り、楓ちゃんの方を向いて正座した。


スタスタ


「……っ……!」


楓ちゃんは真顔のままこっちに歩いてくる。

怖すぎる。何か仕事に不備があったのだろうか。何かミスをしてしまっただろうか。

前の会社にいた時代に何度も上司に怒鳴られたことを思い出す。不安や恐怖で心臓がバクバクする。俺は殺される覚悟を決めた。



―――ぎゅっ


「―――!」



恐怖で目を瞑っていた俺だが、柔らかい感触といい匂いで包み込まれた。

目をゆっくり開くと、楓ちゃんは俺の身体を背後から優しく包み込むように抱きしめていた。


背中にむにゅっと押し当てられた、たわわな胸の感触……安心と刺激が混在してるような、すごくいい匂い……


夢じゃない……夢じゃない、現実だ。大きくて張りがあって柔らかいこの胸の感触、正真正銘現実の楓ちゃんの胸だ。

夢なのか現実なのかハッキリしてなかった俺は楓ちゃんの胸でハッキリと自分の意識を取り戻せた。


疲れ切って立てないはずだったのに、股間だけは元気いっぱいに勃ち上がった。

楓ちゃんの胸はいついかなる時でも俺に元気と活力を与えてくれる。



「私が指示しといて何だけど、まさか本当に今日中に仕事を終わらせられるとは思ってなかった。終わってなくても許してあげようと思ってた。

よく頑張ったね、偉いぞ涼くん。ありがとう、お疲れ様」



ああ……楓ちゃんのこの言葉が聞きたくて、俺はここまで頑張れたのかもしれない。


楓ちゃんも心中いろいろ複雑なことがあるに違いない。

それでも楓ちゃんは俺を優しく包み込んでくれる。


本来なら俺の実力では絶対に今日中に仕事を終わらせるのは無理だった。

()()()()()()()、楓ちゃんのため、それだけでなんとかやり遂げた。

二股かけちまってる俺が言っても欠片も説得力ないだろうが、実際にそうなんだ。やはり楓ちゃんが俺にとって()()なんだ。



「女好きで女たらしで、情けないところがいっぱいあるけど、やる時はちゃんとやる涼くん。そんな涼くんが好き。好きだよ、涼くん」


「~~~……!!!!!!」



ああ、この言葉も本当に欲しかった。

幸せの極致。歓びの絶頂。


しばらくの間こうして労ってくれる楓ちゃんに、しばらく甘え続けた。

今の立場では甘えてはいけないはずなのに、甘えずにはいられない。ここまでの極上の乳、甘えずにいられるか。


今だけは、今だけはいろんな悩み、忘れさせてほしい。どんな悩みも忘れさせるだけのチカラが、楓ちゃんの胸にはある。


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